舞台『薔薇と白鳥』マーロウとシェイクスピア 葛藤と対立と友情と羨望 虚と実が交錯する歴史ミステリー #八乙女光 #高木雄也

Hey! Say! JUMPの八乙女光、高木雄也のダブル主演舞台『薔薇と白鳥』が、5月27日から東京・新大久保の東京グローブ座、6月29日から大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。

同作は、これまでに数多くの舞台作品の脚本・翻訳・演出を手掛けてきたG2が書き下ろす「シェイクスピア誕生」の秘話に迫る歴史ミステリー。16世紀末のイギリスに実在した、エリザベス朝期の演劇の礎となった劇作家クリストファー・マーロウとウィリアム・シェイクスピアの友情や葛藤、対立、秘密を、G2の仮説に基づいたフィクションに、史実や当時の演劇のエピソードを織り込みながら描く。片田舎で職人として暮らしていた無学の青年ウィリアム・シェイクスピアを高木雄也が、ロンドンの演劇界に現れた同年齢の天才劇作家クリストファー・マーロウを八乙女光が演じる。

 

クリストファ・マーロウは謎の多い人物、エリザベス王朝時代に活躍、代表的戯曲は『フォースタス博士』(Doctor Faustus)、『エドワード2世』(Edward II)など。ケンブリッジ大学に入学、聖職者となることを期待されるが、彼は聖職や神学に興味を示さず、もっぱら文学に傾倒、大学入学直後から戯曲執筆をはじめていた。また、この作品に登場するローズ座も史実では1587年に起業家のフィリップ・ヘンズロウと食料雑貨商人のジョン・チョムリーによって創設された。ロバート・グリーンやクリストファ・マーロウの戯曲の上演もしており、またウィリアム・シェイクスピアの戯曲のための特注劇場としては初めての劇場であった。

 

このように史実に基づきながらも、そこにオリジナルな解釈や想像を加味、歴史ミステリーに仕上げている。幕開きはこの物語の主人公であるクリストファ・マーロウが登場する。彼は言う「何をしでかしてやろうか」と。才気に溢れ、野心家っぽい雰囲気、八乙女光が大きな熱量を持って颯爽と出てくる。史実でも型破りで自由奔放、まさに何をするのか、目が離せない人物。ローズ座のヘンズロウは「金になるか、ならないか」と嘯く。基本的に興行主なので、“金”は基本、そんな俗っぽさを佐藤B作が流石の貫禄で演じてくれる。「お前はここんところ書いてないじゃないか」とマーロウに言う。そう、観客が喜ぶ戯曲がなければ、商売は成り立たない。そこへ現れたのがウィリアム・シェイクスピア、今や誰もが知っている作家だ。ストラトフォード・アポン・エイボンの生まれ、いつロンドンにやってきたかは不明だが、1592年頃には演劇の世界に身を置くようになっていた。まだ無名な作家、これが初舞台という髙木雄也が演じる。また、怪しげな男、名はイングラム・フライザー、武田真治がダークな雰囲気で現れる。ローズ座には人気俳優であるエドワード・アレンことネッドがおり、ローズ座を盛り上げる。彼もまた実在の人物であり、エリザベス王朝時代に成功した俳優で、後にダリッジ・カレッジを創設、後世には多くの著名人を輩出している。そんな史実を押さえておくと物語は俄然、面白くなるし、キーマンは皆、実在した人物なので、ちょっと想像力を働かせると奥が深い。屈折した、癖のあるマーロウに人懐っこくて明るいウィルことシェイクスピア、性格的なこともあってウィルは演劇界においてメキメキと頭角を表す。ある日、マーロウはウィルの書いたものを読み、その才能の煌めきを感じ、ちょっと複雑な表情を見せる。

 

物語はマーロウとウィルの2人を軸として進行し、そこに様々な史実を挟み込む。エリザベス王朝時代は内政的に見るとプロテスタントとカトリックの対立を終息させ、国力を充実させたが、反面、奴隷貿易やアイルランド・カトリック弾圧などもあった。またアルマダの海戦でスペインの無敵艦隊を破ったが、その後、イングランドはスペインに侵攻するものの大敗、スペインはアイルランドのカトリック教徒のゲリラ支援をしている。またシェイクスピアの父方、母方双方ともローマ・カトリックの信者だったそうであるから、この宗教的な絡みも、この物語に影を落とす。

 

それでも時代は動き、シェイクスピアは人気作家になり、服装も華やかに。対するマーロウは無精髭に髪はボサボサ。嫉妬、羨望、欲、一瞬そんな言葉が思い浮かぶ。人としての煩悩、誰でも持っている感情だ。そして衝撃の展開と結末に向かって登場人物達は、その波にのまれていく。マーロウは「エドワード二世」を書き上げて、ネッドに渡す。そしてラスト近く、マーロウはウィルに言う「お前は書きたいはずだ」と言い「お前には俺を超える才能がある」と。そして「書いて書いて書きまくれ!」と檄を飛ばす。立ちすくむウィル、全ての伏線がここに集約される。そして結末を言うのは野暮というもの、ここは是非、劇場で目撃して欲しいところ。

 

破滅型のクリエイターであるマーロウと、その真逆なウィル。一見、水と油のような、全く違うキャラクターであるが、“創造をして何かを生み出す”という点においては志は同じだ。感情を爆発させる瞬間のマーロウを八乙女光が力をスパークさせ、対するウィル演じる髙木雄也は1幕では好青年ぶりを発揮し、2幕では人気作家になった驕慢さと隠されているしたたかさもにじませ、マーロウの言葉で本来の素直さを見せる。脇を固める俳優陣も適材適所で、この歴史ミステリーを盛り上げる。舞台セット、後ろに描かれた背景画、線で描かれているが、このシンプルさが当時のロンドンを想像させてくれる。回り舞台も効果的でスピーディーに場面展開、何度でも観たくなる作品だ。

 

なお、ゲネプロ後に囲み会見があった。登壇したのは八乙女光、髙木雄也、武田真治、佐藤B作。

実は八乙女は4年ぶりの舞台で髙木は初舞台だそう。八乙女光は「(髙木が)稽古場で見せる表情が違う」といえば「4年前に(八乙女の)舞台観て興味持ちまして・・・・・・いいな〜と」と語る。舞台経験は八乙女の方が先輩ということに。髙木は「皆さんより先にお稽古して深めていこうと」といえば八乙女は「G2さんから色々と細かく・・・・・・ゼロからつくっていった」とコメント。初舞台の高木は「初歩的なところから教えてもらいました。会話する時に横向いちゃったりとかして・・・・・」とちょっと照れ笑い。八乙女が演じるマーロウは謎も多い人物で相当、勉強した様子。そして2人とも佐藤B作や武田真治からたくさんのアドバイスをもらったとか。武田が「内面から役を作る、気持ちから作っていく、それから見え方のことも・・・・・」とコメント、流石の先輩ぶり。そして佐藤B作は2人に対して「いっぱいダメだし頂いてて・・・・・・ホント、大丈夫かな?と、精神的な支えにならなきゃな〜。温かく見守る親父に」と語り、その言葉をかみしめる八乙女と高木。さらに「応援したくなる2人、ムキになっていくところが魅力」と佐藤B作。八乙女は「昨日、通し稽古やって、そうしたらダメだしがバーっと(苦笑)」なかなか、容赦ないダメ出しだったようだが、「悔しい」と言ってそれを克服しようとする姿勢、高木は「ミスると『あ〜』ってなる、終わってから切り替えるように」とこちらも頑張る、頑張る。

また、楽屋の暖簾の話になり高木は「まもなく届くかな?」と。亀梨和也からのものだそうで、ここは“先輩愛”。またゲネプロで高木は色々と反省点もあったようで「色々見つかって・・・・・・最後は楽しめるようにやろうかな?」と希望を。メンバーの観劇について八乙女は「バラバラに来てくれると思う。山田が凄い楽しみにしてくれているみたいで」とコメント。長台詞で見ごたえのある作品、がっちりと演じる2人に注目!

 

<ストーリー>

16世紀末、エリザベス女王統治下の英国―
天才劇作家クリストファー・マーロウ(八乙女光)は、若くしてヒット作を生み出すも、
奔放な生活で金に困り娼婦ジョーン(町田マリー)の家に居候している。

ある日、ストレインジ卿の依頼で田舎出の俳優志望の青年に、劇作を教えることになる。
その青年の名はウィリアム・シェイクスピア(髙木雄也)。
マーロウは自らの戯曲を見せ、「芝居は教わるものではない、盗め」と告げる。

シェイクスピアは、並外れた記憶力を持つだけでなく、
人懐っこい性格でローズ座の劇場主であるヘンズロウ(佐藤B作)や
人気俳優エドワード・アレン(本折最強さとし)など、周囲の人々から信頼を得ていく。
そんなシェイクスピアの才能に触れることで、
マーロウ自身も心の奥底にある熱いものを突き動かされる。
そして、劇作家として、自分の表現のため、真剣に劇作に向かい始めるように。

そんな中、「シェイクスピアは何者なのかを探れ」と、人殺しも厭わない残忍な
諜報員フライザー(武田真治)から依頼を受けたマーロウは隠された事実を知り・・・・・・。

【公演概要】

作・演出:G2
出演:
八乙女光 高木雄也
武田真治 町田マリー 本折最強さとし 有川マコト 林田一高 鹿野真央 佐藤B作

東京公演:
2018年5月27日(日)~6月24日(日)全30公演
会場:東京都 新大久保 東京グローブ座

大阪公演:
2018年6月29日(金)~7月1日(日)全5公演
会場:大阪府 森ノ宮ピロティホール

 

公式サイト:

https://www.bara-hakucho.jp

 

文:Hiromi Koh