《インタビュー》 『ダンガンロンパ3 THE STAGE 2018 〜The End of 希望ヶ峰学園〜』脚本・演出 西森英行 

シリーズ累計出荷数が全世界で250万本というスパイク・チュンソフトの大ヒットハイスピード推理アクションゲーム「ダンガンロンパ」シリーズからTVアニメ化した「ダンガンロンパ3」の初舞台化作品。脚本・演出の西森英行に作品の印象や今回の舞台の演出プラン等について語ってもらった。

「ただのミステリー、謎解きじゃなくって掛け算、キャラクタードラマ、ここが重要だと思うんですよね」

――過去の舞台版は観劇していらっしゃるそうですね。その時の印象を。

西森:はい。原作があるものでアクションもの、ファンタジーものっていうのはよくありますが、これは「論争ジャンル」っていうんでしょうか、ミステリーの要素、謎解きの要素をエンターテイメントにした舞台作品ってなかなかない。その新しさに、しかも「エンターテイメントとして成立するんだ」っていうこと、の衝撃が最初は強かったですね。

――舞台上ではアクションの要素もあり、誰がどうなんだろうっていう、見ている側が考える要素、あとは登場人物の人間関係ですよね。そこのところがこの作品のポイントにはなっていますね。

西森:そうですね。言ってみれば、アガサ・クリスティですよね。「そして誰もいなくなった」をある意味、古典の原型とすれば、それをここまで21世紀的にかつ若い世代にも、すごくわかりやすく、キャラクターに感情移入しやすい、誰かがいるっていうこの構造が画期的だと思うんですよね。それこそ、ゲーム原作でファンの皆さんに浸透していったということはよくわかりますし、アニメーションにもなっている。しかも、ただのミステリー、謎解きじゃなくって掛け算、キャラクタードラマ、ここが重要だと思うんですよね。

――みんなドラマ背負っていますよね。見た目はちょっと個性的でも、しかし性格的には、身近にいそうなキャラクターが揃っていますね。

西森:そうなんですよ。それこそ、キャラクターそれぞれに個性的で、どこか「わかる、わかる」っていう要素が、カリカチュアされている、そのカリカチュアの仕方がうまかったんだと思う。それが入り込みやすいっていう入り口は明確にあると思うし、それが大きかったのかなっていう気はしますね。

 

「苗木が最後に決め手を作っていくっていうのが重要なこと」

――この世界観っていうんでしょうか、舞台版は初演からずっと観ているんですが、それとアニメも見ているんですが、結局のところ、極限状態になった時の人たちの、生きるか死ぬかの話、状況はハードですよね。そういった世界観と、あと、苗木誠の存在ですよね。

西森:僕は舞台版「ダンガンロンパ」の1も2も、非常に緻密に構築されていると思っていて、3でまた違った形で・・・・・・僕自身は極限状態のドラマって大好きで、言ってみれば映画では「ソウ(SAW)」とか「キューブ(CUBE)」とか「バトルロワイアル」とか、言ってみれば、極限状態に置かれた人がどういう行動をとるのか、そこで人の本質が出てくる。そこが、3になると、より誰か個別の問題が、言ってみれば協奏曲のように続いていく構成にあって、これ、僕、大好きだなってやっているところがありまして。僕は無印と言われている1、・・・・・苗木誠がそれこそ、ある程度の意思力を持っている、それが日向とはちょっと違うぞっていうところですが、今回、舞台版にするときに、1で見た時の苗木の姿っていうのをもうすこし、反映できたらいいなっていうところがあるんです。1のときに苗木がやっぱり、コロシアイゲームを抜けるって言うんでしょうか、生き残る、いわば牽引者だったと思います。

――最終的には。

西森:あれが、その牽引者である苗木誠っていうキャラクターをもうすこし、次の物語の中でも、反映させていきたいなと思って、すこし、意思力をある形に、それは主演の西銘駿と相談しながら作っていきたいなと。それは、言ってみれば3がある意味において総まとめみたいなところがあるので、霧切響子と朝日奈葵とくぐり抜けてきたことが、そこに映し出されたらいいなと・・・・・この3の極限状態の中で、やっぱり、苗木が最後に決め手を作っていくっていうのが重要なこと。それは彼の葛藤だったり、苦しみだったりっていうものが物語の縦軸になるようにするのはすごく意識したところはあります。

 

「江ノ島の存在感が強ければ強いほど、物語の拘束力が強くなるんですよね!」

――苗木の最後まで諦めない意思、台本ではそういったところが強調されていますね。そして霧切響子が苗木を信じている、あとはやはり、江ノ島!

西森:実は映像撮影は先に作っちゃったんですけど、神田沙也加さん本人がやっぱり持っている・・・・・江ノ島盾子の強烈な存在感みたいなものを裏打ちしている部分があるので、そこを神田さんも結構こだわって、だいぶ作り込んできてくれましたし、それが融合できるのはすごく素敵だなと思いましたね。やはり、この物語、1からずっときている中で、やはり、江ノ島盾子が亡霊になっても・・・・・・彼女の巨大な影が覆っている、このムードが実は重要で、やはりそこをシリーズの中でも意識していたいなっていう風に思っているところはあります。

――生身の彼女が出てこなくても、彼女の影がおおおお〜って常に覆われている感じですよね。

西森:そうなんですよ。それがすごく重要なこと。例えば、「スターウォーズ」のダースベイダーの影みたいな・・・・・・そういう江ノ島の存在感が強ければ強いほど、物語の拘束力が強くなるんですよね!江ノ島盾子の物語が、アニメの「ダンガンロンパ3」、絶望編なんかはかなり色濃く出ている、その彼女の物語がどこまで入れ込めるかっていう挑戦を・・・・・・この物語が面白いと思うのは、今、まさに現代を生きている人の絶望と希望の境目の葛藤、物語のコロシアイゲームの中での個人の葛藤がありますし、そこが全く絵空事ではない物語作りが本当によくできている。それこそ、例えばギリシャ悲劇だったり、オイディプス王だったり、シェイクスピアだったり・・・・・・実は古典劇から脈々と続いている「絶望と希望の葛藤」、人を信じるのか信じないのか、この世界を信じるか信じないのか、そういったことが実は根底にある、そこが、この作品の究極の魅力なんじゃないかって僕は思っていまして、それが江ノ島盾子にかかってくる・・・・・・神田沙也加さんが江ノ島を演じていることが重要なんだろうなと改めて思っています。

――結局のところ、希望と絶望は表裏一体、常に希望があるから絶望がある、希望の中で中心的なのが苗木、絶望は江ノ島。その対比の中で周りのキャラクターがどう関わっていくのかってことが一つの芯になりますね。

西森:そうですね。本当に究極の、希望と絶望の論争の総まとめ、っていうのがこの作品かなと思っていまして、2でも最後の終幕に向けてのその物語が展開していくのですが、1でスタートを切った絶望希望論争は2で拡大され、総まとめとしてアニメの3っていう構造になっているのかな?だから、僕は結構、作品にすごく入り込んで作るタイプなので、舞台版「ダンガンロンパ3」では希望と絶望の論争が絵空事にならないように・・・・・・演じる側が、例えば、今、生きている上で、どういうことなのかっていうことに置き換えられてちゃんとそれが言葉に出来るっていう芝居の作り方にしたいなって思っているところです。やはり言葉だけが先走ってしまうと意味がない。その言葉の意味も含めてちゃんとそこに物語として、そのメタファーになっている部分っていうのを浮かび上がるようにはしたいなと思っていますね。

「学級裁判がないことで、むしろ、普遍的な、今の現代に生きている僕らにも通じる物語になる橋渡しになるんじゃないかって僕は解釈するようになった」

――今度は見た目の話ですが、今まで学級裁判にオシオキという今までの演出家さんが一番頭を悩ませていたところであり、見せ場であり・・・・・今回それがないっていうことと、それから初演から観ていますと、脈々と存在しているモノクマダンサーズ、あとは天井のモニターですね。

西森:モノクマダンサーズってモノクマの存在・・・・・・殺伐とする中で、殺意だったり、絶望であったりっていうのをどっかで客観視して茶化している存在としてすごく重要。それによって観る人の見方もバランスが取れるっていうのが大切で、やはりモノクマダンサーズはKEEPしようと。その上でそれ以外の表現も入れていこうと。物語の学級裁判・・・・・・すべてが仕組まれたゲームの中で行われていることじゃなくなったことっていうのがすごく、この3の重要なキーポイント。学級裁判ないのにどう成立させるんだっていうようなことをむしろ逆手に取る・・・・・・3になって学級裁判がなくなるのはしかるべきなのかな?いって見れば、仕組まれたゲームだったり、そのプログラムだったりの中で、それも実は何者かによって仕組まれたこと・・・・・・もちろん、仕掛けられていることがあったとしても、学級裁判というわかりやすい括りではなく、ある意味、生きている世界のメタファーにもなるのかっていうところがある。そういう意味では学級裁判、最初はやっぱりみんな頭を悩ませるところではありますが、すごくわかりやすいエンターテイメント、発明なんですよ、学級裁判って。それが外された時にどう演出するかっていうところ、群像劇として、今度はどう見せていくのかっていうところは、見せ方の勝負だと思っています。学級裁判がないことで、むしろ、普遍的な、今の現代に生きている僕らにも通じる物語になる橋渡しになるんじゃないかって僕は解釈するようになったので、学級裁判がないのを逆手にとって、だからこそ伝わるものを作る気でいるところなんです。

――学級裁判のないところが現代とシンクロしていくところでしょうか。あと学級裁判の苗木誠のキメ台詞「それは違うよ!」あれは水戸黄門の「このご印籠が目に入らぬか」みたいな、観客に一種の爽快感を与えていたと思うんです。

西森:そうですね。アニメ「ダンガンロンパ3」では、学級裁判はありませんが、ただ、舞台版では総まとめするべきだと思っていて、「それは違うよ」と言って欲しいところもあるし、それはちゃんと入れるべきだと思って、それを想定して、今、まさにやっているところ。3って結局は、息の長い学級裁判なんだと思うんですね。いろんな論争が続いていく群像劇になっている。各パートの物語、学級裁判でやっていた「論」であり、それに対して論破していくとか、それを否定するとかっていうところが結局のところの総まとめになる、いってみれば、長尺の学級裁判。そのまとめは苗木にやってもらうべきだと。

――そこは収束のところですね。・・・・・・あと、またモニターはでますね。

西森:モニターはすごく多い。場が限られた中で、1よりも2よりも・・・・・・シーンで言ったら倍以上あると思うんですよ、単純計算でいくと。その中でモニターに何が映っているのか、映像とやりとりするとか、そういったところは成立させなきゃいけなくなったりするので・・・・・・僕はネチネチと細かいタイプなので(笑)、そういうところもちゃんと見てもらいながら、観客はまさに未来機関の基地の中にいるんじゃないかなっていうようなシュチュエーション、見せ方にできるといいなって。

――最後に締めのPRを。

西森:今回は、舞台版「ダンガンロンパ3」という作品をやらせていただく上でやはり、すべての物語を総覧させていただきましてそれは僕にとって強烈な財産です。僕としては「ダンガンロンパ」のすごく素敵なところは、極限状態のドラマ、要するに人間ドラマっていうことだと。僕はその歴史を踏まえた苗木を出したいし、霧切も出したいし、朝日奈も出したい。とにかく他の各々のキャラクターも、その人間ドラマがちゃんと立つ、ものすごい量のアクションと、歌もあり、踊りもあり、っていうエンターテイメントの中で、きっちりと人間ドラマが浮かび上がるのを目指していまして、見た人に「なんかエンターテイメントを見たんだけど、ぐっと、来ちゃった」みたいな、ところに持っていける底力をこの作品は持っていると思うんで・・・・・・今、俳優さんもすごく熱心に芝居を作っていますし、ミステリーとしてのエンターテイメントとしても成立するっていう下地がそもそも、アニメーションの段階ですでにある。そこの人間ドラマの部分をよりくっきり、見ている人に届けられるように・・・・・・究極のエンターテイメントです。戦っているだけでもない、踊っているだけでもない、歌っているだけでもない、それらすべてが人間ドラマを浮かび上がらせるための要素になっているっていうような「ダンガンロンパ」シリーズの総まとめを見ていただくっていう気で作っています、その点を見ていただけたらなと思います。

――ありがとうございます。公演を楽しみにしています。

<出演>

超高校級の希望 苗木誠:西銘 駿
元・超高校級の探偵 霧切響子:岡本夏美
元・超高校級のスイマー 朝日奈葵:飯田里穂 (Wキャスト)
元・超高校級のスイマー 朝日奈葵:工藤 紬 (Wキャスト)
元・超高校級の生徒会長 宗方京介:仲田博喜
元・超高校級の家政婦 雪染ちさ:高橋りな (Wキャスト)
元・超高校級の家政婦 雪染ちさ:七海 (Wキャスト)
元・超高校級のボクサー 逆蔵十三:鮎川太陽
元・超高校級のスカウトマン 黄桜公一:永山たかし (Wキャスト)
元・超高校級のスカウトマン 黄桜公一:玉木健仁 (Wキャスト)
元・超高校級のアニメーター 御手洗亮太:木津つばさ
元・超高校級のセラピスト 月光ヶ原美彩:三秋里歩
元・超高校級のお菓子職人 安藤流流歌:山下まみ (Wキャスト)
元・超高校級のお菓子職人 安藤流流歌:石田安奈 (Wキャスト)
元・超高校級の鍛冶屋 十六夜惣之助:神永圭佑
元・超高校級の薬剤師 忌村静子:永島聖羅 (Wキャスト)
元・超高校級の薬剤師 忌村静子:船岡 咲 (Wキャスト)
元・超高校級のレスラー グレート・ゴズ:大久保圭介
元・超高校級の農家 万代大作:一徹(トリテン)
元・希望ヶ峰学園 学園長 天願和夫:竹若元博(バッファロー吾郎)
元・超小学生級の学活の時間 塔和モナカ:市川美織
元・超高校級の占い師 葉隠康比呂:松風雅也 (映像出演)
元・超高校級の御曹司 十神白夜:中村優一 (映像出演)
超高校級のギャル 江ノ島盾子:神田沙也加 (映像出演)
月光ヶ原美彩 (モノミ):貴家堂子 (声の出演)
モノクマ:TARAKO(声の出演)
【概要】

<東京公演>

日程:2018年7月20日〜7月23日

会場:サンシャイン劇場

<大阪公演>

日程:2018年7月27日〜7月29日

会場:森ノ宮ピロティホール
<東京凱旋公演>

日程:2018年8月3日〜8月13日

会場:ヒューリックホール東京

エグゼクティブプロデューサー:吉田正大(beachwalkers.) 染谷誓一(ぴあ) /

総合プロデューサー:堀江邦幸(CORNFLAKES) 相墨光明(ぴあ)

脚本・演出:西森英行(Innocent Sphere)

振付:松田 鼓童(nts)

音楽:高田雅史(サウンドプレステージ)

監修:スパイクチュンソフト

制作:CORNFLAKES/ 後援:beachwalkers. /主催:希望ヶ峰学園演劇部

公式サイト:http://www.cornflakes.jp/dangan/2018

©Spike Chunsoft Co.,Ltd./希望ヶ峰学園第3映像部 All Rights Reserved.
©Spike Chunsoft Co.,Ltd./希望ヶ峰学園演劇部 All Rights Reserved.

文:Hiromi Koh