駒田航、中島ヨシキら豪華声優陣出演!朗読で描く海外名作シリーズ 音楽朗読劇「嵐が丘」愛憎の果てにたどり着く先は? 

「世界の三大悲劇」や「世界の十大小説のひとつ」と言われているエミリー・ブロンテの唯一の長編小説、原題は「Wuthering Heights」。「最後のロマン主義作家」とされるブロンテ姉妹のひとりエミリー・ブロンテが29歳の時に発表したデビュー作で、ブロンテ姉妹が暮らしていたイングランド・ヨークシャーのハワースを舞台に侘しく厳しい荒野(ヒース・ムーア)の自然を背景にした物語である。

物語の出だしは1801年。都会での暮らしに疲れた青年・ロックウッドは、人里離れた田舎にある「スラッシュクロス」と呼ばれる屋敷を借りて移り住むことにした。挨拶のため「スラッシュクロス」唯一の近隣であり大家の住む「嵐が丘」を訪れる。そこには館の主人・ヒースクリフ、一緒に暮らす若い婦人キャサリン・リントンや粗野な男ヘアトンがいた。ここから物語が始まる。
観劇したのは17日の夜の回、ヒースクリフ:駒田航、ヒンドリー/ヘアトン:新田杏樹、エドガー/ロックウッド:安田陸矢、キャサリン/キャシー:村中知。
開演直前、舞台上で閃光がきらめき、そして照明で雲を見せる。音楽、声優陣が順番に舞台上に。演じる声優は4名だが、椅子は5脚、5脚目は肘掛け椅子で、いかにも西洋の屋敷にありそうな形の椅子。不穏な旋律を奏で、これから始まる愛憎劇を予感させるに十分だ。嵐の夜にドアをノックする音、その屋敷は・・・・・嵐が丘。ヒースクリフ(駒田航)が「誰だ」といい、訪問者・ロックウッド(安田陸矢)が「お屋敷を借りるロックウッドです」と告げる。ロックウッドから見るとヒースクリフはじめ風変わりな人々。18歳のキャサリン(村中知)に一見召使いに見えるヘアトン(新田杏樹)。キャサリンにある部屋を案内される。ロックウッドのモノローグ、ベッド脇に並んでいる本の中に日記があり、それは女中のネリーが書いたものだった。そこにはこの嵐が丘の人々のことが記されてあった。そして日記を読む「今日、リヴァプールからお帰りになったアーンショー家の旦那様が薄汚いジプシーの孤児を道で拾ったと言って連れて帰ってきた・・・・・・」と。


そして時間が遡り、1771年から始まる。基本的に会話、出だしは登場人物たちは皆、子供。ちなみにヒースクリフ役は7歳から38歳までを演じる。原作ではロックウッドは女中のネリーに古い話を聞く形だが、ここではロックウッドはネリーの日記を見つけて読み進めていく、というスタイルにしてわかりやすくしている。つまり、ネリーは登場しないのである。
ストーリーは原作通りに進行する。ロックウッドとエドガーは同じ声優が演じるが、ロックウッドの時は肘掛け椅子に座って、ビジュアル的にロックウッドがそこにいて日記を読んでいるようにする。それ以外は他のキャストと同じように立って役を演じる。演じている最中は、その声優にスポットが当たるが、そのスポットは物語の雰囲気に合わせ、ほのかな明かり。


ヒースクリフは助けてくれた家の主人がなくなるとヒンドリーからひどくいじめられるようになるが、彼の拠り所はキャシーであった。単なる友達を超え、男女の愛も超えて魂が結びつく、しかし、ふとしたきっかけでキャシーが離れてしまった。二人は「スラッシュクロス」の住人である主人のリントン、リントン夫人、その子供達、エドガーとイザベラに出会う。上流階級で上品で優雅な一家、キャサリンは上流階級に憧れを抱き、自分にはヒースクリフが必要と自覚しながらも、もはや自分を下げることができなくなったキャサリンはエドガーの求婚を受けてしまう。大きなショックを受けるヒースクリフ、さらに彼はキャシーが自分を捨てたと思い、激しい怒りに燃え、壮絶な復讐を計画する。


音楽は途切れることなく、物語を輪郭づけ、照明で関係性やキャラクターの心情をビジュアル的に表現、そして殴る音やものが壊れる音でその場の状況をスケッチする。しかし、何よりも声優陣の演技、駒田航は、ヒースクリフの冷徹な性格を凍りつくような声で演じるが、キャシーとのつかの間の安らぎのシーンとの落差をつけてヒースクリフの心の動きをみせる。

そして最後の叫び、そしてキャシーの声、幻覚を見たのか、心からの叫びなのか、ここは一番の見せ場であり、聞かせどころ、この瞬間のために今までのヒースクリフの人生があったと言っても過言ではない。そして他の男性キャラクターを演じる二人、新田杏樹はヒンドリーとヘアトンを演じるが、ヒンドリーを演じる時は狂気とも思えるぐらいにエキセントリックにヒースクリフを罵り、いじめる、そしてヒンドリーの息子・ヘアトンになると弱々しいが素直さをにじませたキャラクター作り、親子であるわけだが、性格は正反対とも思えるところがあり、雰囲気がにているようで真逆、難しい2役を演じ分ける。安田陸矢はロックウッドが日記を読む場面では淡々と、そしてエドガーを演じるときはいかにも品の良いおぼっちゃま風情、しかし、ややヘタレな感じが好感が持てる。唯一の女性声優である村中知、キャサリンとキャシー、母と娘、特にヒースクリフと仲良くなるキャサリン、裕福な家に憧れ、そこの息子のエドガーと結婚するが、客観的に見て無理からぬこと。しかし、ヒースクリフを愛している。そんな女性の複雑な心理状況をナチュラルにみせる。背景には何もなく、照明の明かりの色調や明るさ、時折、雲を照明でデザインし、荒野をイメージする。

 

音楽朗読劇、シンプルな表現でありながら、そこで描かれている人間の心理は複雑だ。作者はこの作品を発表してすぐに亡くなっているので作品に対する作者のコメントは残されていない。映画化も何度かされ、日本では吉田喜重監督が鎌倉時代に置き換えており、舞台化は宝塚歌劇団がミュージカル化、またテレビドラマ化、漫画化もされており、「ガラスの仮面」の劇中劇で登場、北島マヤが少女時代のキャサリンを演じているが、それだけ原作に力があり、魅力的であるということ。愛と憎しみ、そして復讐、狂気、エキセントリックな設定、ストーリーであるが、そこに描かれているのは人間の業であり、いつの時代も、そしてどんな形式にしても普遍的な内容ゆえに人々の心を捉える。

【公演概要】
日程・場所:
2020年2月17日〜2月24日 TOKYO FMホール
作:エミリー・ブロンテ
翻案:保科由里子
演出:田尾下哲
音楽:天野翔平

出演:
2/17(月)
19:00
ヒースクリフ:駒田航
ヒンドリー/ヘアトン:新田杏樹
エドガー/ロックウッド:安田陸矢
キャサリン/キャシー:村中知
2/18(火)
19:00
ヒースクリフ:中島ヨシキ
ヒンドリー/ヘアトン:米内佑希
エドガー/ロックウッド:狩野翔
キャサリン/キャシー:古賀葵
2/19(水)
19:00
ヒースクリフ:伊東健人
ヒンドリー/ヘアトン:菊池幸利
エドガー/ロックウッド:神尾晋一郎
キャサリン/キャシー:阿部里果
2/20(木)
19:00
ヒースクリフ:駒田航
ヒンドリー/ヘアトン:市川太一
エドガー/ロックウッド:神尾晋一郎
キャサリン/キャシー:青山吉能 ※体調不良のため降板。代役として阿部里果が出演。
2/21(金)
19:00
ヒースクリフ:中澤まさとも
ヒンドリー/ヘアトン:濱野大輝
エドガー/ロックウッド:安田陸矢
キャサリン/キャシー:山崎はるか
2/22(土)
13:00
ヒースクリフ:広瀬裕也
ヒンドリー/ヘアトン:田丸篤志
エドガー/ロックウッド:中澤まさとも
キャサリン/キャシー:沼倉愛美
19:00
ヒースクリフ:千葉翔也
ヒンドリー/ヘアトン:田丸篤志
エドガー/ロックウッド:山本祥太
キャサリン/キャシー:山崎はるか
2/23(日)
13:00
ヒースクリフ:川島得愛
ヒンドリー/ヘアトン:西山宏太朗
エドガー/ロックウッド:白石兼斗
キャサリン/キャシー:諏訪彩花
19:00
ヒースクリフ:川島得愛
ヒンドリー/ヘアトン:西山宏太朗
エドガー/ロックウッド:石谷春貴
キャサリン/キャシー:吉岡茉祐
2/24(月・祝)
12:30
ヒースクリフ:笹翼
ヒンドリー/ヘアトン:若山晃久
エドガー/ロックウッド:笠間淳
キャサリン/キャシー:鈴木絵理
18:30
ヒースクリフ:笹翼
ヒンドリー/ヘアトン:土田玲央
エドガー/ロックウッド:笠間淳
キャサリン/キャシー:田中美海

 

詳細は下記、公式HPでご確認を。
公式HP:https://arashi.rodokugeki.jp

<今後の朗読劇公演予定>
「銀河鉄道の夜」
2020年6月2日〜6月7日 TOKYO FMホール
「ロミオとジュリエット」(再演)
2020年6月20日 テアトロ・ジーリオ・ショウワ
音楽劇「レ・ミゼラブル」
2020年7月5日 大阪・新歌舞伎座
音楽朗読劇「オペラ座の怪人」
2020年8月3日〜8月10日 TOKYO FMホール
朗読劇「SHERLOCK HOLMES」〜特別なあのひと〜
2020年8月18日〜8月23日  TOKYO FMホール
朗読劇「流離う魂」-小泉八雲の世界-
2020年9月8日〜9月13日 TOKYO FMホール

お問い合わせ:
MAパブリッシング 03−5791−1812(平日11:00〜17:00)
撮影:阿部章仁
取材: Hiromi Koh