中村米吉主演『オンディーヌ』ハンス役Wキャストの小澤亮太と宇野結也が感じる古典作品とは?いよいよ開幕

2022年12月23日(金)~12月25日(日)ウインクあいち大ホールにて、2023年1月6日(金)~1月11日(水)東京芸術劇場シアターウエストにて、舞台『オンディーヌ』が上演される。
本作は、フランスを代表する劇作家ジャン・ジロドゥの最高傑作として知られ、永遠の愛を信じて人間界に入った水の精オンディーヌと遍歴の騎士ハンスの悲恋を描く。
上演台本・演出には名作ドラマや映画を手掛ける星田良子、そして歌舞伎界で注目の若手女方として活躍する中村米吉がオンディーヌを勤める。騎士のハンス役にはWキャストで小澤亮太宇野結也が、水の精(王妃イゾルデ)役に紫吹淳ほか豪華なキャストが顔をそろえた。上演を間近に控えた2人のハンスに話をお伺いした。

≪セリフをいかに我がことのようにするか≫

――稽古も佳境です、脚本を読んだ初期と今ではかなり印象が変わったのでは?

小澤:僕は古典を読んだことがなかったので、最初は表現としてストレートだけど、その中に何かありそうだなぁと。その理解がなかなか出来なくて、シンプルな部分が多いからこそ難しいなと感じました。今は演出の星田さんの解釈に触れて、これはこういう考えなんだとか、色々な発見が沢山増えてきて、どんどんイメージが膨らんでいる状況です。

宇野:僕は最初台本を読んだ時、ハンスは悲しい人なのかなと思ったんです。ただ今の気持ちだと最後に愛を確かめられたのでハンスは幸せだったのかなと思っていて。時間が進むにつれて新たな気づきがありました。

――お二人とも古典作品は初挑戦だそうですが、古典作品の面白さや難しさについてお聞かせください。

小澤:とにかく言葉が難しくて、これなんて読むんだろう?と漢字を読むところから始まって(笑)。塔を“ムネ”って言うんだ、お暇を“おいとま”とか、自分ではジャッジできない読み方があり、そういう所から始まったので普通の作品より難しいなと。表面上と内面では言ってることとやっていることが違う逆説の表現が多いので、解釈が難しいと思いました。頭ではわかっているんだけど口に出せない感情もあったりして、本番までにはしっかり整理したいと思っています。たぶん観ている方はそれが面白いのかなと思います。

宇野:セリフ量が本当に多く、また現代の言葉でないのでどうしても説明セリフになってしまうところを、いかに自分の言葉にするか。星田さんから“我が事のように”とずっと言われていて、そう伝えることが難しいなと感じています。
でもその中で楽しさは、それが全て感情として芝居で通った時に出る達成感でしょうか。亮太くんもおっしゃっていましたが、逆説が多く(プランとして)持ってきたものが全然違ったこともあって(笑)。確かに逆で考えたらそのゴールに行けるのかと。古典は人間の心理を突いている所があると思っていて、そこが面白いのではないかな。

小澤:矛盾していることも多いけど、その矛盾を正当化させるところもあったり、そこはこの本の面白さで挑戦するべきところですね。

≪初めてのWキャストが亮太くんで良かった≫

――ハンス役について何を意識して演じようと思っていますか?

小澤:この作品の中では一番人を愛してる人物なので愛について意識しています。また、オンディーヌとベルタに恋をして中途半端なところだけではなく、ちょっと“愛すべきおバカ”なところもあったり、それを可愛さにしていきたいですし意識していますね。

宇野:すごく動物的なんですが、騎士としての凛々しさやプライドを持っている男を意識していますね。“好きだ、お腹が空いた、大変だ、つらい”みたいなストレートさが動物っぽいなと思っていて、例えば犬は甘えてくると普通にカワイイじゃないですか。自分の犬なのに、誰かがエサを持っていたらそっちに行ってしまう、でも飼い主的には嫉妬はなくて。犬に置き換えると意外と許せるのかなって。

小澤:ぜんぜん許せるね(笑)ダメだけど。

――ビジュアル撮影の時に2人のハンスの印象が全然違って、小澤さんは少年の心を持ちつつワイルドな“動”のイメージ、宇野さんはセクシーさとクールさを持った“静”のイメージで、全く違うハンスに期待しました。

小澤:一瞬だけ宇野くんの撮影を見ましたが、もっとガタイがイイ人のイメージだったけど、その時はちょうど筋肉の関係でシュッとしててカッコよくて、ホリが深いから似合いますよね。

宇野:いやいや(笑)ビジュアルはぜんぜん違う雰囲気ですよね。舞台を観ていただいた時、僕達が全く同じ思想を持っていても目から入る印象はまったく違うと思います。2人の違いは絶対楽しめるんじゃないかと改めて思いました。あと僕は初めてのWキャストで不安でしたが亮太くんで良かったなって。

小澤:僕もそう!宇野くんで良かったもん!心強い!

――毎日一緒に稽古をされているそうで、心強いという発言もありましたがお互いのハンスを見ていかがですか?

宇野:僕は稽古場で亮太くんと話すことが一番多いのですが、とても優しくて愛がある人だなって思います。ハンスを演じているふとした瞬間の目配りとか、一瞬の心の動きがとても優しい人の動作だなって。それは見習っていきたいですね。

小澤:宇野くんは目力が強くて、もちろんそれだけではないけれど、切れがあっていいなって思っていますね、無いものねだりです(笑)お互い見ていてマネる必要は無いと思うし、影響を受けると自分のものが崩れてしまうので、二人で切磋琢磨して話しているだけでも充分やり取りができていると思っています。

≪米吉さんを見ていてびっくりする≫

――先ほど『我がことのように』というアプローチが出ましたが、星田先生との稽古について印象に残っていることは?

小澤:こう考えていらっしゃるんだと、自分が持ってきたものと全然違う意味合いもあったので新しい発見が沢山あります。その方向は確かに面白いかもと納得する場面が多くて、そこが印象的ですね。

宇野:『この作品で私の演出が良くなかったら次の作品は無いのよ』とおっしゃっていて、ひとつひとつの作品に本気な所が凄いと思いました。長年に渡り映像や舞台に関わっているのに10代の様なパッションと熱量で作品にぶつかっていて、僕たちをねじ伏せるような力も持っているので圧倒されます。星田さんに『ちょっとよくなったね』と言われる日を一日でも増やしたいですね。

小澤:ほんとそれ!厳しいからこそ、そうなりたいです。

――そして今回は様々なジャンルから出演者がいらっしゃいます。宝塚出身の方には宝塚風の稽古方法があったりしますが、米吉さんとの稽古で気が付いたエピソードがありましたら教えてください。

小澤:ステージのここに立ってと指示が出ると、シュンと移動してくるんですよ。それがすり足のような独特な動きで、この走り方はもしや歌舞伎特有の物なのかな?なんて感じていました。

宇野:声のレンジ(出せる音)がすごく広いと思いました。緩急で人の視線をキュッと集めて、その視点をスッと移動させる、それは技ですよね。素敵だなって思って見ていました。

小澤:完全に女性だよね。本当に可愛く見えるから凄い。

宇野:15歳の女の子に見える。しかも芝居になったらパッと変わります。

小澤:見ていてびっくりする。あの声を維持するのは大変だから本当に喉をいたわって欲しいですね。

――ほかの共演者についてはいかがですか?

宇野:今作はとても楽曲が良くて、紫吹さんがサラッと唄っていらした時、素敵な歌声にまず感動しました。その歌声から僕たちの佳境のシーンにつながっていくのですが、すごいパワーをいただきました。みなさんが本当に素晴らしくて、撲は年齢が一番下でなかなかそういう現場が無かったので新鮮です。

小澤:先輩が多いよね。ふとしたところで面白いことが多々あります。加納さんの声は凄く素敵だし、我さんのコミカルさも楽しい。積み上げてきたものを持っている皆さんが本当に素敵で稽古が楽しいです。

宇野:お芝居を交わしていてもとてもスピード感がありますね。

――自分が注目して欲しいシーンについて教えてください。

小澤:後半に裁判のシーンがありまして、そこからエピローグに繋がるのですが、あそこをしっかりと観て頂きたいので前半を頑張らなきゃと思います。愛の重さがわかってくる大事なシーンですね。

宇野:僕も亮太くんと同じで、裁判シーンからミソなので、その4幕を立たせるために、1~3幕をいかに軽やかに見せていくか。全部見どころです。どのお芝居もそうですが、ラストに向けて物語の温度感が上がり、スピード感も上がっていくので、その為にできることを積み上げて、かつ共演者から頂く力を糧に、それらを武器にしていけたらと思っています。

――ちなみに愛知公演は宇野さんだけの上演です。

小澤:そうなんです撲は年明けからですね。みんなが積み上げている間は熟成してます(笑)

――宇野さんは故郷で初日を迎えます。これは特別な想いもありますね。

宇野:そうなんです。名古屋で音楽活動をやっていたので…。

小澤:え!音楽活動?何をしていたの?

宇野:メタルバンドをしてました(笑)“メタルバンドからテニミュ”と名古屋で言われてまして。今回は古典作品で名古屋に戻ります。若い方にもわかりやすく伝えたい想いもありますね。

小澤:そうだね、老若男女問わず楽しめる作品にしたいですね。

宇野:米吉さんの歌舞伎以外の初めての舞台という事で、彼にとって良い思い出が残る作品になることが一番だと思っています。彼の魅力を余すことなく届けられるように、撲たちのハンスがオンディーヌの眼に映る素敵なものでないといけないと思うから、一生懸命に食らいついていきたいです。
古典ではありますが古典っぽくしたくないという演出家の想いもあり、お客さまはきっと楽しめると思います。ご来場お待ちしております。

小澤:歌舞伎の方、元宝塚の方をはじめ、いろんなジャンルの出演者に加えて、特徴的な水の精のシーンや古典だけど古典を崩したい気持ちもあり、色んな要素が混ざって良い色になると思っております。その中でもハンスは大事な役どころで、最後にオンディーヌが綺麗に輝けるように頑張ります。

概要
『オンディーヌ』
日程:会場
愛知
日程・会場:2022年12月23日 (金) ~2022年12月25日 (日) ウインクあいち 大ホール(愛知県産業労働センター)
東京
日程・会場:2023年1月6日 (金) ~1月11日 (水) 東京芸術劇場シアターウエスト
作:ジャン・ジロドゥ
上演台本・演出:星田良子
出演
オンディーヌ:中村米吉
ハンス【Wキャスト】:小澤亮太/宇野結也
水の精キラ(ベルタ):和久井優
水の精サラ(ベルトラン):佐藤和哉(篠笛)
水の精ユラ(貴婦人):白鳥かすが
水の精ダヤン(国王):加納 明
水の精トン(オーギュスト):我 善導
水の精セラ(ユージェニー):宮川安利
水の精の王(奇術師):市瀬秀和
水の精アリ(王妃イゾルデ):紫吹 淳

<アフタートーク>
対象公演回のチケットをお持ちの方がご覧いただけます。
なお登壇者は急きょ変更になる場合もございますので予めご了承ください。
▼愛知公演登壇者
12月24日(土) 17:30 回 … 中村米吉、宇野結也、和久井優、紫吹淳、MC:我善導
▼東京公演登壇者
1月6日(金) 18:30回 … 中村米吉、宇野結也、MC:我善導
1月7日(土) 17:30回 … 中村米吉、小澤亮太、MC:我善導
1月8日(日) 17:30回 … 中村米吉、和久井優、MC:市瀬秀和
1月10日(火) 18:30回 … 中村米吉、紫吹淳、MC:白鳥かすが

企画・製作:アーティストジャパン
公式サイト:https://artistjapan.co.jp/ondine2022-2023/
公式ツイッター:Twitter @aj_ondine

カメラ:山副圭吾 メイク:奥戸彩子 衣裳:仲村祐妃子 メイキング:谷中理音