新宿シアタートップス オープニングシリーズ 朗読劇『トップスまで、あと5秒!』トップス健在!

2009年3月末に閉館した劇場、演劇のメッカ「シアタートップス」が、本多グループによって13年振りに「新宿シアタートップス」として復活!
伝説の舞台が朗読劇となって上演、朗読劇『トップスまで、あと5秒!』

この作品は、2008年7月真夏の炎天下、シアタートップスと紀伊國屋ホールを同時に上演し、役者が外を走って2劇場を成立させるという、前代未聞の伝説公演『ダブルブッキング!』を朗読劇にしたもの。当時、3年連続で上演する予定が翌年にシアタートップスが閉館となり、泣く泣く断念した公演。
しかし、2013年1月真冬の雪の中、本多グループ全面協力のもと、本多劇場/「劇」小劇場/小劇場「楽園」の3劇場同時上演!で『ダブルブッキング!』は奇跡的に甦ったものの、その後は3劇場を同時に押さえることができず…。
しかし、シアタートップス復活のオープニングアクトとして、『トップスまで、あと5秒!』~伝説の舞台版『ダブルブッキング!』より~を上演することに。イスが3脚、男優2名、女優1名による朗読劇です。
総勢23名のキャストが走りまわったあの『ダブルブッキング!』を、座りっぱなしの朗読劇という形で、3人のキャストが16役を演じる。
感染対策ということもあり、セットを全くない。リニューアルされたそのままの素舞台を見ることができる。9月11日の17時からの回を観劇。出演は、久保田秀敏、日比美思、水谷あつし。

物語の舞台はシアタートップスと紀伊国屋ホール。リアルなのかフィクションなのか、その曖昧さがこの戯曲の真骨頂。もちろん、フィクションなのだが、場所はリアル。登場する劇団は架空であるが、なんだか「実はあるんです、この劇団」みたいな可笑しさとリアリティ。天空旅団はいわゆるアングラ、アンダーグラウンドの略、1960年代〜1970年代に全盛期を迎えた舞台表現の潮流。天井桟敷や状況劇場が代表的な劇団であった。実験的で時には荒々しく、というイメージ。朗読劇だが、このアングラを表現するとき、座ったまま絶叫(笑)。アングラを観たことがない観客はかなりびっくり、そして客席から笑いも。細かい笑いを挟み込みながら物語は進行。3人が複数役を演じるのだが、セリフが面白可笑しく、ときには”ある、ある”な内容。これを2008年にリアルにやったというのだから、観ながらも”リアルで観たい”と思ってしまう。シアタートップス、紀伊国屋ホール、ともに4階。階段で移動、脳内でその情景を想像するとまたまた笑える。だが、物語の登場人物、必死になればなるほど、面白い。そして最後のセリフ「トップスまで、あと5秒!」確かにトップスが入っているビルのエントランスから紀伊国屋書店のビルのエントランスまでは走れば5秒(劇場舞台には到底辿り着けないが)!このような状況でなければ、リアルに演れたかもしれない舞台、そんなことを想像しながら観劇。
終了後はアフタートーク。水谷あつしは、この2008年の舞台にリアルに出演していたそうで!劇団天空旅団の座長代理チャーリー若松を演じていたが、この朗読劇でも同役で!炎天下の中、外を全力で走って移動、通行人は「?!」、エレベーターは一般のお客様が使用するので階段、当然遅れたり、息が切れたり。そんなこんなエピソード、今だから話せる裏話を披露。そんな話を聞き、いつかまた、この作品を”リアル”でやれる日が来ることを願いつつ…であった。久しぶりのシアタートップス、客席から舞台がよく見渡せ、臨場感も、そのまま。階段も少々急であるところも変わりなく。これを手始めとしてオープニングシリーズが続くが、まだ足を踏み入れたことがない方も、かつてよく行った、という方も、ぜひ!

<劇場内>

<物語>
シアタートップスでは劇団デニスホッパーズ、紀伊國屋ホールでは劇団天空旅団が同じ日、同じ開演時間で初日を迎え、2時間後に両劇場の幕が上がろうとしていた。

そんな折、劇団デニスホッパーズの公演が急きょ中止となった。舞台はすべてバラされ、劇団員やスタッフ達は帰ってしまった。その理由は、主宰・柏木幸太郎が前代未聞のシアタートップスと紀伊國屋ホールの両方の公演に出演するというダブルブッキングを企てていたことが発覚したからだった。

柏木は紀伊國屋ホールでの天空旅団の最終稽古を終え、シアタートップスに戻ると、そこには誰もいなかった。密かに進めていたダブルブッキングの計画がバレた!しかし柏木はめげない。このダブルブッキング、絶対にやり遂げてみせる!とまた紀伊國屋ホールに戻った。

柏木の彼女であり、劇団の主演女優でもあり、制作でもある豊原仁美は柏木のダブルブッキングが絶対に許せなかった。公演の後処理もしなければならず、シアタートップスに戻るとそこでは紀伊國屋ホールにいるはずの天空旅団の役者達が乱入し、柏木につかみかかり、大喧嘩となっていた。

いわゆるアングラと呼ばれる天空旅団は、どんなセリフでも絶叫するという今の演劇界においては完全に時代遅れであり、観客動員もままならない。しかし彼らには彼らなりの信念があり、演劇人の生き様として柏木のダブルブッキングが許せなかった。

今、トップを走り続けている劇団だと自負していた柏木のダブルブッキングの企みはついえた。しかし、時代遅れであるが故の天空旅団のおかげで豊原や劇団の仲間たちとの絆を改めて感じることができた。柏木の胸を刺したのは、それはシアタートップスの歴史であり紀伊國屋ホールの歴史であった。天空旅団の座長・チャーリー若松は柏木に言った。「役者が劇場を選ぶんじゃない。劇場が役者を選ぶんだ」

<シアタートップスHP>
http://www.honda-geki.com/tops/

<公演概要>
日程・会場:公演中〜9月12日 新宿シアタートップス
作・演出:堤泰之

公式HP:http://no-4.biz/5seconds-to-tops/
公式ツイッター:https://twitter.com/topsdb2021