『舞台 PSYCHO‐PASS サイコパス Virtue and Vice 2』正義、生きる意味、そして未来はどこへ向かうのか。

『舞台 PSYCHO‐PASS サイコパス Virtue and Vice 2』が開幕する。この物語は舞台第一弾の前日譚となっており、嘉納火炉(和田琢磨)の過去を描く。

開演前、舞台上のプロジェクション・マッピングに注目したい。その映像技術もさることながら、写っている人々が、現代の格好をしている者もいれば、江戸時代のちょんまげの男性や花魁も。そしてネオンが煌めく、ちょっと異世界な空気感を孕んでいる。開演前から始まっていると言っても過言ではない。そして衝撃的な出だし、この作品らしい。ほんのちょっとだが、観客席も巻き込まれるので、前の方に座るなら、ここはぜひとも巻き込まれて見るのも一興。そしてオープニング。今回の主人公は嘉納火炉、異例の昇進で監視官に任命されるところから始まる。昇進は誰でも嬉しいもの。
びっくりしつつも、ちょっと表情がほころぶ嘉納火炉であったが、すぐに事件が!スーツケースに押し込められた死体は見るに絶えない状態であった。「トロリー・プロブレムを見過ごすな」と言う謎のメッセージ。

嘉納火炉とともに任務に当たる面々、 斎記冬真(藤本隆宏)、貫禄もあり、ベテラン、上司に当たる。そして見た目はクールビューティな逆咲一花(青野楓)、渋い風貌の周麟太郎(弓削智久)、そしてフレッシュな新人・御子柴夕(中尾暢樹)。皆、個性的、凸凹感が微笑ましい。捜査していくうちに独立集落 「特別自治区 Neo・Nature・Division」が事件に関わっていることが明らかにあるが、それを阻むもの、特区内の治安維持組織の構成員・神宮寺司(荒牧慶彦)らが立ちはだかる。さらに政府の圧力が斎記冬真に、彼はその旨を苦しそうに伝える。

個人で活動しているわけではないので、組織に従わなければならない刑事課三係の面々。納得できない嘉納火炉、それは他のメンバーも同じこと。彼らはぶつかり合いながらも協力して立ち向かっていく。そして神宮寺司は何を考えているのか、そして多和田任益演じるキャラクターが!ラストは衝撃的。


人間のあらゆる心理状態や性格傾向の計測を可能とし、それを数値化、とりわけ、犯罪に関しての数値、これを「犯罪係数」として計測され、たとえ罪を犯していない者でも、規定値を超えれば「潜在犯」として裁かれる、という設定、徹底した監視社会。息の詰まりそうな設定、未来。

その中で生きる人々、神宮寺司の目的は?ラスト近くで判明されていくが、まさに『正義とは?』という命題を観客につきつける。犯罪係数が基準値を超えていれば、その人間の意志や尊厳に関係なく「潜在犯」となる。最後の最後まで息つく暇のないキリキリとした展開、アクション、バトルシーンもたっぷり、悲しい別れのシーンも用意されている。そして回り舞台とプロジェクション・マッピングを駆使した舞台、また映像で雑賀譲二役として山路和弘が登場、存在感たっぷり。また声だけの出演で常守朱(CV花澤香菜)、禾生壌宗(CV榊原良子)、ドミネーター(CV日髙のり子)、豪華!

己の信じる道を行こうとする主人公、それについていく同じ刑事課三係の面々、逆咲一花は「自分の意志でついていきます」と嘉納火炉に告げる下り、凛々しさと清々しさを感じる。「潜在犯は切り捨てられる」という神宮寺司、安全に暮らせる社会というところから生まれた「犯罪係数」が人々を苦しめる。本当に正しいことは?正義とは?生きる意義、意味。近未来を描いているこの作品、痛烈な風刺、そして群像劇的な要素もあり、サスペンスな面白さ、休憩なしのおよそ2時間、歴史ある明治座が近未来の空間に。キャストの熱量、またアンサンブル陣の活躍も!そして劇場で観劇が叶わないファンにはライブ配信も!こちらへアクセス!!(視聴チケット:https://eplus.jp/p-p-st/)また、2021年5月26日(水)Blu-ray&DVD発売決定!
まずは無事に千秋楽まで駆け抜けて欲しい。

<あらすじ>
公安局刑事課に所属する執行官の嘉納火炉(かのうひろ)はある日、公安局局長・禾生(かせい)からの辞令を受け、異例の昇進で監視官に任命される。
時を同じくして、公安局宛にスーツケースに押し込められた死体が届く。そして死体には「トロリー・プロブレムを見過ごすな」と言う謎のメッセージが添えられていた。嘉納を筆頭に新任執行官らで編成された刑事課三係の面々は、未だ足並みが揃わぬなか事件の捜査にあたるが軋轢は徐々に広がっていく。死体の発送元を辿ると、自然回帰主義者らが暮らすシビュラ社会から隔絶された独立集落 「特別自治区 Neo・Nature・Division」《通称 NND》が事件に何らかの関係があると発覚する。
嘉納は執行官らと調査に赴くが、そこで特区内の治安維持組織の構成員・神宮寺司(しんぐうじつかさ)と激しく対立する。
神宮寺が事件の鍵を握ると推測した嘉納は強引に捜査を進めるが、政府からの圧力を受け思うように進まない。
そして次第に、様々な利権と思惑が複雑に絡んだNNDの闇が浮かび上がっていく…。
「トロリー・プロブレム」とは?謎の死体が意味するものとは?神宮寺の目的とは?そして、嘉納はひとつの答えに辿り着く―。

<作品について>
人々の精神が数値化される近未来で、正義を問われる刑事のドラマを描くアニメーション作品『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズ。
フジテレビ“ノイタミナ”にて、2012年10月にTVアニメ第一期が放送され、大ヒット。現在までにTVアニメ第三期まで放送、劇場アニメが5作品劇場公開されるなど根強い人気のもと大好評を博している。
「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」は、公安局刑事課三係を舞台にしたオリジナルキャラクターたちによるスピンオフストーリーで、2019年4月にはアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの脚本家・深見真が舞台用に書き下ろした第一弾が上演された。
第二弾となる本作では、その前日譚として、嘉納火炉の過去を描く。

<公演概要>
タイトル:『舞台 PSYCHO‐PASS サイコパス Virtue and Vice 2』
公演日程・会場:
<東京>2020年11月20日(金)~11月29日(日) 明治座
<大阪>2020年12月3日(木)~6日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

出演: 和田琢磨、荒牧慶彦、多和田任益(梅棒)、中尾暢樹、青野楓、弓削智久/藤本隆宏
海本博章、長田拓郎、河野賢治、清水優志、田中慶、田沼ジョージ、田ノ中亮資、 茶谷優太、
野島透也、藤澤アニキ、藤田真澄、町田尚規、本広春(アンサンブルキャスト、五十音順)
映像出演:山路和弘
声の出演:常守朱(CV花澤香菜)、禾生壌宗(CV榊原良子)、ドミネーター(CV日髙のり子)
原作:サイコパス製作委員会
演出:本広克行 脚本・演出補:池田純矢 脚本監修:深見真
音楽:菅野祐悟 アクション監督:奥住英明(T.P.O.office) 美術:石原敬(BLANk R&D INC.) 照明:吉川ひろ子(クリエイティブ・アート・スィンク) 音響:今村太志(サウンドクラフトライブデザイン社) 映像:横山翼、石田肇 衣裳:及川千春(とわづくり) ヘアメイク:河村陽子 演出助手:荒井遼 舞台監督:岩戸堅一・久保年末(アートシーン) 宣伝美術:石塚丈仁(Rotterdam‘s doing.) 宣伝写真:本多大介(エーケーエー) プロデューサー:千葉悦子(ソニー・ミュージック)、深澤耕輔(ポリゴンマジック) 制作:ソニー・ミュージックエンタテインメント、ポリゴンマジック
主催:舞台「サイコパス2」製作委員会

公式サイト:https://psycho-pass-stage.com/
公式Twitter:https://twitter.com/PSYCHOPASSstage

©サイコパス製作委員会 ©舞台「サイコパス2」製作委員会
取材・文:高 浩美