渡辺謙 主演, 宮沢氷魚, 栗原英雄, 大鶴佐助, 長谷川初範 etc.共演 PARCO PRODUCE 2021『ピサロ』未来に語り継がれる物語、ピサロの苦悩、生き様

昨年コロナ禍でわずか10回という幻の公演。将軍 渡辺謙とインカ王 宮沢氷魚が再び対決。
2020年3月、PARCO劇場オープニング・シリーズ第一弾公演として開幕する予定だった渡辺謙主演『ピサロ』は、 コロナ禍により、初日を延期、わずか10回の上演であった。
2021年5月、満を持しての幕開けとなる。

『ピサロ(原題:ザ・ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン)』 は、16世紀、167人の寄せ集めの兵を率いて、2400万人のインカ帝国を征服した、成り上がりのスペインの将軍ピサロの物語。ニューヨーク劇作批評家賞など数多くの賞を受賞した英国を代表する劇作家ピーター・シェーファーによる傑作戯曲。ピサロの人物設定は、歴史や宗教に対する作者独自の解釈が色濃く反映。1969年に映画化もされている(日本では劇場未公開)。日本初演は1985年PARCO劇場。山﨑努がピサロ、渡辺謙がインカ帝国の王・アタウアルパを演じた。
2020年、渡辺謙は、自身に「俳優を 一生の仕事とする」覚悟を決めさせる一本となった本戯曲に、 タイトルロールとして帰還。しかも年齢が60歳、ピサロの年齢設定と重なる。
新生PARCO劇場のオープニング・シリーズ第一弾ということで、渡辺謙にとってもPARCO劇場にとっても「Reborn」ともいうべき節目の上演になった。演出は、英国ロイヤル・バレエで長く活躍し、『ウィンド・イ ン・ザ・ウィローズ』で 2014年ローレンス・オリヴィエ賞ベスト・エンタテイメント賞を受賞したウィル・タケット。
ピサロに対峙する太陽の子・インカ王アタウアルパ役は宮沢氷魚。
本年5月、渡辺謙、宮沢氷魚に加え、栗原英雄、大鶴佐助、長谷川初範、外山誠二ら実力ある俳優陣が再び結集。待望の『ピサロ』の幕が上がる。
映像で太陽、真っ赤に燃える、中央にインカの王アタウアルパ。印象的、かつ鮮烈な始まり。一人の老人が登場する。名前はマルティン、15歳の時にピサロの小姓であった。彼はこれから始まる物語の語り部。「戦の連続だった」と言い「100人の兵士で征服した」という。

場面はインカ帝国へ行く前に遡る。兵士を募る、「こんなところで死ぬよりも」とピサロ。彼自身も貧しい家の出身。彼の父は軍人で小貴族、母は召使であったといわれる。教育されず、文字も知らないまま。ドミニコ修道士は愛を説く、イエスキリストは絶対、聖書は神の言葉だ。しかし、志願した兵士の多くは貧しく一攫千金を狙っていた。インカ征服、彼らにとっては”金”のためなのだ。

一転して場面はインカ帝国、太陽の子と謳うインカの王アタウアルパ「白い民が来る」というが、その「白い民」、ピサロ率いるスペイン軍は彼らを「土人」と侮蔑的に表現する。修道士は「インカの人々の魂を入れ替えろ!イエスキリストこそインカの王!」と叫ぶ。アンデスを苦労して越え、大勢のインディオを殺戮し、王アタウアルパを捕える。その後、アタウアルパはどうなったのか、その後の顛末は明らか。そこに至るまでの過程、ここが作家独特の視点と解釈で描かれている。ピサロは、今でこそ母国スペインでは英雄、1992年から2002年のユーロ導入までスペインで発行されていた最後の1000ペセタ紙幣の裏面に肖像が使用されていたくらいである。だが、ここで描かれているピサロは悩める人物で、自分が貧しい家の出身であることは彼の心に大きな暗い影を落としている。粗野で学もない。

対するアタウアルパは高貴な雰囲気をたたえ、毅然としている。ドラマチックな展開、ここはピーター・シェーファーの戯曲はさすが、としか言いようがない。そして渡辺謙演じるピサロ、重厚でいくつもの戦いをくぐり抜け、体は実はボロボロ、劣等感も持ち合わせた多面的な人物を圧倒的な存在感で、そこに佇む。もしかしたら、ピサロはこういう人物だったかもしれない、と観客に思わせてくれる。
その渡辺謙と対峙するアタウアルパ演じる宮沢氷魚は気品のみならず、自ら太陽の子と言っていたアタウアルパ、透明感もあり、インカの王に相応しい役創り。また脇を固める俳優陣、ピサロの副隊長を演じる栗原英雄は、ピサロを影でも支える実直さと賢さを備える副隊長ぶり。そして年老いた、語り部として登場する老マルティン、演じるは外山誠二、稀有な人生を歩み、すべてを達観したかのような眼差し。また、若マルティンの大鶴佐助、幼さを残しつつ、過酷な”現場”で少しずつ成長していく様を好演。
演出もビジュアルが美しく、映像の色の鮮やかさ、シンプルなセットであるが、マンパワー(俳優が担う)で動かし、表情を変えていく。そしてフォーメーション、アクションシーンは言うに及ばず、すべてのシーンが洗練されており、俳優陣がセットを動かす場面ですら絵になり、凄惨な悲劇的な物語をスタイリッシュに見せる。
征服者、侵略される者、宗教観、アイデンティティ、様々なテーマを内包する戯曲、1964年に発表され、日本初演は1985年。すぐれた作品は軽々と時代を超えて人々に圧倒的に印象付ける。これからも繰り返し上演され続けることであろう。

ゲネプロ前に会見が行われた。登壇したのは渡辺謙、宮沢氷魚。
まずは挨拶。
「どういう状況になるか気をもんでいました。感染者を出さないで千秋楽までいきたい…去年は10回しかできなかったので、掴みかけるものが会った時だった」(渡辺謙)
「1年の時を経て作品もキャストもパワーアップしました。去年よりエネルギーのある作品を届けようと励んできまして、初日を迎えることができます。やることをやって素敵な作品を届けられるように頑張っていきます」(宮沢氷魚)
また、昨年の中止になってしまった時のことについて、渡辺謙は「劇場が落ち着いて見ましょうという空気がない中で、10回やりました。その時スタッフ、キャスト含めてできる状態ではないかもしれないと…中止を決めました。時が止まってた感じでしたが、今年、稽古が始まって懐かしいメンバーに会った時に時計が動き出した気がしました。新しいメンバーが4人入りまして、劇場入りしてマスク取って…初めて顔を見た!『こういう顔してたんだ!』、普段はそういう経験をないので。演劇をお客様にお届けしたい、とにかく3週間、しっかり走り抜けたい」とコメント。宮沢氷魚は「去年、謙さんは『また、会いましょう』とみんなに言ってくれて、間違いなくやるんだなと心のどこかで信じられた、やらないわけがないと。中止で悔しい思いはしましたが、その言葉を思い出して前向きになれた。1年かかって今、ここに披露できるのは幸せです。再演は初めてで、同じ役を演じる、少しでも自分の成長をかじられる瞬間があった、お届けできるのは光栄(渡辺謙がここで「かなり成長してます!」といい「プレッシャー」と宮沢氷魚)。」
また宮沢氷魚は「去年は先輩たちについていくのがいっぱいいっぱい」と言い「今回は若手がパワーアップして先輩方に負けない力を!謙さんに負けないように!自由に力強くやっていけたら」とコメント。また渡辺謙は「PARCO劇場は自分を奮い立たせてくれる、そういう劇場」と語る。宮沢氷魚はかつて渡辺謙が演じた役をやるにあたって「当時のお話や写真は残っていますが、あえて参考にはしないでおこうと。僕にしかできないものを、と思っていて、考えてやってました。謙さんはピサロを通してアタウアルパはどう見えているのかをアドバイスしてくれまして、考えるきっかけを与えてくださいました」とコメント。
演出については渡辺謙は「身体的表現が上手いイメージですが、今年に入ってより感じるのは、ご自身の言葉で全部通そうとしている、セリフのやり取りも日本語で『すみません』と言って止めたり。意欲を感じました」とコメントし、宮沢氷魚も「演出が美しい、踊りも、言葉の演出も素晴らしい、耳でも視覚的にも楽しめる作品」と絶賛。
最後にPR。
「皆様に足を運んでいただく、責任感は各々、あります。劇場の感染対策は素晴らしいです。1年の思いを、努力を1人でも多くの人に見てもらいたい」(宮沢氷魚)
「外出するのも憚られる時勢の中で演劇をご覧になっていただく、足を運んでいただくことに胸を痛めております。でも、届けていきたい思いがある、全員が強く思っています。くれぐれも用心して足を運んでいただきたい、毎日きちんと届けられるものをしっかりと!!」(渡辺謙)

<稽古場レポ>

PARCOPRODUCE2021 『ピサロ』 稽古場 写真&レポ 直送! 渡辺謙 宮沢氷魚 出演。

<あらすじ>
西暦1531年。齢60を超えた粗野な成り上がりの将軍ピサロは、彼の人生の最後の遠征となるインカ征服への準備を始めた。 集まった兵士は一攫千金を夢見る平民たち。
そんな傭兵を含む167名を率いて、ピサロはペルー征服へと出発した。 6週間をかけ、森をぬけ、2週間かけてアンデスを超える過酷な行軍の末に、数千人のインディオを虐殺し、自らを太陽の子と謳うインカの王アタウアルパを生け捕りにする。
ピサロは、アタウアルパを釈放する代償として、莫大な黄金を要求する。 そして、莫大な黄金を手にしたピサロとスペイン人たちは・・・・

<概要>
PARCO PRODUCE 2021『ピサロ』 (原題:The Royal Hunt of The Sun)
日程・会場:2021年5月15日~6月6日 PARCO劇場
作:ピーター・シェーファー
翻訳:伊丹十三
演出:ウィル・タケット
出演:
渡辺謙
宮沢氷魚 栗原英雄 大鶴佐助 首藤康之 菊池均也
浅野雅博 窪塚俊介 小澤雄太 金井良信 下総源太朗
竹口龍茶 松井ショウキ 薄平広樹 中西良介 渡部又吁 渡辺翔
広島光 羽鳥翔太 萩原亮介 加藤貴彦 鶴家一仁
王下貴司 前田悟 佐藤マリン 鈴木奈菜 宝川璃緒
外山誠二 長谷川初範

企画・製作:パルコ
お問合せ=パルコステージ 03-3477-5858

公式HP:https://stage.parco.jp/program/pizarro2021