市川海老蔵,初めて自身の名前に“歌舞伎”を冠する!2021年歌舞伎界の新たな歴史の幕開け!!「初春海老蔵歌舞伎」@新橋演舞場 会見レポ

「初春海老蔵歌舞伎」 市川海老蔵が挑むのは市川家所縁の歌舞伎十八番の名作『毛抜』 市川ぼたん 堀越勸玄はそれぞれ歌舞伎舞踊に挑戦!!

「海老蔵」と「歌舞伎」の名を冠した「初春海老蔵歌舞伎」は、市川海老蔵にとって自身の名前に「歌舞伎」がついた初めての公演。コロナウイルスという未曾有の災禍にあり、東京での長期の歌舞伎公演は2020年1月新橋演舞場公演以来1年ぶり。コロナ禍の大変な今だからこそ、歌舞伎の灯を絶やさず、新たな挑戦をすべく2021年1月、市川海老蔵が始動する。
演目は、『春調娘七種』、『毛抜』、『藤娘』、『橋弁慶』。海老蔵は成田屋のお家芸である歌舞伎十八番の内『毛抜』で 2021 年の幕を開ける。そして、お正月の特別企画「お年玉」として、舞踊の名作『藤娘』 を市川ぼたん、弁慶と牛若丸の出会いを描いた『橋弁慶』を海老蔵と堀越勸玄が親子で踊ります。 海老蔵が魅せる新たな「初春海老蔵歌舞伎」!。
12月16日、都内にて会見が行われた。登壇したのは市川海老蔵、市川ぼたん、堀越勸玄。
まずは挨拶。
「『海老蔵歌舞伎』という名称のもと、『春調娘七種』、『毛抜』そして、お年玉と称して『藤娘』『橋弁慶』、新春、4つの舞台で構成する舞台を始めます。引き続き宜しくお願い致します」(市川海老蔵)
「みなさま、こんにちは。市川ぼたんでございます。『藤娘』をさせていただきます。宜しくお願い致します」(市川ぼたん)
「みなさま、こんにちは。堀越勸玄でございます。1月は『橋弁慶』の牛若丸を務めさせていただきます。宜しくお願い致します」(堀越勸玄)

それから質疑応答の時間となった。『毛抜』にかける思い、公演名についての質問、市川海老蔵は、
「正月に『毛抜』、コロナでみなさまと同じように苦難の日々、昔のような喜びや楽しみ方、遊び、そういったことが困難で、子供達も外で遊んだり、友達とおしゃべりしたり、できない。まだ見えない状況で、元気が出る演目ということで、市川家の十八番、なんだろうなと思い、その一つが『毛抜』。粂寺弾正、勇猛かつ頭脳明晰で男の余裕、色男、市川家に伝わる型をご覧になっていただく…いつもと違う大晦日、お正月を迎える、少しは正月らしいものを見たなと思っていただける。市川家の演目として、選ばせていただきました。最終的にはこの演目で。また、タイトルですが、勉強不足でわからないのですが、俳優の名前がつくのは前例はないようですが…多分、初めてということは聞いております。名乗って良いという松竹様のご判断です。コロナで新作が作れないので、古典を中心に、古典を追求したいと。そして、ぼたん、勸玄など、若い世代、次の世代の人たち、日本の伝統を支えるというのを、(我々が)指導しながら、きちんと見守ることをコンセプトに『海老蔵歌舞伎』という名称にいたしました」とコメント。
また襲名披露が春に予定されていたが、もちろんコロナ禍で延期。そして4月からは緊急事態宣言発令。2020年は世界中で特別な年になった。また、市川ぼたん、堀越勸玄のこの1年での成長などの質問が出た。
「みなさまと一緒でございます。4月から緊急事態宣言が出て、4、5、6月は襲名披露、師匠と弟子、父と子という時間がないことを想定していたのですが。しかし、それが解けるまでの間は、朝から晩まで一緒に生活していました。普段は多忙なゆえに子供たちの本当の姿を見れていなかった部分に気がつきました。少し、笑顔が減ったかな?と正直おもいました。いろいろと話していくうちに親子の絆が深くなりました。笑顔が元に戻ってきてやはり、子供は子供らしくが一番良いと思っています。そして栄養バランスを考えた食事をするようになりました。これが変わったことかな?と」
そして改めて市川ぼたんと堀越勸玄から意気込み。


「久しぶりの舞台なので少しドキドキしています。頑張っていきたいとおもいます」(市川ぼたん)
「12ヶ月ぶりなので!スペシャル頑張りまーーす!!」(堀越勸玄)(隣で市川海老蔵が思わず笑う)
また市川海老蔵は
「ちょうど1年前1ヶ月に50公演ぐらいあった。今回は20回です。今の時代を乗り越えないといけない。子供たちもともに生活できる環境下になり、途中で学校が始まりましたが、やはり、第一にコロナ対策。様々な予防対策はさせていただいております。私も子供たちも、感染をしない努力は必須。『藤娘』は1日に2回踊る日がございます。お稽古もずいぶんとしっかりとやております。人間の力を信じる、また弁慶と牛若丸、五条の橋で。そこを2回やるということ。様子を見ながらしっかりとフォローする…みなさまのはからいでこのような興行ができる。本当にいろんな方々のご尽力でございます。お客様も多くの方にきていただく予定になっております。何事も起こらないように、滞りなく舞台の初日を迎えることを心から祈っております」と語る。
襲名披露もいつできるかわからない状況で、そこに対して「2020年は襲名披露のはずが、また堀越勸玄の襲名も、ぼたんも…コロナがどうなるのか世界中がわからない状況です。私の新之助襲名は7歳でした。自分のことよりも襲名をどう捉えるのかが重要。10歳であろうと何歳であろうとも、構わないという気持ちです」と語る。
また、少々、早いが新年の抱負は?という筆問。

「難しいですね。大見得きれないし…なんとか仕事、頑張りますとは言えない。コロナに早く収束していただいて、世の中が治り、経済がまわり、元気になり、その上で我々の舞台芸術の活動があります。そこを目指してひたすらコツコツと歌舞伎という責務に対して進んでいく、何事にもとらわれずに1年過ごしていきたい」
『毛抜』、『藤娘』など、演目をチョイスした理由についての質問が出た。

「『毛抜』は病気をなおすというよりはお家騒動を解決するものです。髪の毛がさかだつ病、それを解決する荒事です。『藤娘』は、歌舞伎、日本舞踊の中でも道成寺、登竜門、また舞踊も立ち役の舞踊と女型の舞踊があります。女型の舞踊の中では高度な技術、様々なものが必要で六代目尾上菊五郎が”チョンパ”という演出方法を作り上げています。伝統的な舞踊です」とコメント。実はヒットしている『鬼滅の刃』に『藤娘』に関連したシーンがあるので「便乗させていただき、藤の精の存在を妄想して楽しんでいただけるのでは」と語る。『橋弁慶』については「私が2つの演目に出ていいものかと。しかし、この『橋弁慶』は五条橋で、武蔵坊弁慶が牛若丸、のちの源義経、ここで主従関係を。弁慶が家来になるという簡単な話ではなく、契りを結ぶ。せがれが牛若丸を私が弁慶を。今後、私が『勧進帳』を務める時に、その前にぜひ、これを見ていただきたい。この関係があるからこその義経と弁慶の主従の関係性につながると思っています。ぜひ、いつか、いずれくるとおもいますので、この『橋弁慶』を布石に。これを体感していただく、ということでございます」と熱く語る。
また、市川ぼたんと堀越勸玄に質問が。家での過ごし方。
「お父さんがいない日は、少し家族が静かになって、悲しいような感じになってしまうので、お父さんがいないと悲しいけど、なんかはまっているテレビやYoutube見たりいろいろな勉強とかしています。お父さんがいる時はいろんな遊びをやってくれるので嬉しいです。ん…サッカー!屋上でサッカーをすることです!」(市川海老蔵)
父である海老蔵への蹴りもあるらしい…?!
また、お年玉ということで、欲しいお年玉は?
「おねだりすることは……(てん、てん、てん、てん)ゲームしていい?」(堀越勸玄)
父代弁「ゲームする時間が欲しい?(はい、と勸玄)ゲームもしますし、宿題もして食事もきちんとしていますので、あとは好きにしていいと。今は『ドラゴンボール』も・・・。ゲーマーの道へ、ちょっと修正したいなと(笑)」。そこで勸玄が「夢は24時間ゲームすること!」と、夢はゲーマー!?お年玉は「僕はパパから1万円もらいたいです」といい、海老蔵は「父、一生懸命に頑張ります」と返した(笑)。
最後に市川海老蔵は「多くの方々にきていただく、このようにコロナ禍の中でも、『海老蔵をみよう、娘、息子を見よう、俳優陣を見よう』という気持ち、御礼を申し上げます。我々も最大限の努力をして、松竹さん、新橋演舞場さん、我々みんなですべての人たちが心を一つにして。新橋演舞場にお越しいただければ!ぜひ!お越しください!」と締めて会見は終了した。

<演目解説>
『春調娘七種』
歌舞伎および日本舞踊の演目の一つ。曽我の対面の中で演じられた長唄による所作事で、曽我五郎、曽我十郎の兄弟に静御前をまじえた三人が春の七草にまつわる所作を見せるもの。
『毛抜』
歌舞伎十八番のひとつに数えられる。
粂寺弾正は、使者として小野春道の館に向かう。春道の娘錦の前は、髪の毛が逆立つ病に取り憑かれていた。弾正は春道を待っている間、毛抜きでひげを抜いていたところ、毛抜きが勝手に立って踊り始める。しかし、銀の煙管はなんともない。どうやら天井が怪しいと睨んだ弾正は槍で天井をつくと、大きな磁石を持った忍が飛び降りてきた。娘錦の前の髪にさしてあった鉄のかんざし。磁石で髪の毛が逆立っていたことが判明する。
7代目團十郎が演じた後はしばらく途絶えていたが、1909年(明治42年)に2代目市川左團次が復活させた。
『藤娘』
大津絵に題をとった歌舞伎舞踊(日本舞踊)の演目、及びその伴奏の長唄。もとは絵から出て来た娘が踊るという趣向の五変化舞踊だったが、六代目尾上菊五郎が娘姿で踊る藤の精という内容に変え、演出を一新。以来、これが一般的になった。藤の絡んだ松の大木は、松が男を、藤が女を象徴している。
『橋弁慶』
能楽作品のひとつであるが、歌舞伎は、この能がベースになっている。弁慶と牛若丸(義経)の有名な出会いと立ち回りがテーマ。弁慶が五条大橋で暴れる少年の強さと暴れっぷりを家来から聞き、やっつけようとやってきて、牛若丸と戦う、という内容。義経の強さに感服した弁慶は相手が源義朝の息子だと知り、そして家来になろうと申し出て主従の約束をする。勇猛な武蔵坊弁慶が、優美な牛若丸に翻弄される立廻りが見どころ。

<概要>
日程・会場:2021年1月3日〜1月17日 新橋演舞場
チケット好評発売中。
公式HP:https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/697/