『おあきと春団治~お姉ちゃんにまかしとき~』おあき姉ちゃんにまかせたい!笑いと涙、最後は笑って!!

藤山直美主演『おあきと春団治~お姉ちゃんにまかしとき~』が新橋演舞場で好評上演中だ。大阪での公演は緊急事態宣言のため中止になってしまったが、こちらは無事に幕が開いた。

この物語に登場する桂春団治は初代桂春団治のことで、名前は藤吉。戦前の上方落語界のスーパースター的存在で、当時の先端技術でもあったレコードに落語を吹き込んだ。また、奔放な私生活がのちに伝説化し、脚色が加えられ、小説、演劇、歌謡曲などの題材に。今回の作品も、その中の一つ。また、この破天荒な桂春団治役は、昭和26年に二代目渋谷天外、以降は藤山寛美、五代目中村富十郎、三代目渋谷天外、沢田研二、十八代目中村勘三郎らが演じてきた。先のNHKの連続テレビ小説の『おちょやん』では、劇団「鶴亀新喜劇(松竹新喜劇がモデル)」の芝居として『桂春團治』の舞台が登場。舞台で春団治を演じているのは二代目天海天海(成田凌)、池田屋丁稚が松島寛治(前田旺志郎)、幕切れで力三を演じていたのは須賀廼家天晴(渋谷天笑(2代目))、記憶に新しいところではないだろうか。また、この『おちょやん』で西川忠志は、劇場支配人の熊田役で出演していたが、今回は、この桂春団治を演じ、彼を支える姉・おあきに藤山直美、二人の父親に西川きよし。桂文枝に田村亮、おあきたちを見守る巡査・サーベル役に金子昇。

出だし、音楽、ツケの音が響き、パッと!舞台は大阪の法善寺、ここの横丁は『法善寺横丁』と呼ばれ、当寺院の北側にある細い通り。もとは境内だったことから法善寺裏、法善寺露地などと呼ばれていた。昭和初期に小説『夫婦善哉』や『法善寺横丁』に登場して有名。ここで!子供藤吉が登場するのだが、可愛い!!首根っこ掴まれて!やんちゃ!ここでサーベルとおあきが出会う。サーベル、帽子をポトッと落とし、固まる(笑)。”Fallin’love”、藤吉は売れっ子落語家の桂文枝(田村亮)に出会い、一目で心奪われ、芸人を目指すことに。
桂春団治の生涯が軸になっているが、サイドストーリーも見逃せない。おあきに恋するサーベル、おあきからは名前では呼ばれず「サーベルさん」。片想いは、片想いのまま、2幕では…悲しい別れ。おあきを見守る温かく切ないキャラクター、出番は少なめだが、金子昇が印象的に演じていた。また、桂春団治の娘・春子、2幕で成長した春子が登場するが、父を知らずに育った境遇にもかかわらず、素直。そして、時折、登場する西川きよし師匠!元気そのもの!幽霊になって登場する場面は、客席から大きな笑いが!田村亮の桂文枝、こちらも幽霊になるので!!また、桂春団治という大役、西川忠志、女性から見るとなんとも可愛げがあり、時折見せるひょうきんな表情、色気というより、チャーミング、少々破天荒なところのあるキャラクター創りで舞台の中心を担う。そんな彼を支えるおあき演じる藤山直美は、登場した瞬間から貫禄!こんなお姉さんがいたら、困ったことはおあき姉さんに丸投げしたい(笑)。

2幕は、ちょっとしんみりするシーンが多く、大きくなって父を知らずに育った娘・春子、満州に行くことになったサーベルetc.おあきまでも、そして史実もそうだが、桂春団治は病を得る。実際には胃癌、入退院を繰り返していたという。だが…この作品はあくまでも喜劇、ラストシーンは!!明るい!!客席からは大きな拍手が起こる。緩急のある構成、文字通り、笑いと涙、最後は笑って!!新橋演舞場らしい演出、花道、ここを通れば、正直、「おお〜」と目で追ってしまうし、すっぽんの位置に役者が立ったら、この後どうするか、すぐにわかってしまうも、ワクワクする。松竹らしい、王道の喜劇。時代は大正から昭和の初期ぐらいまで。みんな必死に生きているが、悲壮感ゼロの人間賛歌。客席はシルバー世代が多いが、若い世代でも楽しめる。公演は7月26日まで。

<会見レポ記事・ゲネプロ舞台写真満載!>

https://theatertainment.jp/japanese-play/82891/

<物語>
明治中期。おあきと藤吉の姉弟は大阪・高津で父と親子3人で暮らしていた。
父親の友七(西川きよし)は腕は良いが売れない職人、いつも2人にきつく当たっていた。
藤吉も奉公先をクビになったりと手のかかる弟で連日問題を起こし、おあきは振り回される日々を送っていた。
藤吉はある日出会った売れっ子落語家の桂文枝(田村亮)に憧れを抱き、芸人を目指す。
おあき(藤山直美)も藤吉を日本一の落語家にするために生きていく決意をし、二人は手を取り合って支えあっていくことに。
「どんなことがあっても、この手を離したらあかん…」そんな二人を亡くなった友七もあの世から見守っていく。
桂春団治(西川忠志)を名乗り、落語家として歩み始めてからも、藤吉は生来の無茶な性格から時々、揉め事を起こす。
そんな時にいつも手を差し伸べてくれたのは南署の巡査・通称サーベル(金子昇)だった。
おあきに思いを寄せるサーベルはその後もずっと姉弟を支える存在に。
おあきは春団治の無茶な振る舞いすら「軍師」として売り込みの道具にし、その手腕で春団治は売れっ子落語家の道を歩み始める。
おあきはなぜ、ここまで春団治のために生きるのか。姉弟の真の絆とは。

<公演概要>
大阪松竹座 薫風喜劇公演 『おあきと春団治 〜お姉ちゃんにまかしとき〜』
[大阪公演]
日程・会場:2021年5月21日〜6月6日 大阪松竹座
新型コロナウイルスの蔓延、緊急事態宣言により中止。
[東京公演]
日程・会場:2021年7月3日〜7月26日 新橋演舞場
[出演]
藤山直美

西川忠志
いま寛大
金子昇

大津嶺子
田村亮

西川きよし(特別出演)

松竹公式HP:https://www.shochiku.co.jp/play/

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