音楽劇 「黒と白 -purgatorium-」4つの物語を全キャストで紡ぐ、新感覚の舞台。

日本青年館にて上演中の新感覚の舞台・音楽劇「黒と白 purgatorium」。“七つの大罪 ”をモチーフにしており、七つの大罪になぞらえた 時代も場所も背景も異なる4つの人生の物語に、それぞれのイメージ主題歌(全5曲)を添えて、オムニバス形式でお届けする音楽劇。
purgatoriumはラテン語で煉獄。カトリック教会の教義で、この世のいのちの終わりと天国との間に多くの人が経ると教えられる清めの期間のことをさす。小罪を犯し地獄に行くまでに至らないがすぐには天国へ行けない霊魂が,苦しみを受けながら浄化され最後の審判を待つとされる場所,およびその状態。〈煉獄〉というラテン語purgatoriumはpurgare(〈浄化する〉の意)に由来し,浄罪界とも訳す。また、七つの大罪、もともとはキリスト教の西方教会、おもにカトリック教会における用語。ラテン語や英語での意味は「七つの死に至る罪」だが、「罪」そのものというよりは、人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことを指すものである。

シンプルな衣装、白と黒、コントラストがはっきり、明快、舞台上にはセットらしいものはなく、階段があるが、これが縦横無尽に”活躍”。哲学的でもあり、しかもビジュアル的にもスタイリッシュ。4つの人生の物語、一度に2つ見られるが、組み合わせが毎回、異なる。それぞれメインキャラクターが変わる、という趣向。Aは傲慢×奇跡編、つまりここでのメインキャラクターは岩永徹也演じる、傲慢・ルシフェル、そして平井雄基が演じる、奇跡・ミカエル。全キャスト、A、B、C、D全てに登場するので、それぞれ違う景色が見えるし、比較してみるのも面白い。そしてキャラクターのネーミングも興味深い。例えば、ルシフェル(Lucifer、ルシファー、ルキフェルとも) は、明けの明星を指すラテン語であり、光をもたらす者という意味をもつ悪魔・堕天使の名。キリスト教の伝統においては、堕天使の長であり、サタン、悪魔と同一視される。対するミカエルはユダヤ教、キリスト教、イスラム教においてもっとも偉大な天使の一人であり、「熾天使」として位置づけられることもある。そんなことを覚えておくとストーリーも面白く感じることができる。

19日のゲネプロではA<傲慢×奇跡編>とB<憤怒×慈悲編>公演が上演された。
傲慢×奇跡編でメインとなるのは傲慢のルシフェルと奇跡のミカエル。元は白天使だったルシフェルがなぜ黒天使となったのかがひも解かれ、本作を知る上で欠かせないストーリーとなっている。
物語は煉獄“プルガトリウム”で7人の黒天使たちの会話から始まります。それぞれのパーソナリティである怠惰や色欲を思わせるセリフや仕草が目につきます。一方の白天使たちは6人とも清らかで、礼儀正しさを感じさせます。
黒と白の天使たちは一見相容れないように見えますが、以前は全員天界に暮らしていた仲間ということでそれほど仲は悪くない様子。ベルフェゴールとラグエルは双子の兄弟であったり、サリエルはアスモデウスとお茶会をするほど親しげです。もちろん、常に何かに怒りを覚えているサタンと生真面目なラファエルのように、元から気の合わない天使も。
そのなかで“天使のなかの天使”と称されるミカエルは、ずっとルシフェルに対して複雑な想いを抱いていた。神に背いて黒天使に堕とされたルシフェルの身を案じながらも、その判断をなじらずにはいられなかったからだ。
舞台は過去、人間界へと移ります。なぜルシフェルが人間を愛し、神に背くことになったのかが明かされることに。
憤怒×慈悲編は現代の日本が舞台。人間に転生したサタンは左官をしているトオル、ラファエルは引きこもりのマサハルという青年として過ごしていました。そんな2人をルシフェルとミカエルが見守る。
トオルは仕事で足を骨折し、偶然病院でマサハルの姉・カヨと再会します。さらに彼女に誘われてオンラインゲームを始めることに。幼なじみだったマサハルとトオルにお互いのことを伏せ、詮索もしないように言い含め、カヨはゲームのなかでトオルとマサハルを引き合わせます。ミカエルには人間界の2人は憤怒と慈悲、それぞれのパーソナリティが逆転しているように見えていました。しかし、ルシフェルはそれこそが黒と白、表裏一体だと告げます。ミカエルは人間という不可思議な生き物に手を貸さず、見守ることしかできないことを歯がゆく思い始める……。

<ゲネプロ終了後に行われた囲み会見>

――本公演にかける意気込みをお願いします。
岩永徹也さん(以下岩永):僕は客席を眺める立場となるシーンが多いので、今までの舞台とは違った視点で捉えられる作品になるといいなと思います。
平井雄基さん(以下平井):今回4パターンあるということで、13人の天使1人1人が輝いていて、それぞれの魅力があるので、僕はルシフェルと一緒にみんな俯瞰で見ながら全力で楽しみたいと思います!
宮澤佑さん(以下宮澤):今回は4つの物語ということで、異世界があったりしてこの世界観は難しいなと思うところから始まったんですが、これまで稽古してきたことを最大限生かしてお客様にストーリーを伝えられるように頑張っていきたいと思います。
國島直希さん(以下國島):今回原作がないものなので、皆さんどういうものかわからないと思います。A、B、C、Dとありますが、初日はAB公演から始まるのでガツンと盛り上げて、色々な人に「黒と白」という世界観を見ていただきたいなと思います。今日のゲネプロでも頑張りましたけど、CD公演に繋げるためにも本番でもブチ上げていこうと思ってます。頑張ります!
岩佐祐樹さん(以下岩佐):A、B、C、Dと4つのチームがありますけど、それぞれ垣根を越えてここにいる13人のキャストと、今いないアンサンブルの皆さんでひとつの作品を作って、お客様に楽しんでいただきたいと思います。ありがとうございます。
橘りょうさん(以下橘):すべてはお客様のために我々一同頑張ってまいりました。たくさんの方々に知っていただけるよう頑張っていきたいと思います。
塩澤英真さん(以下塩澤):1人でも多くの方にこの作品が届くように頑張っていきますので、よろしくお願いします。
佐藤信長さん(以下佐藤):みんな限られた時間のなかでもがき苦しみながら、他チームのお芝居を見て刺激をもらいながら、全員で切磋琢磨してできた作品なので、ぜひ見ていただきたいです。
須賀京介さん(以下須賀):僕は全編登場するのですが、より黒く、より悪魔的に、自分は“嫉妬”なのでネチネチと全編を支えていけたらなと思っています。精一杯頑張ります。
五十嵐拓人さん(以下五十嵐):僕も“強欲”の役で全編出ているんですが、支えるだけでなく欲張って目立っていこうと思います(笑)。
石川竜太郎さん(以下石川):今回これだけの最強メンバーが揃いました。みんなイケメンで、僕も含めてですけど(笑)。これだけのメンバーが揃うことってなかなかないと思うので、イケメンだけでなく芝居でも色々なものを届けられたらなと思います。
千葉瑞己さん(以下千葉):今回音楽劇ということで芝居で伝えていけたらというお言葉もありましたが、音楽もあわせての「黒と白」なのでそちらも楽しんでいただけるように頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。
堀田竜成さん(以下堀田):ここにいる13人、スタッフさん、関わってくれる方々とともに切磋琢磨してこれまで頑張ってきました。
岩永:やばかったね、稽古ね。
堀田:はい(笑)。よりいいものにできるように、これから1日1日を大事にしていけたらと思います。僕は調和のカシエルという役なのですが、天使と人を繋ぐという役割もあり、お客さんとこの舞台を繋げられるようにしっかり頑張りたいと思います。
一同:素晴らしい!(拍手)

――4つの物語それぞれの見どころを教えてください。
平井:Aは2人(ルシフェル、ミカエル)の物語というか、今は訳あって黒と白に分かれているんですけど、なぜ分かれたのかなどのおおもとの物語、根本的な部分、始まりに近いところですよね?
岩永:うん。ね?
平井:どんな物語だと思いますか?
岩永:Aは僕たち天使は天使として出ているんですけど、それを人間に見せかけてるじゃないですか。人間を演じてるというか。ちょっと傲慢なことを言うと、昔から宗教画なんかで人間が作った神や天使って人の形をしているでしょ?
平井:う、うん……。
岩永:この舞台では僕たち役者という人間が神のまねごとをして、お客さんという人間に見せるっていうのをやっているわけじゃない。これは恐らく本物のルシフェルとミカエルも見ているはずなので、お客さんだけじゃなく神様のお眼鏡にかなうように頑張らないと。
平井:頑張ります!!
一同:(笑)
宮澤:Bのストーリーはオンラインゲームでの話がメインになっているんですけど、そのなかで人間味あるところがたくさん出てきます。4つの物語のなかで一番それが濃くて、現実世界に一番近いのかなと思っています。その姿を見て天使たちがどんな風に感じるのか、どういう部分が人間の良さなのかたくさん発見できるようなストーリーにしていこうと國島くんと話していました。
國島:ストレートの舞台に近いというか、あまり2.5次元舞台っぽくないストーリーです。普段そういった舞台が好きな方があまり目にしない舞台になっていると思うので、そういった方にも届くような熱いお話なので、どれだけリアルに演じられるかが勝負です。それがきちんと届けばいいなという想いでやっております。引きこもりのニートの役なんですけども、見に来てくださる方に元気を届けられるように頑張ります!
岩佐:いかがですか、Cは。
橘:いやいや兄さん頼むよ!(笑)
岩佐:Cは実際にあった大航海時代、ヨーロッパの1400年代くらいをピックアップしたようなお話です。大航海時代ということで、海、空、新大陸というわかりやすいキーワードがありつつ、ドンドンジャラジャラバンバンというわかりやすい戦いがあります。展開もわかりやすく、誰にでも見てもらいやすいシーンにはなっていると思います。僕たちは双子の役で、血の繋がった一番近い存在の2人が大きな世界のなかでどんな絆を深めていくのかというお話になっております。
橘:Cチームはテーマパーク! 僕たちは双子の絆をどれだけ見せられるかを、この稽古期間でたくさん話し合って稽古を重ねてきたので、あとは我々がそれを届けるだけです。頑張っていきましょう!
岩佐:はい!
塩澤:Dの公演はアメリカの選挙の話です。純潔役の信長くんと色欲役の僕の役のテーマのエッセンスが入りつつも、個性豊かなキャラクターと会話劇が見どころだと思います。その辺も楽しみにしていただければと思います。
佐藤:1人の男の人を大統領にするために、僕たちが別々の立場のアシスタントしていくというお話です。天界では僕がアスモデウスに対して憧れじゃないですけど、そういう気持ちを抱いていて、人間界での僕たちの関係はバチバチしています。天界での関係性と人間会での関係性が変わってくるお話でもあるので、そのギャップも楽しんでいただけたらと思います。
五十嵐:はい、Eの公演では……。
一同:ないない!
五十嵐:公演はDまでです(笑)。

――今回13人全員が天使役ということで、キャストの皆さんのなかで「天使だなぁ」と思う人を教えてください。
宮澤:やっぱりりょうさんとか天使。
橘:おい!(笑)
岩佐:なんでなんで?
宮澤:男気あるじゃないですか。そういう部分で「俺は天使だ!」みたいな。
橘:男気と天使、全然重ならない!
塩澤:僕は相方の信長くんかな。可愛い感じもありつつ、ダンスとかすごく努力していたので天使だなぁと思いました。
千葉:岩永さんもちょっと天然でぽやんとしてて、場の空気を和らげてくれるじゃないですか。癒されますよね。
岩永:それは嬉しいね。
石川:こういうところよ!
一同:(爆笑)

<あらすじ>
あるとき創造主は、不完全な世界(人)を壊して、作り直すことを決める。
その決定に異を唱えた天使たちは、『黒』の烙印を押され、
翼を奪われて不完全な世界(人)に堕とされるのだった。
「世界(人)を見捨て天に帰ろう」と『白』の天使たちは、かつての友や兄弟を誘う。
しかし『黒』の天使たちは、人としての生を何度も繰り返しながら、首を振リ続けるのだった。
不完全なものだからこそ、世界(人)はこんなに美しいのだ、と。
これは、ここではないどこかで繰り広げられる、世界(人)と、黒と、白の物語。
原罪とは、愛してならないものを愛したこと。

【概要】
音楽劇 「黒と白 -purgatorium-」
日程:2020年2月19日(水)~23日(日)
全8公演
会場:日本青年館(https://seinenkan-hall.com/

2月19日(水)18:30開演(AB)
2月20日(木)18:30開演(CD)
2月21日(金)13:00開演(AC)/18:30開演(BC)
2月22日(土)12:00開演(AD)/17:30開演(BD)
2月23日(日)12:00開演(CD)/17:30開演(AB)
※開場は、開演の30分前です。
※A、B、C、Dの4つの物語が存在し、公演ごとに組み合わせが異なりますが、全公演で全出演者が登場します。
A:傲慢×奇跡編、B:憤怒×慈悲編、C:怠惰×努力編、D:色欲×純潔編(それぞれ担当の二人がメインの物語となります)
出演:
岩永徹也(傲慢・ルシフェル)
平井雄基(奇跡・ミカエル)
宮澤 佑(憤怒・サタン)
國島直希(慈悲・ラファエル)
岩佐祐樹(怠惰・ベルフェゴール)
橘りょう(努力・ラグエル)
塩澤英真(色欲・アスモデウス)
佐藤信長(純潔・サリエル)
須賀京介(嫉妬・レヴィアタン)
五十嵐拓人(強欲・マモン)
石川竜太郎(暴食・ベルゼブブ)
千葉瑞己(寛容・ガブリエル)
堀田竜成(調和・カシエル)
ほか
<スタッフ>
脚本・演出:斎藤栄作
企画・原案:山田一朗
キャラクターイラスト:夏生
楽曲提供:ZIZZ STUDIO
舞台音楽:kooge
振付:MAMORU
ヘアメイク:西村裕司
衣裳:西田さゆり
美術:乗峯雅寛
舞台監督:加藤保浩
音響:遠藤宏志・塚原康裕
照明:大波多秀起
映像:ワタナベカズキ
アクション:武智健二・吉田晃太郎
演出助手:山口美絵
制作進行:麻田幹太・神戸丈志
制作:古谷真弓
<公式サイト>
https://www.kuro-shiro.com/
<公式ツイッター>
@kuroshiro_2020
(C) KSP製作委員会