橋本良亮(A.B.C-Z)× 新納慎也 音楽朗読劇「日本文学の旅」日本語の美しさを知り、日本文学を音楽とともに知る。

あらゆる日本文学作品が揃っている”架空の図書館”を舞台に、司書と読書家に扮した2人の旅人が時空を超えた文学の旅をします。司書(若い旅人)役にはA.B.C-Zのメンバーとして活躍する橋本良亮が、読書家(壮年の旅人)役には俳優の新納慎也が挑戦する。
舞台はいたってシンプルだ。机が2つ、本が積まれている。椅子、テーブルのランプ、いかにも落ち着いた図書館の佇まいだ。
まずはミュージシャンが2名ゆっくりと登場し、そして始まる。歌を歌い、楽器を奏でる。それから司書と読書家が登場する。
「ようこそ!認証ナンバーを!」と司書がいい、番号をいう読書家。この2人の関係はワイン好きなグルメと客の好みをなんでも叶えてくれるソムリエのようにも見える。そして共通項は……  本が好き!


日本文学の旅、はるか遠い昔から遡っての旅、日本ができたところから始まる、『古事記』『日本書紀』、読んでなくても内容はよく知られている。そして奈良時代、万葉集・・・・・・言葉の変遷も辿れて、日本の文学の歴史もわかる、しかも時折音楽や歌が流れ、その瞬間は、ちょっと贅沢なライブハウスにいるかのような気分になる。日本文学だからといって音楽が和音階、というわけではない。様々な音楽、POPでグルーヴ感満載な曲も流れる。昔の日本語は、どこかメロディアスだ。有名な『枕草子』、「春は曙、やうやう白くなりゆく山際すこしあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」、それに合わせて照明が変わる、ビジュアル的な変化、日本の四季の美しさ、そして古文。わかりにくい、と思っていたのが、こういった形式だと、不思議とすんなり入ってくる。

『源氏物語』、ここでは現代語訳で。そして時代は進む、鎌倉時代、室町時代、そして江戸時代、それぞれの時代の言葉と世相、そういった背景など知っているときっと面白さは倍増するであろう。そして”古文って苦手で成績もパッとしなかった”という観客には、意外とわかりやすく、しかも美しい響きやリズミカルな言葉の数々に思わず目から鱗が落ちることであろう。途中で”百人一首”で競い合うシーンは思わず一緒に客席で競い合いたくなる(笑)。

そして明治に入って有名な、しかし、大概は読んだことのない坪内逍遥の「ロミオとジュリエット」「真夏の夜の夢」の一節が出てくる。これがすんなりと入ってくるのは新しい発見だ。また夏目漱石や森鴎外が外国語に堪能であった、という知識もさりげなく。また知識としてのみ頭に入っていた『徒然草』、『枕草子』、『方丈記』、日本の古典日本三大随筆、読んでみたことがない、というのが大体の日本人だと思うが、ちょっと読んでみたいと思ってしまうマジック。音楽や照明で朗読を彩る。橋本良亮、新納慎也の息のあった掛け合い、朗読。最後に「図書館には一生かかっても読み切れない本がある」という。上演時間は約1時間半、この短い時間には、本に、そして文学に対するあふれんばかりの愛に満ちている。テクノロジーが進み、驚くような技術の発達があろうとも、変わらないものがある。それは何ものにも代えがたいもの、言葉、文学、文化への愛おしさ。100年経ってもきっと、変わらない。

ゲネプロ前に囲み会見があった。久しぶりの舞台とあって緊張気味に橋本良亮(A.B.C-Z)、新納慎也、そして鈴木勝秀が登壇した。今までなら、3人もっと寄るのだが、両手を広げて距離をとる。

フォトセッションのあとは質疑応答。「プレッシャーはあります」と橋本良亮。この話は1ヶ月前に聞いたという。いわゆる『コロナ』騒ぎ後の初の舞台。そして台本の難しさ、なんたって古語がこれでもか、と出てくる。鈴木勝秀は「普通に読めない」と笑う。また自粛期間は当然のことながら”STAY HOME”、新納慎也は「ひたすら家にいましたが、早い段階で舞台に立たせていただけるありがたみを。この作品は劇場でしか感じられないものです」とさすがの舞台人らしく。また稽古も”ソーシャル・ディスタンス”、つまり近寄れない、ハイタッチはもってのほか、よくある”ご飯食べにいって親睦を深める”はもちろんない。その分、気合いは入っている二人。
鈴木勝秀は「昔の言葉は音楽のように聞こえる、全体が音楽と思っていただければ」と語るが、改めて言葉”言の葉”というものを感じる内容だ。新納慎也は「『日本語の流れるような美しさを音楽として聞ければいい』と言われました」と語る。つまり、単なる音楽付きの朗読劇ではなく、朗読そのものが音楽、調べなのだ、ということだ。鈴木勝秀は「楽しいところが多い」とコメントしたが、楽しく聴いているうちに1時間半が経過していた、という感覚だ。また「大切にしていることは?」に対して橋本良亮は「滑舌ですか(笑)、噛まないこと・・・・余計プレッシャーを感じます(笑)」とコメント、朗読劇は滑舌!そして新しいことは?の質問に新納慎也が「マグカップ売りました。経済的な事情(笑)」と周囲の笑いを誘った。
最後に「舞台人として劇場がこんなに長い間クローズしてて・・・・万全の体制でお迎えしますので、ぜひ、劇場でしか体験できないことを!足を運んでいただきたい。文化を絶やさない、そう世界中が意識してくれれば」(新納慎也)、「大変ですが、『観たい』というお客様がきてくださり、綺麗に初日を迎えることが一番、ジャニーさんが笑ってくれれば・・・・・『観てて!』」(橋本良亮)

<概要>
タイトル:橋本良亮(A.B.C-Z)× 新納慎也 音楽朗読劇「日本文学の旅」
日程・会場:7月9日(木)~22日(水)  よみうり大手町ホール

上演台本・演出:鈴木勝秀
出演:橋本良亮(A.B.C-Z)/新納慎也/大嶋吾郎(ヴォーカル・ギター)/鈴木佐江子(ヴォーカル)

主催:読売新聞社 / 全栄企画株式会社
制作:株式会社ちあふる / 株式会社クオーレ

公式HP:http://zen-a.co.jp/nihonbungaku/
取材・文:高 浩美