尾上右近 自主公演 第四回「研の會」“年に一度、自分と向き合う大事な機会”

尾上右近の自主公演「研の會」、この2018年で第4回目となる。これを機会に尾上右近から今回の公演について会見、着物姿で登壇。今回は中村壱太郎丈をメインゲストに迎えて「封印切」と「二人椀久」を上演する。
「早いもので4回目、皆様のお力添えで自分の(恋愛)経験を生かして、生々しく演じていきたい」と初っ端から笑わせてくれる尾上右近。この2演目は、どちらも男性の悲恋モノ。
「封印切」は指導は中村鴈治郎、共演は中村壱太郎、嵐橘三郎、上村吉弥、中村亀鶴「二人椀久」は尾上菊之丞振付で共演は中村壱太郎。
演目のチョイスの理由であるが、「封印切」については「坂田藤十郎おじさまに憧れて、25日間、松竹座の袖で泣きながら拝見していました。千秋楽の日に『観ていてくれてありがとう』と言われました」と思い入れのほどを語る。「二人椀久」については、「いつか本公演でやるというサスセスストーリーのつもりで」と前向きな発言。

もともとは3歳の頃に「鏡獅子」を観て憧れたそう。それからは稽古、稽古。また、今回の演目は関西の芝居なので「途方もない課題がたくさんある」と言い、「歌舞伎で関西弁をしゃべったことがない」としながらも「捨ぜりふ、関西弁がさりげなく出てくるようになるまで習得するのが難しい」と語るが、自ら、困難な道へと進んで精進する姿勢を見せる。
「二人椀久」は男女の恋愛がテーマ、「あまり恋愛経験がない」と語る尾上右近であるが、「自主公演は経験がないものをやる」と言い切る。まさに挑戦・鍛錬の場が、この自主公演なのであろう。「女形を楽しみにしていた方には〜」と笑う尾上右近。今回は悲恋に泣く男、ここで一皮むけるかもしれない。さらに自分の性分を「危険な方、危険な方、安全ではない道に行く」と自己分析。そして「その時、その時の自分に向き合う」「役者1本でやって役者に対する責任感」「年に一度、自分と向き合う大事な機会」と言う。

昨年はスーパー歌舞伎で大役のルフィを演じきったが、ここで大きな舞台で真ん中に立つ経験をした尾上右近。「ひたむきに続けていくことで、回を重ねていつの間にか力をつけていた、が理想」と言う。そして、この自主公演だけでなく、今年は初の現代劇、しかも翻訳劇、「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」に挑戦する。まさに様々な経験を重ねている最中、20代の役者は数多くいるが「ライバルは意識してますか?」の質問に「自分のことでいっぱいいっぱい」と語り、「一緒にやってくれる仲間がいる嬉しさが大きい」と語りつつ「僕は生き残る前提です・・・・・・ちょっと上から目線ですね(笑)」という。この超ポシティヴ、超元気、そして仲間を大切にする尾上右近。「危険で安全でない道」をあえてチョイスし、そこに進んでいく姿勢、今年は大きく飛躍するかもしれない。

<作品解説>

「封印切」は有名な浄瑠璃「冥途(めいど)の飛脚」の中の巻の通称。八右衛門の悪口に逆上した忠兵衛が、屋敷の金300両の封印を切って八右衛門にたたきつける場面である。

「二人椀久」は歌舞伎舞踊曲。長唄。本名題『其面影 (そのおもかげ) 二人椀久』。傾城松山恋しさに狂乱した椀久が,松山の幻影とありし日を思い浮べながら踊り興じる。

「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」 ~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~ G2『やっておかねばならない作品』

【概要】

尾上右近自主公演 第四回「研の會」
8月26日(日)夜の部 17:00開演
8月27日(月)昼の部 12:00開演/夜の部 17:00開演
会場:国立劇場 小劇場
尾上右近公式サイト:https://www.onoeukon.info