稲垣吾郎主演 舞台「サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-」誇り高く、人として真摯にいきる。

稲垣吾郎主演 舞台「サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-」が、4月24日から開幕する。
シャルル=アンリ・サンソンは、フランス革命期の死刑執行人で、パリの死刑執行人(ムッシュ・ド・パリ)を勤めたサンソン家の4代目当主。ルイ16世やマリー・アントワネット、エベール、デムーラン、ダントン、ラヴォアジエ、ロベスピエール、サン=ジュスト、クートン、シャルロット・コルデーといった著名人の処刑のほとんどに携わった人物。1739年にパリでシャルル=ジャン・バチスト・サンソンの長男として生まれ、1754年に父であるシャルル=ジャン・バチスト・サンソンが病に倒れ半身不随になり、15歳の若さで死刑執行人代理の職に就き、翌年最初の処刑を行う。
サンソンは、どの身分にも偏見を抱かない平等論者だったといわれているが、死刑執行人が社会の最底辺であり最も偏見を受けながらも貴族並みの暮らしを営んでいる自身の立場によるところが大きいと推測される。
サンソンはまた、熱心な死刑廃止論者で、何度も死刑廃止の嘆願書を出しているが実現されなかったどころか、人類史上2番目に多くの死刑を執行する結果に。死刑制度が廃止になることが死刑執行人という職から自分が解放される唯一の方法であるとサンソンは手記に書き記している。

この物語、安達正勝原作の『死刑執行人サンソン』を舞台化、演出は白井晃、サンソン役は稲垣吾郎という布陣。
重い音が鳴り響く、人々が交錯する、不安げな表情で。サンソン(稲垣吾郎)が登場し、手を振り下ろす、ギロチンの音が響き渡る、倒れる人々。誰もが知っている歴史、フランス革命、恐怖政治、処刑される大勢の人々、これから始まる物語の歴史的背景は大体の観客は知っているはずだ。サンソンは唯一の死刑執行人、ゆえに人々から忌み嫌われるが、彼は自分の仕事にプライドがあった。彼の父であるバチスト(榎木孝明)も、だ。時代は大きく揺れ動く。人々の不満、処刑見物は一種のレジャーであった。バチストは足が悪く、サンソンは若くして処刑を任されていたが、父の旧友のラリー・トランダル将軍(松澤一之)の処刑、うまくいかなかった。

父・バチストが処刑台に上がり、やり終えた。サンソンは思慮する。そんな時に蹄鉄工の息子 ジャン・ルイ(牧島 輝)による父親殺し事件が起こるが、実際には”事故”、しかも父は息子の恋人であるエレーヌ(清水葉月)に横恋慕したから。そんなエピソードと並行するように王室の様子が描かれる。ルイ15世が崩御し、ルイ16世が王位に就く。妻はマリー・アントワネット。この二人の顛末、もはや記すまでもないくらいに有名。

ルイ16世はオルゴールも作れるほどの腕前。実はサンソンは王党派であり、ルイ16世をリスペクトしていた、もちろん後の皮肉な運命はこの時点では知る由もない。
物語はサンソンが中心であるが、それ以外の彼を取り巻く人物たちのサイドストーリーも充実、それだけでも一つの物語ができるくらいドラマチックで数奇な運命、ルイ16世、ナポレオン、ロベスピエールetc.群像劇の要素もある。
配役の妙、稲垣吾郎演じるサンソンは死刑執行人としての苦悩、プライド、正義、時代を見据える眼差し、実際のサンソンもきっとこんな人物であったのかも、と思わせてくれるほど、深みがあり、また、時代を先読みする姿、知的な役創り。またサンソンの父を演じる榎木孝明、重厚な役創り、2幕ではロベスピエールも演じる。内科医で憲法制定国民議会議員のギヨタン、田山涼成が温厚さを滲ませて好演。

原作の力にプラス、白井晃はじめ、スタッフ陣の手腕、史実とフィクションをうまく交差させ、ドラマチックな演劇に。デュ・バリー夫人(智順)のエピソードなど、効果的に挿入されている。また、ギロチン誕生の下り、「公平に、平等に」とサンソンが考え、ギヨタンらと考案するが、冒頭の出だしでも、その鋭い刃が落ちる音が響いたが、恐怖のイメージになってしまった。1幕で、車裂きの刑の公開処刑のエピソードが出てくるが、これをきっかけに苦痛を伴わない処刑法を求める流れができたのである。そういった史実をいくつか押さえておくと、この物語は一気にリアルさを帯びてくる。

世界史において、エポックメイキングな出来事であるフランス革命、時代の波に飲み込まれながらも人間として気高く生きた人々、その顛末、翻って現代、根本は変わらない。人としてどう生きるのか、どう生きていくのか、普遍的なテーマ、重く、そして永遠の課題、そうして歴史は紡がれる。彼らの生き様は決して今とは無縁ではないのだから。
なお、横浜追加公演が決定、6月25日から27日まで、KATT神奈川芸術劇場にて。


<コメント>
稲垣吾郎
久しぶりの新作舞台になり、良い緊張感で稽古を続けることができました。
フランス革命期に実在した死刑執行人”サンソン”は、僕がぜひ演じてみたいと思っていた人物でもあります。重い時代の中でも、社会を良くするために職務に忠実に生きた、サンソンという人物を精一杯演じたいと思います。

演出 白井晃
当初、このご時世の中で、これほどエネルギーを必要とする作品を作ることが本当にできるのか、大きな不安を持ちながら創作は始まりました。民主政治の源流となったフランス革命の熱と、その時期に実在したサンソンという死刑執行人の苦悩の物語を語るには、あまりにも状況が不向きのような気がしたからです。ムッシュー・ド・パリと呼ばれた一人の男がたどった人生は、今の私たちからはおよそ想像できないほど過酷なものだったはずです。しかし、その人生に迫ろうとするキャスト、スタッフが懸命にリハーサルを積み重ねていくうちに、人が集まり創造するという演劇の持つエネルギーが私たちをどんどん前へと引っ張ってくれ、シャルルー・アンリ・サンソンの、心の奥底に流れる優しさに溢れることができた気がします。フィクションの中にあるリアルを作り出す為に、献身的に惜しみなく力を発揮してくれたキャスト、スタッフの結束力がもう直ぐ実を結びます、きっと。

<物語>
1766年、フランス。その日、パリの高等法院法廷に一人の男が立っていた。彼の名はシャルル=アンリ・サンソン(稲垣吾郎)。パリで唯一の死刑執行人であり、国の裁きの代行者と して“ムッシュー・ド・パリ”と呼ばれる誇り高い男だ。パリで最も忌むべき死刑執行人と知らずに、騙されて一緒に食事をしたと、さる貴婦人から訴えられた裁判で、シャルルは処刑人という職業の重要性と意義を、自らの誇りを懸けて裁判長や判事、聴衆に説き、弁護人もつかずたった一人で裁判の勝利を手にする。 このときには父・バチスト(榎木孝明)も処刑人の名誉を守ったと勝利を祝う。
だが、ルイ15世の死とルイ16世(中村橋之助)の即位により、フランスは大きく揺れはじめ、シャルルの前には次々と罪人が送り込まれてくる。将軍、貴族、平民。日々鬱憤を募らせる大衆にとって、処刑見物は、 庶民の娯楽でもあった。 己の内に慈悲の精神を持つシャルルは、処刑の残虐性と罪を裁く職務の間で、自身の仕事の在り方に疑問を募らせていく。
そこに、蹄鉄工の息子 ジャン・ルイ(牧島 輝)による父親殺し事件が起こる。実際は彼の恋人エレーヌ(清水葉月)への、父親の横恋慕がもつれた事故なのだが。彼を助けるべく友人たち、チェンバロ職人のトビアス(橋本 淳)、後に革命家となる サン=ジュスト(藤原季節)らが動き、シャルルはそこでさらに、この国の法律と罰則について深く考えることになる。 さらに若きナポレオン(落合モトキ)、医師のギヨタン(田山涼成)ら時代を動かす人々と出会い、心揺さぶられるシャルルがたどり着く境地とは……。

<キャスト>
シャルル=アンリ・サンソン:稲垣吾郎
ルイ16世:中村橋之助

トビアス・シュミット:橋本 淳
ジャン=ルイ・ルシャール:牧島 輝
ナポリオーネ・ブオナパルテ:落合モトキ
ルイ・アントワーヌ・サン=ジュスト:藤原季節
エレーヌ:清水葉月

デュ・バリー夫人:智順
アントワーヌ・ルイ博士:藤田秀世
グロ:有川マコト
ラリー・トランダル将軍:松澤一之

ジョゼフ・ ギヨタン:田山涼成

シャルル=ジャン=バチスト・サンソン:榎木孝明
マクシミリアン・ロベスピエール

伊藤壮太郎 今泉 舞 岡崎さつき 小田龍哉 久保田南美 熊野晋也 斉藤 悠 髙橋 桂 内藤好美 中上サツキ 中村芝晶 奈良坂潤紀 成田けん 野坂 弘 畑中 実 古木将也 まりあ 村岡哲至 村田天翔 ワタナベケイスケ 渡邊りょう

<公演概要>
日程・会場:
[東京]
2021年4月23日(金) ~ 5月9日(日) 東京建物 Brillia HALL
お問合せ:キョードー東京 0570-550-799(平日11:00〜18:00/土日祝10:00〜18:00)
主催:キョードー東京/TBS/イープラス
[大阪]
2021年5月21日(金) ~ 5月24日(月) オリックス劇場
お問合せ 大阪公演事務局 0570-666-163(11~16時 日祝休業)
主催 「サンソン」大阪公演製作委員会
[福岡]
2021年6月11日(金) ~ 6月13日(日) 久留米シティプラザ
お問い合わせ:久留米公演事務局 092-718-4649(11:00〜17:00 日祝休み)
主催:RKB毎日放送
出演:
稲垣吾郎/中村橋之助
橋本 淳 牧島 輝 落合モトキ 藤原季節 清水葉月
智順 藤田秀世 有川マコト 松澤一之
田山涼成/榎木孝明

伊藤壮太郎 今泉 舞 岡崎さつき 小田龍哉 久保田南美 熊野晋也 斉藤 悠 髙橋 桂 内藤好美 中上サツキ 中村芝晶 奈良坂潤紀 成田けん 野坂 弘 畑中 実 古木将也 まりあ 村岡哲至 村田天翔 ワタナベケイスケ 渡邊りょう

演出:白井晃
脚本:中島かずき(劇団☆新感線)
音楽:三宅純
美術:二村周作
照明:高見和義
音響:井上正弘
衣裳:前田文子
ヘアメイク:川端富生
映像:宮永亮、栗山聡之
アクション:渥美 博
演出助手:豊田めぐみ、木村穂香
舞台監督:田中直明、福澤諭志
制作:笠原健一、原佳乃子
プロデューサー:熊谷信也
企画製作:キョードー東京

原作:安達正勝『死刑執行人サンソン』(集英社新書刊)

公式HP:https://sanson-stage.com