スタジオライフ公演『決闘』上演中 苛立ち、エネルギー、剣を交える。

2007年に上演し、好評であった『決闘』が上演中だ。

冒頭はフェンシングのシーン、ジョエル(松本慎也/曽世海司)とエリック(宮崎卓真)、高校生、制服のまま、フェンシングに興じる。フェンシングの原形は、中世の騎士たちによる剣術にあるとされている。ジョエルにとってはエリックと剣を交える時間はかけがえのないものだ。フォームを顧問のソープ先生(伊藤清之)に直される。

松本慎也(ジョエル)

練習場所は時間になると他の部活に譲らなければならない。部活「あるある」。エネルギーと自分の中にある感情を持て余しているジョエル。顧問の女性教師ソープは真面目を絵に描いたような教師。規律やルールを重んじる。親友のエリックはクラスメートのルイーズ(曽世海司/松本慎也)が好き。彼は1年前に父を喪っている上に母親は愛人を作っている複雑な家庭環境。ルイーズは美少女だが、頬に大きな痣があり、その痣のせいでクラスメイトから虐められることがある。

左:松本慎也(ジョエル)  右:曽世海司(ルイーズ)

確かにジョエルとエリックは親友だが、ジョエルは少し違った感情を持っていた。彼は自分がゲイであることを自覚し始めていた。ルイーズはエリックを友達としてみているが、付き合うとなると友達ではいられなくなる。

曽世海司(ジョエル)

また、ちょっとヤンチャなタイプのバレー部のスケリー(当麻創太)、何かと二人に突っかかるところがあるが、彼もまたルイーズが好きだった。だが、これも「あるある」、好きだからちょっかいを出したり、虐めたり、ストレートに好きという感情を伝えるのが苦手。物語は彼女を巡ってのエリックとスケリーのいざこざが中心となって展開する。

右:曽世海司(ジョエル)
左:当麻創太(スケリー)

その二人のもつれにジョエルが関わり、スケリーと剣を交えることに。スケリーは運動神経抜群、ジョエルを挑発、だがフェンシング部員であるジョエルはスケリーを傷つけてしまう。ソープ先生は無難な解決をしようとするが、ジョエルはそれに対して不服であり、かえって先生を怒らせ、除名処分に。さらにジョエルはある勘違いをし、エリックとの関係性にも亀裂が生じる…というのが大体の流れだ。
2.5次元系の部活もののような爽やかで前向きな物語ではなく、10代の、子供でもなく、また大人でもない不安定な感情や苛立ち、それで仲違いをしたり、喧嘩をしたり、あるいは物事を悪い方に考えたり、反発したり。ジョエルの持つエネルギー、エリックの持つ年頃の気持ち、スケリーの行動、ルイーズのコンプレックスからくる屈折した感情、そのどれもが特別ではない。そしてボタンのかけ違いから思わぬ事態を生む。

右:曽世海司(ジョエル)
左:宮崎卓真(エリック)

登場人物は5人。シンプルな舞台。キャストも適材適所、またフェンシングのシーン、見どころではあるが、一歩間違うと本当に怪我をするので、ここは息を合わせて。しかもウエストエンドスタジオという濃密な空間で繰り広げるので迫力もあり、また、単なる戦いではなく、それぞれの感情がぶつかり合うシーンでもある。「剣を通して話をする」「剣がものを言ってくれる」というジョエル。剣の音は効果音ではなく、剣がリアルにぶつかり合う音。その音を通して感情が伝わる。Fleuret(フルーレ)で観劇。公演は26日まで。

右:松本慎也(ジョエル)
左:宮崎卓真(エリック)

STORY
高校のフェンシング部に所属するジョエルとエリック。
自分の中に渦巻く感情を持て余しているジョエルは、エリックと剣を合わせる時間だけが生甲斐だった。いつも規則からはみ出してしまうジョエルはフェンシング部顧問の女教師ソープ先生に訴える。「僕たちは剣を通して話をするんです。言葉なんかいらない。剣がものを言ってくれる。その他のものは何も要らない。剣だけが僕たちなんです」ところが、エリックはクラスメートのルイーズに恋をしている。ルイーズは頬に大きな赤痣がある美少女。バレー部に所属しているスポーツ万能のスケリーが口にした言葉がエリックを刺激し、ジョエルの心に火をつける。その火は止まるところを知らず、残酷な運命へと若者達を導いてゆく。

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≪Studio Lifeとは≫
1985年に故河内喜一郎と倉田淳により結成、2023年38周年を迎える演劇劇団。1988年から、男優が女性役を演じるという手法をとり、現在は男優40名、女性演出家・倉田淳1名のみで構成されている。その耽美的な世界観と、演出家・倉田淳の独創的な脚色力、美しく繊細な舞台演出が話題を呼び、30代~50代の女性を中心に圧倒的な支持を得ている。

概要
タイトル:『決闘』
日程・会場:2023年3月18日(土)~26日(日)  ウエストエンドスタジオ
※上演時間100分予定・途中休憩なし。
原作:ジョン・ラザラス&ジョア・ラザラス
翻訳:吉原豊司
脚本・演出:倉田淳
CAST(Wキャスト) 5名
チーム名:Fleuret(フルーレ)/Sabre(サーブル)

Fleuret(フルーレ)  Sabre(サーブル)
松本慎也  ジョエル  曽世海司
宮崎卓真  エリック  宮崎卓真
曽世海司  ルイーズ   松本慎也
当麻創太  スケリー  当麻創太
伊藤清之  ソープ先生  伊藤清之

公式サイト:https://studio-life.com/stage/ketto2023/
舞台写真:スタジオライフ提供