舞台「ぼくらの七日間戦争」自由に生きること、そして未来に向かって笑うこと。

原作は1985年に宗田理により書き下ろされた「ぼくらの七日間戦争」(角川文庫・角川つばさ文庫 刊)、累計発行部数2000万部以上の大ヒット作。1988年に宮沢りえ主演で映画化され、話題に。昨年の2019年にアニメ化、そして2020年、初舞台化となる。
出だしは2000年の東京。スーツ姿の男性が登場し、「最近の中学生は…」とつぶやく。中学の教師、「お前ら、何話してんだ」、生徒は「話してませーーん」と反抗的。どこにでもありそうな光景だ。
それからキャラクターが次々と、タイトルロール、時代は遡って1985年になる。2000年、舞台上に登場した男性は実は1985年の中学生・菊地英治(馬場良馬)だ。制服が、男子は詰め襟、女子はセーラー服、着崩している生徒も、スカート丈が長い女子も!この時代をリアルに知ってるなら「うん、うん」と頷ける服装だ。そしてジャージを着た先生が!生活指導の教師、反抗的な生徒に対して手をあげる、いわゆる体罰、今なら考えられない光景。罰として腕立て伏せをやらされる。そんな状況の中、菊地英治らは、あることを実行に移す…。

詰め襟、セーラー服が懐かしい。
「解放区」に立て篭る子供達とうろたえる大人達。
この物語の主人公・菊池英治。

この物語の主人公である菊地英治は語り部的な立ち位置でモノローグ、時間軸は多少、行きつ戻りつで進行する。菊地英治が主人公であるが、群像劇的。そして彼のクラスメートが個性的。相原徹(沖野晃司)はリーダー的存在、安永宏(友常勇気)は直情的で友情に厚い。宇野秀明(秋葉友佑)は、ちょっと臆病、といった具合だ。また得意分野を生かし、立石剛(一瀬晴来)は花火師の息子、花火の知識を生かしてあることを思いついたり、頭も良い谷本聡(中島礼貴)はエレクトロニクスの天才であだ名は「エレキング」、そんな彼らが廃工場に立て篭る。そんな時にまさかの!「解放区」に参加しようとした柿沼直樹(志村玲於)が誘拐されてしまうのだが…というのがだいたいの流れ。

手にしているのは…
ファッションにも注目。

原作を読んでいたり、ヒットした映画を観ていれば、結末は先刻承知だ。それでも思わず見入ってしまう。親や教師、世間を相手にチームワークよく行動し、結果に一喜一憂。そして彼らに味方する大人も。偶然出会った老人・瀬川宅蔵(石橋保)、ホームレス、たまたま廃工場で寝泊まりしており、偶然出会った。ホームレスとは言え、悲壮感はなく、どこか飄々としていて、仙人のよう。戦争経験があり、「戦争ってどんなもんか知っているか」と子供達にいう。

「戦争を知っているか?」と問いかける老人。
心配する母、着ているスーツ、時代を感じる。
学校関係者。

一方、子供達がいなくなって心配する親たち。そして学校関係者、教師、教頭や校長。そして行方不明ではなく、廃工場に立てこもっていると知り、安堵しつつもわけ知り顔で大人たちは歌う「自由欲しいって?子供なのよ、10年早えぞ」と。大人たちの”大人の事情”も見えてくる。世間体をきにする校長・榎本勝也(幸村吉也)、神経質で、いかにも上司に弱そうな教頭・丹羽満(酒井敏也)、医院を経営している直樹の父・柿沼靖樹(杉江優篤)と妻の柿沼奈津子(遠山景織子)、息子は父の”秘密”を知っている。普通の人々であるが、どう贔屓目に観ても子供達の模範にはなれない大人たち。”子供だから”とたかをくくっている様子だが、子供達は実は大人たちを見抜いている。だから日本大学全学共闘会議をまねた「解放区」を思いついた。自由のために、真の意味で”生きる”ために。

仲の良い二人。

原作が発行されたのは1985年、昭和60年。その頃の日本はいわゆるバブル景気に湧いていた。キャストが着ているファッション、肩パットの入ったスーツ(バブリーダンスで注目された)、トレーナーを肩から、”純一まき”、ジーンズのシルエットも当時流行ったもので、この時代を知っていれば『あるある』。当時、イケてたファッションは”死滅”したが、この物語は色褪せない。奇想天外な設定(FM放送を使ったり、TVレポーターに取材させたり)かもしれないが、描かれていることは普遍的だ。また、舞台ならではの演出、廃工場と教室、これのチェンジの仕方、教室は子供達にとっては不自由な場所、そして廃工場は彼らにとってはのびのびとできる場所。ここの演出は要注目。また、中学生を演じる俳優陣、年齢を聞くと…ではあるが、舞台マジック、観ているうちに中学生に見えるのは、ミラクル。脇を固める”大人”たちの演技、石橋保の老人、こんなお爺さんがいたら頼もしくも面白いだろうな、という雰囲気。また、酒井敏也の小者感、遠山景織子の子供を想う母(80年代ファッションが似合う!)、昭和な良妻賢母、堀場久美子(國森桜)の父・堀場千吉(河内浩配)、建設会社の社長でPTA会長、”灰色”な大人っぷりを見せる(後に大変なことに)、配役が適材適所。脚本・演出は久保田唱、パンフレットには22歳の時に企画演劇集団ボクラ団義を立ち上げたと書かれており、この『ボクラ』は完全に「ぼくらの七日間戦争」の影響とか。原作大ファン、演出家の原作愛も感じ、また、歌が入るが、この作詞も久保田唱が手がけている。
原作の舞台化なので、戦車は出てこないし、びっくりするような仕掛けもないが、キャスト・スタッフの「ぼく七大好き」感が詰まっている。
ライブ配信プラットフォーム「ミクチャ」にて千秋楽公演のライブビューイングが決定!感動の千秋楽、 お見逃しなく!!
そして、 YouTubeにて海外向け全編無料配信も予定。

そして2000年、ぼくらは再び集まった。

[ぼくらの七日間戦争]
1学期の終業式の日、東京下町の中学校に通う、菊地英治ら1年2組の男子生徒達が突如行方不明となる。親たちは懸命に英治らを探すが全く見つからない。実は英治らは、荒川河川敷の廃工場に立てこもって、外にいる橋口純子ら女子生徒と、体罰によって大怪我を負った谷本聡と協力し、廃工場を日本大学全学共闘会議をまねた「解放区」とし、校則で抑圧する教師や勉強を押し付ける親に対し、反旗を翻していたのだ。だが、1年2組の男子生徒の柿沼直樹は、それに参加する前に誘拐されてしまう。英治たちは廃工場で出会った老人・瀬川卓蔵と共に彼を救出しに奮闘すると同時に、突入してきた教師に様々な仕掛けで対抗し、隣町の市長の談合を生中継するなど、悪い大人たちをこらしめる。
<概要>
舞台「ぼくらの七日間戦争」
【原作】宗田理「ぼくらの七日間戦争」(角川文庫・角川つばさ文庫 刊)
【脚本・演出】
久保田唱(企画演劇集団ボクラ団義)
【出演】
菊地英治 馬場良馬

相原徹 沖野晃司
天野司郎 松本岳
柿沼直樹 志村玲於(SUPER★DRAGON)
安永宏 友常勇気
宇野秀明 秋葉友佑
立石剛 一瀬晴来
中尾和人 飯山裕太
谷本聡 中島礼貴
佐竹哲郎 山中健太
佐竹俊郎 山中翔太

中山ひとみ 浜咲友菜(AKB48)
堀場久美子 國森桜(劇団4ドル50セント)
橋口純子 鹿目凛

柿沼靖樹 杉江優篤
酒井敦 白柏寿大
八代謙一 添田翔太
菊地詩乃 平山空
矢場勇 青地洋
杉崎警部 吉田宗洋
西脇由布子 諸塚香奈美

堀場千吉 河内浩(劇団俳優座)
榎本勝也 幸村吉也
橋口暁子 緒月遠麻

田中康弘 佐々木崇

柿沼奈津子 遠山景織子

瀬川宅蔵 石橋保

丹羽満 酒井敏也

【公演日程】
2020年9/11(金)~9/20(日)
※受付開始60分前/開場30分前
【会場】
かめありリリオホール
【公式HP】
https://2020bokura7.com/
【公式Twitter】
@2020bokura7
【問い合わせ先】
2020bokura7@gmail.com
【主催】
株式会社キョードーファクトリー
【権利表記】(C)️2020宗田理 /舞台「ぼくらの七日間戦争」製作委員会