NISSAY OPERA 2022 『セビリアの理髪師』開幕 不朽の痛快ラブ・コメの決定版

軽やかで痛快!とにかく楽しい名作喜劇、躍動感あふれる演出で好評を博した公演、堂々再演!
スペインのセビリアを舞台に、アルマヴィーヴァ伯爵と町娘のロジーナが、町の何でも屋フィガロの機転で結ばれるまでを描いた痛快な恋物語を、躍動感あふれる音楽と演出で。

『セビリアの理髪師』(Il Barbiere di Siviglia/The Barber of Seville)は、19世紀イタリアの作曲家ロッシーニの代表作の一つ。シンプルに言えばドタバタ喜劇で、ストーリーもドタバタしており、歌も時々早口言葉状態。観劇のポイントは、歌手の力量だけでなく、コメディであるが故の細かい、コント的な演出。基本、大笑いして観るタイプの喜劇なので、演出家の喜劇手腕を見るのも一興だ。

主な登場人物は理髪師のフィガロ、ほかのことも色々やる なんでも屋。医師のバルトロ、フィガロにとってはお得意様。アルマヴィーヴァ伯爵、フィガロのかつてのご主人。物語のヒロイン・ロジーナ、後見人であるバルトロに監視されている。そして、ロジーナの家庭教師(音楽教師)ドン・バジリオ。バルトロ家に仕える家政婦ベルタ。伯爵の従者であるフィオレッロ。
観劇したのは、アルマヴィーヴァ伯爵は小堀勇介、ロジーナに山下裕賀、フィガロに黒田祐貴、バルトロに久保田真澄、ドン・バジリオ 斉木健詞、ベルタ 守谷由香、フィオレッロ 川野貴之。
舞台に1人の男が現れ、中央の回り舞台にしつらえてある灯りに火を灯す。伯爵の召使フィオレッロが数人の楽師を連れて登場し、その後、アルマヴィーヴァ伯爵が登場。「静かに、静かに」(フィオレッロ、伯爵、合唱)。彼はプラドで見かけたロジーナに一目惚れ、なんと、はるばる400キロ追いかけてセビリアにやってきたのだった。”恋の矢に射抜かれた”と歌う。

バルコニーの前で愛の歌を歌ってはみるものの、リアクションがない。夜明けとともにフィガロが登場、派手な衣装、有名なカヴァティーナ「ラ、ラン、ラ、レーラ…町の何でも屋に」。歌詞が!ほぼ自画自賛、ものすごい早口!ここは楽しい場面、建物の後ろからメロディーに合わせてカミソリや櫛、ハサミがユーモラスに登場!ここで登場する人々はマスク着用で、所々コロナ対策を演出に取り入れている。そこへ伯爵、フィガロとは既知、彼女のことを諦められきれない伯爵はフィガロに相談。フィガロはその医者の家に出入りしていたので伯爵にその医者は彼女の後見人であることを告げる。

伯爵は彼女の愛を確かめるために”無一文のリンドーロ”と偽り、改めてバルコニーで歌うと、ロジーナが伯爵に向かって手紙を落とす。内容は後見人のバルトロがロジーナを監視していて自由に部屋から出られないと書いてあり…。後見人のバルトロは、ロジーナを追いかけている男がいることを察知し、先に自分がロジーナと結婚しようと準備を始める。焦る伯爵、フィガロのアドバイスで、軍人に変装し、家に入り込むことに。ところがバルトロに追い返されそうになり、バタバタの追いかけっこ。ようやくロジーナと会えた伯爵は自分の身分を隠して「学生のリンドローロ」と名乗る。しかし、しつこいバルトロ、ついにキレた伯爵は刀を振り回し、騒ぎを聞きつけて、軍隊がやってきた!軍隊に対してこっそりと身分証を見せる伯爵、軍隊は急に態度を変えて(笑)、その豹変ぶりに驚く周囲、固まる。

小道具の彫像、歌詞とシンクロ、「まるでもの凄い鍛冶屋の中に」、大混乱、賑やかで楽しくも面白いシーン。ここまでが1幕。
2幕はまだまだ諦めきれない伯爵が変装して登場「ロジーナの家庭教師ドン・バジリオの具合が悪いので今日は弟子の自分が代わりに来ましたー!」、フィガロも理髪師の仕事でやってくる。ところがここは”お約束”、ドン・バジリオが現れて(笑)、というのが大体の流れ。

すったもんだの連続のような喜劇なので、演出もコントシーンが多い。初っ端から、静かにしなきゃいけないところで誰かがコケたり。女性がマスク取ったら髭づらだったり。フィガロは伯爵から金貨を受け取った途端に張り切って、色々と企んだりする。また伯爵はフィガロの入れ知恵で恋のためならなんでもするのだが、”その変装、絶対にバレる”のにという格好でもなぜかバレなかったり、隠れたつもりで”いやいや見つかるでしょ”と思うもなぜか大丈夫だったり、ツッコミどころ満載だが、そこが笑えるポイント。だが、オペラなので、じっくり愛の歌を歌うシーンもあり、さらに歌手の技巧を堪能したりと、そこはしっかり見応えがある。

キャラクターの性格、設定もはっきりしており、わかりやすく、しかも”キャッチー”。恋にまっしぐらなアルマヴィーヴァ伯爵、元気で明るいフィガロ、伯爵に恋の相談をされ、しっかり礼金をもらって張り切る(笑)、伯爵が恋するロジーナ、第1幕の第2場で歌う「今の歌声は」で彼女の性格がわかるが、”リンドーロは私のもの”と言い、”蛇みたいにいろんな仕掛けを使う”と言う、なかなかに勝ち気、かなり現代風な女性。バルトロは「遺産目当て」でロジーナと結婚をしたがっている、年齢はかなりいってる様子で、ちょっと抜けてるところもあり、憎めないタイプ。彼の家に出入りしているドン・バジリオ、彼がバルトロに向かって歌う「そよ風のように」という歌で、わかるが、嫌らしく、陰険で伯爵の機嫌を取る。この4人を中心にストーリーは展開するので、観劇前に抑えておきたいポイント。また、脇役であるが、女中のベルタ、ストーリーには絡んでこないし、オペラの原作であるカロン・ド・ボーマルシェの戯曲に登場しない人物。2幕でベルタが歌うアリア、内容はかなり辛辣で当時の庶民の気持ちを代弁しているかのようで、親しみやすいメロディ、ここは注意して聴いて欲しいところ。


見どころ、聴きどころ満載、ラブ・コメ、歌い手の技巧を楽しみ、名曲を堪能、人気作「セビリアの理髪師」、初演は1816年、それからずっと上演され続けているのも納得できるオペラ、公演は6月11日、12日。

概要
NISSAY OPERA 2022
『セビリアの理髪師』 全2幕
(原語[イタリア語]上演・日本語字幕付)
台本:チェーザレ・ステルビーニ
作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ
日程:
2022年 6月11日(土)・12日(日)
各14:00開演 (13:30開場)
指揮:沼尻 竜典
演出:粟國 淳(日生劇場芸術参与)
管弦楽:東京交響楽団
主催:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]
協賛:日本生命保険相互会社

《今後のNISSAY OPERA 2022ラインアップ》
藤原歌劇団・NISSAY OPERA 2022公演『コジ・ファン・トゥッテ』2022年7月1日(金)・2日(土)・3日(日)
NISSAY OPERA 2022『ランメルモールのルチア』2022年11月12日(土)・13日(日)
東京二期会オペラ劇場・NISSAY OPERA 2022 提携 オペレッタ『天国と地獄』2022年11月23日(水・祝)・24日(木)・26日(土)・27日(日)
舞台写真:日生劇場提供(撮影:三枝近志)