劇団四季 新作ストレートプレイ 『恋におちたシェイクスピア』6月22日 開幕! “あなたの言葉は永遠に不滅”

映画もヒットした「恋におちたシェクスピア」、この映画をベースにした舞台である。リー・ホールが舞台脚本を手掛け、2014年7月より翌15年4月まで、英国ウェストエンドにて上演されて高い評判をとった舞台、なお今回の四季での公演は、この舞台脚本を用いたノンレプリカ公演。2006年の『鹿鳴館』以来の新作台詞劇で、創立65周年の節目。
セットはエリザベス王朝時代をイメージさせる木製のもの。幕開きはラッパ、4人の男性コーラス、音楽も時代を感じさせるメロディー、観客は、一瞬、イギリスの劇場に来た気分に。一人の男、「君を例えるなら」と言う。この物語の主人公であるウィルことシェイクスピアだ。そこへマーロウがやってくる。この時代の作家、シェイクスピアに先駆けてエリザベス王朝演劇の基礎を築いた人物だ。2人は友人、時折、マーロウはウィルに助言を与える。興行主であるフィリップ・ヘンズロウのローズ座は資金難で首が回らない状態、冒頭でヘンズロウはフェニマンから厳しく借金を取り立てられる、ここのやり取りは面白可笑しく、観客席から笑いが。史実によれば、ローズ座はロバート・グリーンやクリストファ・マーロウの戯曲の上演もしており、またウィリアム・シェイクスピアの戯曲のための特注劇場としては初めての劇場である。ウィルは金(いわゆるギャラ)を半分ももらってないと嘆く。


木製のセットはマンパワーで動かすが、これが芝居の中にすんなり溶け込み、展開も滑らかだ。この時代、舞台に上がって良いのは男性だけ。女性役は声変わりする前の男性俳優が演じていた。また、ロンドンの劇場では一般の民衆も貴族も同時に一つの劇場で観劇することが多かった。劇作家は工夫を凝らし、あらゆる階層の人に受け入れられるような戯曲を書かなければならなかった。そんなプレッシャーで絶不調のウィル。その観客の中に一人の女性、無類の演劇好きで、好きが高じて男性に変装してオーディションを受ける。これがウィルの演劇人生に大きな影響を及ぼすとは・・・・・・。
もちろん、フィクションであるが、楽しくも想像力をかきたてるような《IF》だ。変装してオーディションを受けに来た女性、ヴァイオラ、トマス・ケントという偽名で男になりすまし、ところがすんなりオーディションに合格、その才能に惚れ込んだウィルは俄然、張り切る。そして“彼”を追ってレセップス卿の館に。そこでヴァイオラに出会い、ソッコーで恋に落ちてしまう。もちろん、トマス=ヴァイオラとは気付かず。

シェイクスピアの戯曲をある程度、押さえていると物語の面白さは倍増。恋に落ちた場所はバルコニーだし、ヴァイオラの乳母は、なんだかロミジュリの乳母っぽい雰囲気。台詞もシェイクスピアの有名戯曲を散りばめていて、そんなところがわかると思わず笑いが。
ストーリーはウィルとヴァイオラの恋模様中心に進んでいくが、脇を彩るキャラクターにも注目、彼らの生き様はちょっと間が抜けていたりもするが、愛すべき“演劇ばか”、エリザベス女王もいかにも、な佇まい、彼女もまた演劇を愛しているが、ちょっとおかしな、それでいてキュートな言動。
ドタバタ的な味付けでラブストーリー、そして喜劇。シェイクスピア戯曲へのリスペクトと熱烈な演劇愛に溢れている。GPではウィルは上川 一哉が演じていたが、恋に一途な好青年的な雰囲気、レセップス卿の館のヴァイオラの寝室にいたところ、さあ大変!すぐそこに迫る危機!女装に甲高い声で切り抜けるが、ここは大笑いポイント。ヴァイオラは山本紗衣、トマスの時は中性的な雰囲気で「これなら騙せる?!」。一転してヴァイオラの時は可愛らしくも芯のある女性、切り替えが鮮やかだ。ラスト近く、ウィルに別れを告げる、「あなたの言葉は永遠に不滅」と。
「ロミオとジュリエット」の戯曲の創作と2人の恋模様がシンクロしながら進んでいく。架空の人物と実在の人物の混在もこの戯曲の面白さで、「いたかも」と錯覚させてくれるほどに馴染んでいる。演劇好きな人はもちろん、「シェイクスピア戯曲って難しいんでしょ」と思っている人にはシェイクスピアの芝居が観たくなり、また映画も再び観たくなるような気にもなる。自由劇場も趣があり、こういった芝居を観るのにうってつけ。きっと観るたびに何か発見出来そうな作品だ。

[コメント]
演出:青木 豪(あおき ごう)
初めて四季の演出を担いましたが、一つの作品にカンパニー全員が集中できる環境で、俳優やスタッフ陣と充実した稽古を積み上げていくことができました。男女の愛だけではなく演劇への喜びが描かれた本作を、ぜひ舞台の生の空間で味わっていただければと思います。そしてお客様に触れ、作品がさらに成長していくことを願っています。

ウィリアム・シェイクスピア(ウィル)役 :上川 一哉(かみかわ かずや)
ノンレプリカ公演として、一から作り上げていったこの作品に携われることができ、大変嬉しく思います。稽古期間中は、ストレートプレイ初挑戦ということもあり不安もありましたが、青木さんをはじめとするクリエイターの皆さんやカンパニーに支えていただき、役を深めていくことができました。作品の感動をリアリティをもってお客様にお届けできるよう、毎公演、誠心誠意務めてまいります。

<ストーリー>
エリザベス王朝の時代。上流階級の貴族たちが演劇を観る芝居熱が花開いていた。当時のロンドンには二つの芝居小屋があり、北部の「カーテン座」劇場は、ナンバーワンの人気役者リチャード・バーベッジが出演し、大盛況。他方、フィリップ・ヘンズロウがテムズ河対岸に建てた「ローズ座」は、客が入らず資金難で閉鎖寸前であった。
ヘンズロウは、作家ウィリアム・シェイクスピアの次の新作を収入のあてにしていた。しかし、肝心のシェイクスピアはスランプの真っ只中で、まだ台本も完成していないのに出演者オーディションが始まってしまう。
そこにトーマス・ケントと名乗る青年がやってくる。実はケントは、資産家レセップス卿の娘、ヴァイオラの男装した姿。女性が舞台に立つことは公然猥褻罪にあたるとされていた時代だった。演劇を心から愛するヴァイオラは、課題のモノローグを完璧に演じて見せ、シェイクスピアはその才能に気付く。ケントを追ってレセップス卿の館まで来たシェイクスピア。ヴァイオラは本来の女性の姿に戻っていた。そうとは知らないシェイクスピアは、一目で恋におち、館のバルコニーの下から愛の言葉を投げかける。
ケントがヴァイオラの仮の姿だとは気付かぬまま、シェイクスピアは新作の稽古を開始。ヴァイオラと出会ってから、筆が進み、稽古にも熱が入った。主役ロミオを演じるのは、ケント。指導のためにロミオ役を演じるケントとキスシーンを演じてみせるシェイクスピアは、ケントの激しく熱いキスに驚かされる。
しかしヴァイオラはまもなく、許嫁であるウェセックス卿と結婚しなくてはならなかった。別れの手紙を受け取り、レセップス卿の館までやってきたシェイクスピアは、ケントがヴァイオラであることを知る。燃え上がる二人。その後も人目を忍んで愛を育み、やがて二人の恋のかたちが「ロミオとジュリエット」のストーリーを創り上げていった。
稽古が終盤シーンまで来たある日、ケントが女性であることが発覚してしまい、演劇嫌いのティルニー宮内長官から劇場閉鎖を命じられてしまう。ヘンズロウは上演を断念するが、ライバルであるカーテン座の協力により、作品はいよいよ上演の日を迎えることに。
同日、ウェセックス卿とヴァイオラの結婚式が執り行われた。ヴァージニアへと出発する直前、ヴァイオラは一目芝居を観たいと、カーテン座へと逃げ込む。そこでは、ジュリエット役を演じる青年が急に声変わりをして声が出なくなるという緊急事態が発生していた。急遽ヴァイオラがジュリエット役を演じることに。

『恋におちたシェイクスピア』劇団四季にて上演決定!

【概要】
『恋におちたシェイクスピア』
6月22日(金)開幕 ~8月26日(日)
自由劇場

※東京初演後、京都(9/7(金)~9/30(日)京都劇場)・東京再演(10/12(金)~11/25(日)自由劇場)・ 福岡(12 月開幕予定 キャナルシティ劇場)を巡演。

公式サイト:https://www.shiki.jp/

文:Hiromi Koh

撮影:阿部章仁