赤坂大歌舞伎 『怪談 牡丹燈籠』「楽しいものが作れると、新たな思いで!」(中村勘九郎)、中村獅童も中村七之助も!がっちりと!

赤坂大歌舞伎とは、十八代目中村勘三郎の「芸能の街・赤坂で歌舞伎を!」という一言から2008年にスタートし、誰にでも親しみやすい演目で幅広く人気を博してきた名物シリーズ。2013年からは中村勘九郎、中村七之助兄弟が亡き父の遺志を継いで公演を続け、さらなる進化を遂げてきた。シリーズ6回目の上演となる今回は中村獅童も加わり、さらなる期待を集めている。 タイトルは「怪談 牡丹燈籠」。三遊亭圓朝の長編落語が原作で、三大怪談噺の一つと呼ばれ、明治25年に歌舞伎になって以降、何度も上演されてきた人気の演目。赤坂大歌舞伎では、脚本と演出に昨年放送されたテレビドラマ版でも脚本・演出を手掛けた源孝志をむかえ、原作落語にある人間模様の面白さを再発掘し、新たな解釈も加えた新作に挑む。男女の愛憎、富を手に入れ狂い出す人生、忠義ゆえに企んだ仇討ち・・・情事とサスペンスまでもが絡み合い、人間の煩悩や本質をも描く。そんな濃厚な物語の登場人物を、今後の歌舞伎界を担う人気役者たちが競演する、令和版の「牡丹燈籠」、その会見が都内で行われた。中村勘九郎、中村七之助兄弟と中村獅童、脚本・演出の源孝志、そして株式会社TBSの菅井常務取締役と松竹株式会社の安孫子副社長/演劇本部長が登壇した。
まず、過去の作品映像が流れた。赤坂で歌舞伎をやりたい!という思い、十八代目中村勘三郎が始めた名物シリーズであるが、それが受け継がれ、6回目を迎える。まずは菅井常務取締役より挨拶、概要の説明、そして松竹の安孫子副社長より「三遊亭圓朝の代表作です、現代の新しい『牡丹灯籠』を」とコメントした。

それから脚本・演出の源孝志が挨拶、「プレミアムドラマ 令和元年版 怪談牡丹燈籠」(2019年、NHK BSプレミアム、脚本・演出)ですでにこの作品を手がけているが、今回は舞台、しかも歌舞伎。「ここまで新しいことができるんだ、そういう感じです。新しいことにトライできる、っていう風に、すごくいい。お話をいただいた時も・・・・・・歌舞伎、伝統的なかっこよさ、世話物、そういったものがちょっと含まれている、作品です。歌舞伎ファンの方も、若い方にもぜひ!たくさん観ていただけるようなものになれば、と思っています」と原作の素晴らしさを語る。
それから順番に挨拶、
「7年ぶりに出演します。懐かしく思います。また演出、ご一緒させていただくこと、嬉しく思っています(『スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディー〜』)。歌舞伎で『牡丹灯籠』はレベルの高い感じでありますが、今の時代に、新たな『牡丹灯籠』を!」(中村獅童)

「3年ぶりに赤坂でできる、嬉しく思います。2008年に父が赤坂をやりたいという願いがあり、父が亡くなった時はできない、と思っていました。ところが翌年の公演が決まっていたのですが、そこで獅童さんや七之助と3人でやらせていただき、その次が心配でしたが、前回は蓬莱さんを招いて作っていただきました。赤坂ACTシアターっていうところは、いろんな方向に行けるな、という確信を得まして、今回の三遊亭圓朝の作品『牡丹灯籠』が赤坂でできる!楽しく思います。今までとは大きく違った、ドロドロとした愛憎劇の中で、美しさが舞台になると思います。期待しててください!」(中村勘九郎)

「珍しく映像のお仕事があり、それが10代の頃にレギュラーとして出たのが『牡丹灯籠』で、去年、それの新作で源孝志監督の『牡丹灯籠』でした。この台本を読んで『面白い!』と。それまでは歌舞伎版の脚本をずっと読んでいましたが、これしか知らなかったんですが、源孝志監督の脚本を読んだ時に『素晴らしい!』と。今までにない深いところに突っ込んで描いている、で、話して・・・・世間話的な勢いで!『これ、歌舞伎にしたら面白いですよ、歌舞伎にしましょうよ〜』なんて言って、いつかっていうレベルの話でした。それが!こんなスピーディに!5月に撮影したのですが、それが新作で歌舞伎に・・・・こんなに早く決まることってほとんどないんじゃないかっていうくらいにスピーディ!すごく勢いのある作品をみんなで作り上げて行きたいと思いますので!よろしくお願いいたします!」(中村七之助)

 ”勢いよく!”上演が決まったこの作品、それから質疑応答に。昨年に「プレミアムドラマ 令和元年版 怪談牡丹燈籠」をやった源孝志にMCよりどんな作品に仕上がりそうか質問が・・・・・。
「七之助さんが言ったようにものすごくスピーディに決まったものですから、まだ・・・・全くできておりません(笑)。ただ、有名な古典ですし、僕も去年やって、それとは違うものにしたいな、と。皆さんが見たいところは見させる、それが漏れたりしたところをすくってエッジを立てる、深く人の心に入っていくよりもどちらかというとそういうものを見せられてギグッってするような感じの話やセリフを書いていきたいと思っています、関係性とか」とコメント。
それから役どころについての質問がMCより。

「(宮辺原次郎は)放蕩息子で軟弱者です・・・・・ストーリーが面白いし、人間の業、欲とか皆さんが共感できるところです。稽古の流れによってキャラクターは変わることもあるので、決めつけないで、作って行きたいです」(宮辺原次郎/伴蔵:中村獅童)
「萩原新三郎は、ですね〜、浪人っていうか・・・・・働いてない、今だったら”ニート”、そこへ美女と出会っちゃって、展開していくんですが。出会って、その女性に惹かれる魅力っていうんでしょうか、少しでも、映像では七之助が演じていましたが・・・・・今回は七之助がお露で!なんで歌舞伎なんだろ〜(笑)、もう一人の孝助は・・・・・映像で見させていただきましたが、『あ、こういう話もあったんだ、面白いな』と。怪談だけでなく、男女の話、そして敵討ちとか、親との関係も含まれていますが、どんな役になるのか、お客様に楽しんでいただければ」(黒川孝助/萩原新三郎:中村勘九郎)
「お国と源次郎が主役として出ている、面白いなと。源次郎は重要な役には違いないですが、あんまり深くは描かれていないです、お国という女性に視点が置かれていましたが、お国の寂しさであったり、悪女でありながらも何か生きるために一生懸命だったり・・・・これも新三郎もお露と会ってしまったばっかりに、新三郎も単純ではなくなる、そんなところが魅力でお露も執念・・・・潔癖で、新三郎と出会って、人生を賭けるゆえに幽霊になって新三郎に会いに行く、愛の力、また、その二人が別次元で、とっても一生懸命!可愛らしい女性、3者3様、全ての役が、これは演じがいがありますし、これはどういう風になるかわかりませんが、早変わりになると思います。そういった歌舞伎の手法も楽しんでいただければ。お峰とお国、お露・・・・・お峰は顔が茶色いので、そこを白く塗ったり茶色く塗ったり・・・・・」(お露/お国/お峰:中村七之助)

そこから質疑応答タイム、中村七之助に役についての質問、中村七之助は「役者としてはお露は、典型的な女形趣向、突拍子もなく好きになってしまうんだな、娘役の代表的な役です。人間としては・・・・怖いですね。なかなか怖い系(笑)、それくらいに人を好きになってしまう、幽霊にまでなってしまう、ここが面白いところで、そこまで新三郎を求めている。新三郎としては死に追いやられてしまう状況で、人間の怖さ、あテレビ版では僕が好きなところは新三郎が自ら『こうしてしてください』と、お露にお願いするところがありますが、これがミソ、と思いました。歌舞伎版ではそうではないですね。新三郎は、もっと・・・・アホ(笑)、幽霊として出てきて・・・・・お露が豹変した途端に逃げ出すんです。殺されて死ぬというみっともない男です(笑)、今回の新三郎は、自ら「あなたがいなければこの世にいる意味がない」という、自分から。恋愛になってしまう・・・・・でもこの二人は幸せ者だった、お国と源次郎も多分・・・・最後はお国も源次郎も影を持った人間です。二人は最後は辛い思いをしましたが、最後は出会ったことは人生で最高だったんじゃないかな?と」と熱くコメント。また源孝志は「テレビ版は時間軸が重層的に。これは演劇的にはちょっと難しい感じ。今回は・・・・七之助さんの話を聞いて、どういう風に(笑)、焦がれ死に・・・・あとどういう流れにするか・・・・・楽しみに(笑)、あとは、個性的な役者さんには個性的な役柄が面白いかなと・・・・時間軸とか、何か仕組みを作ろうと・・・・・・客席とのやり取りとか、間合いとか、そういうのも入れてみようかと、意識的にやっていただいても・・・・・肝心なところで」と語る。また赤坂歌舞伎への思いについては
「7年前に出させていただきましたが、それからニューヨークでもやって・・・・・若い方にも見やすく、わかりやすい様に。やはり、我々、若い世代、ともに一緒に歳をとっていけるかなと・・・・・・新しいお客様を開拓して行かねば、皆さんの胸に届く熱い芝居に」(中村獅童)
「2008年に『棒縛り』に出演しました時に・・・・すごくあっていた、あの空間で違和感なく、この劇場は不思議だな、古典もできるし、新作ミュージカルもできる、赤坂ACTシアターはいろんな可能性を秘めた劇場。それでニューヨーク公演も始まった。父がいなくなってしまって・・・・・漠然と・・・・・でも一番喜んでくれていると。今回も引き継いで、楽しいものが作れると、新たな思いで!」(中村勘九郎)
「いろんな役、演目をやらせていただきました。可能性を秘めた劇場、父の遺してくれた財産、皆さん、プロデューサーさんですとか、裏方の熱い思いが半端ないですね。こんなに早く決まった!ビビッドに感じてくれた、土台がしっかりしてくれている、安心して取り組める!僕たちも一生懸命に!この相乗効果の素晴らしいところ。また、街に出ると普通のチェーン店に入ったら『今度、観に行きます』と若いお兄さんに声をかけられたり。街ぐるみで!力つよい街、ここで大歌舞伎を!」(中村七之助)

それから街を代表して、赤坂の素敵な方々、赤坂芸妓さんが登場、花束贈呈、赤坂育子さんから「首を長くして待っておりました!」と激励。そこで中村勘九郎が「ああ、始まるなと。ぜひ!ぜひ!」とその”声援”に答えた。

そしてフォトセッションのあとは囲み取材が行われた。
改めて中村勘九郎は「嬉しく思う」といい、中村七之助は「久しぶりに新作を!素敵なものを作り上げたい」と改めて大きな意欲を。中村七之助は「出演者も素晴らしくって。名作ですが、また違った形で・・・・こんなに早く決まったのでちょっとびっくりしています。これから落ち着いてじっくりと話し合って」と語る。中村獅童も「みんなで!」といい、中村勘九郎も「プランはいろいろ。楽しいプランが上がってきています」、中村獅童は「人間味溢れる話、稽古場入ってどうするか・・・・・自分とは正反対の役(笑)、でも自分に全くないものを演じるのが役者です」とコメント。中村七之助は「生きることに一生懸命、恵まれていないところに生まれなかった・・・・辛さの中で生きてきた・・・・・共感できるところ、そういうDNAはみんな持っている。とにかく楽しんでいただけるように。エンターテイメントです・・・・歌舞伎は早く着替えて早く出てくる、肉体労働です!」と笑わせた。それに対して中村獅童も「重労働です!」とさらに笑わせた。中村七之助は「言い出したのは僕でちょっと怖い(笑)」とちらっと弱気????「でも『いいんじゃない?』っていったら2人が『うん』と(笑)」とコメント。
最後にPRの締め、ここでなぜかゆずり合う3人(「どーぞ、どーぞ」のノリで)
結局中村獅童が「劇場でお待ちしております!!!!!!」と締めて会見は終了した。

<作品紹介>
日本を代表する怪談『牡丹燈籠』。原作は明治に生きた江戸落語の名人・初代三遊亭圓朝。 幕末の草子作家・浅井了意の手になる怪奇譚集『御伽婢子』(中国明代の怪奇小説集の中の『牡丹燈記』を翻案した もの)を元に、深川の米問屋に伝わる怪異談や、牛込の旗本屋敷で実際に起こったお家騒動を巧みに組み合わせ て作り上げた、初代圓朝の傑作人情噺です。 講談や落語で語り継がれ、歌舞伎で上演され、幾度も映画化されて日本の夏を涼しくしてきたこの有名な怪談。若 侍の萩原新三郎に恋い焦がれて死んだ美貌の娘・お露の幽霊が、死後も牡丹の燈籠を下げて夜毎新三郎を訪れ、 最後はとり殺してしまう…… 「女は下手に燃え上がらせると恐ろしい」という、怖〜いお話。 日本の幽霊には足がないというのが定番ですが、お露は美しい素足に下駄を履き、カラン、コロンと夜道を忍んで 来るという、実に人間的で艶めいた幽霊でもあります。 しかしこの有名な『お露・新三郎』の怪談話、圓朝作の『怪談牡丹燈籠』のごく一部に過ぎません。 完全版はお露の父とその忠臣、稀代の悪女とその間男、強欲な町人夫婦…… 男と女の欲と色が交錯するドロドロの人間ドラマになっております。むしろ最後には「幽霊より人間の方が怖い」と感じさせてしまうあたり、落語と いうよりは世話物文学の傑作と呼ぶべき名作。全二十二段、二十年に渡る長編愛憎劇です。単純に勧善懲悪を諭すでもなく、人倫の道を説くでもなく、欲望に抗しきれない生身の人間の愚かさをリアルに描いていくタッチに容 赦がなく、他の怪談話とは一線を画す名作と言ってよいでしょう。各登場人物のキャラクター造形も緻密で個性的。 歌舞伎でいう「しどころ」(演じ所)が多く、役者の魅力を存分に発揮できる原作でもあります。

【公演概要】
赤坂大歌舞伎 怪談 牡丹燈籠
日程 :2020年5月5日(火・祝)~5月24日(日)
会場 :TBS 赤坂 ACT シアター

CAST 中村獅童、中村勘九郎、中村七之助 ほか

STAFF
原作 :三遊亭圓朝
脚本・演出:源孝志
音楽 :阿部海太郎
美術 :堀尾幸男
照明 :服部基
音響 :井上正弘
衣裳 :前田文子

料金:S席 13,500 円 A席 8,000 円 B席 4,000 円 (全席指定・税込) ※未就学児の入場不可
発売日:2020年2月16日(日)
お問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~18:00)
主催:TBS/松竹株式会社/BS-TBS /TBS ラジオ
企画協力:ファーンウッド/ファーンウッド21
製作:松竹株式会社