“声のプロフェッショナル”によるリーディング公演「ロミオとジュリエット」死によってのみ結ばれる愛、対立が生んだ悲劇の結末。

“声のプロフェッショナル”たちが回替わりで出演し、ウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を声で立ち上げる朗読劇。ロミオ役には八代拓、汐谷文康、狩野翔、白井悠介、中澤まさとも、駒田航、中島ヨシキ、ジュリエット役には工藤晴香、夏川椎菜、尾崎由香、西明日香、吉岡茉祐、田中美海、構成・演出は深作健太。
12月18日の回で観劇。

開幕前は三線やしおん笛の音色、轟音、舞台中央には金網のフェンス、それが無機質な印象、プロペラの轟音が響く、出演者が登場、教会の鐘の音が響き渡る。印象的な出だしだ。

語り部が客席に語りかける、「たった5日間の悲劇の恋」という。恋に落ちてそこからがジェットコースターのごとく、恋が突き進んでいく。誰もが知っている世界的に有名な悲恋の物語。語り部が「第1日目」という。罵声が聞こえる、ノイズ音も入り、騒々しく、どこかトゲトゲしい騒がしさ、何かを予感させる、物騒な感じ。口汚く罵り合う。キャピュレット家とモンタギュー家、並々ならぬ敵対心を持っていることがわかる。大公が「お前らケダモノか!?」と呆れ、暴動を起こした者は死刑に処す、と宣言する。
物語はストーリー通りに進行する。

 

ジュリエットに会う前から恋に悩むロミオ、ロザラインという女性が好きなのだが、振り向いてもらえない。それを心配するベンヴォーリオ、「きっと彼女以上の人が見つかるさ」と軽口を叩く。
よくよく聞くと登場人物はなかなかにキャラが立っている。ジュリエットの乳母は、結構下ネタを連発するし、若者たちは上品とは言い難い。そしてダンスパーテイで出会ってしまったロミオとジュリエット、無機質なフェンスが二人の間にあるシーンは象徴的だ。そしてソッコーで恋に落ちていく。

語り部、そしてセットのフェンス、聴かせ方、見せ方が効果的であり、声優陣も座って語るのではなく、多少の演技を伴っての朗読。あのイタリアのヴェローナではなく、どこかの時代のどこか、オスプレイの爆音が轟いたりする。セリフもところどころ風刺が効いていて悲劇にシニカルな味付けをする。自由を押しとどめめるフェンス、その中での純愛は「死」によって結ばれるという結末。

今も過去も、シェイクスピアが生きていた時代も人間は対して変わらず、ある意味、成長していない。変わったことといえば、テクノロジーの発達し、それに伴い環境も変わった。しかし、その中で人間も『発達』したのだろうか?答えは『否』、差別や対立は相変わらず、平等とか平和とかいう言葉からはほど遠いのが現実。我々も知らないうちに差別しているかもしれないし、対立の種をまいているのかもしれない。「ロミオとジュリエット」の書かれた時代から、ずいぶんと経っているのに、大なり小なり、ありうること。今とさして変わりはしない、それを象徴するようにオスプレイの轟音が響き、フェンスがある。ただの悲恋ではない。2つの家の対立、現代でも国家間の対立はある意味、普通なこと。そんな世の中、それを振り返ることのできる今回の朗読劇。声優陣の熱演、衣装はシンプルに白の衣装を着た声優陣と黒の衣装を着た声優陣、ロミオ役とジュリエット役以外は複数役を演じる。ロミオは汐谷文康、ジュリエットは夏川椎菜。若手らしい初々しさとキャラクターがマッチ、またベテランの岸尾だいすけが脇を固める。毎回キャストが変わるので、声優陣が変われば、また雰囲気も変わる。そんなところが声優ファンにとっては楽しみな部分であり、純粋に演劇ファンなら、声の力に改めて感嘆できる舞台だ。

<12月18日キャスト>
ロミオ:汐谷文康
ジュリエット:夏川椎菜
ベンヴォーリオ 他:帆世雄一
ティボルト パリス 他:大海将一郎
神父 大公 他:岸尾だいすけ
マキューシオ 乳母 他:下田麻美
【概要】
日程・場所:
2019年12月17日(火)~22日(日) サンシャイン劇場
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:平田綾子
構成・演出:深作健太
<キャスト>
ロミオ:八代拓 / 汐谷文康 / 狩野翔 / 白井悠介 / 中澤まさとも / 駒田航 / 中島ヨシキ
ジュリエット:工藤晴香 / 夏川椎菜 / 尾崎由香 / 西明日香 / 吉岡茉祐 / 田中美海
ベンヴォーリオ ほか:野上翔 / 帆世雄一 / 古田一晟 / 田丸篤志 / 神尾晋一郎 / 古畑恵介
ティボルト / パリス ほか:高塚智人 / 大海将一郎 / 榊原優希 / 市川太一 / 安田陸矢
神父 / 大公 ほか:高橋広樹 / 岸尾だいすけ / 笠間淳 / 保村真 / 松田健一郎
マキューシオ / 乳母 ほか:中村繪里子 / 下田麻美 / 大原さやか / 西村ちなみ / 福島潤 / 井上麻里奈

公式HP:https://rj.rodokugeki.jp