竹下景子 × 加藤健一 『ジンゲーム』上演中 老人ホームでトランプ遊び、挙げ句の果てに

竹下景子×加藤健一 初の二人芝居に、ピューリッツァー賞受賞の名作、ただいま、絶賛上演中!
過去には何度か共演、「川を越えて、森を抜けて」(2009、2012)「喝采」(2017、2019)など。今回も息のあったところを見せてくれるはず。

物語の場所は老人ホーム。ここに入所している二人の老人。一人はウェラー(加藤健一)、トランプが趣味。もう一人はフォンシア(竹下景子)。この二人、訪問に来る家族がいる様子がない。ウェラーは入居して2ヶ月、フォンシアはウェラーより新参者。ひょんなことからトランプ遊びが始まる。

やったことのないフォンシア、何気に”先輩顔”するウェラー、だが、初心者にしてはなぜか強いフォンシア、最初はビギナーズラック程度に思ってたウェラーだが、負けっぱなしの状況に次第にイライラ、しまいには癇癪を起こしてテーブルをひっくり返したり、トランプをぶちまけたり、挙げ句の果てに「クソババア!」と怒鳴ったり。この二人の会話の応酬で何気に性格が透けて見える。

もちろん、悪人でもなんでもなく、ちょっと癖のあるごく普通の二人。「ああいえば、こういう」のやりとりが可笑しく、客席からは終始、笑い声が絶えない。シニカルなやりとり、時々、毒が混じってたり。知らないもの同士なはずなのに、息のあった会話。

2幕、始まりはフォンシア演じる竹下景子が客席通路を通って舞台上に上がる。コロナ禍も落ち着いてきた昨今らしい”サービス”演出。階段を一つ一つ登るフォンシアに手を差し伸べるウェラー。根は優しい人物であることがなんとなく見え隠れする。二人の会話、それぞれの事情とバックボーン、ちょっと悲しげな事情、だが、「あるある」。訪問する家族や友人などがいないこともそこでわかる。別部屋からちょっとわちゃわちゃした音が聞こえる。他の入居者には訪れる家族や友人がいる模様、そんな空気感。孤独を抱えつつ、悪態をつきながらも、どこか寄り添う二人。杖をついているウェラー、誰も訪問に来ないとはいえ、花柄のワンピースでお洒落をしているフォンシア。年齢ゆえに取っ組み合いの喧嘩はしないものの、激しくぶつかり合うところは、それだけ互いに気を許している、とも受け取れる。

基本コメディ、何度か共演している竹下景子と加藤健一の息のあったやりとりが可笑しくも優しさに満ちた空気感を醸し出す。ちょっとキツくて面白く、しみじみとした味わい。公演は7月9日まで。

STORY
入居者や食事や看護師への愚痴で息の合う二人。
ホーム独特の空気感に馴染めない二人は、トランプ遊びを始める。
時間つぶしがてら気軽に始めたゲームだが、初心者のフォンシア相手に全く勝てないウェラーは、対戦を重ねるごとに苛立ってきて…。
単純なトランプゲームが、孤独な老人たちの“単純ではない”過去をあらわにする。
名優二人による重厚な演技で、ピューリッツァー賞受賞の名作に挑戦。
セリフの応酬がおもしろい、チクリと刺さるビターコメディー。

作者:D.L.コバーン
劇作家。1938 年、アメリカ・メリーランド州生まれ。当時 30 代で『ジン・ゲーム』を執筆してデビュー。 他の作品には『Bluewater Cottage』『Noble Adjustment』『Return to Bluefin』他多数。 また、テレビ番組の脚本も手掛けている。

作品:THE GIN GAME
1976 年 9 月、アメリカン・シアターアーツにて初演。1977 年 10 月にブロードウェイデビュー、公演回数は 516 回にのぼる。 その後、イギリス、ロシア、フランス、オーストラリア、中国等、数多くの国で上演された。
日本ではメープルリーフ・シアターが 2000 年に初演。(訳:吉原豊司、演出:貝山武、出演:水谷貞雄、加藤土代子) 1978 年度ピューリッツアー賞受賞作品。

ジン・ゲーム:遊び方
世界三大トランプゲームのひとつであり、2 名で対戦する。 「ジン・ラミー」または「ジン」と呼ぶのが一般的だが、本作では「ジン・ゲーム」としている。
10 枚ずつ札を配ってゲーム開始。プレイヤーは、未配布の札または最新の捨て札から 1 枚引き、手札から 1 枚捨てる。 これを交互に繰り返し、同じ数字を 3 枚以上、または同じ記号で連続する数字を 3 枚以上集め、揃ったら「ジン!」と言い、 手札を見せて勝利。

概要
日程・会場:2023年6月29日(木)~7月9日(日) 下北沢 本多劇場
作:D.L.コバーン
訳:吉原豊司
演出:小笠原響
出演:竹下景子 加藤健一

次回公演 好評につき、またまた!あのお二人が!
「サンシャイン・ボーイズ」
日程・会場:2024年1月24日〜1月31日 本多劇場
作:ニール・サイモン
訳:小田島恒志 小田島則子
演出:堤泰之
出演:加藤健一 佐藤B作 加藤義宗 田中利花 照屋実 韓佑華 佐野匡俊 声の出演:清水明彦(文学座) 加藤 忍

公式サイト:http://katoken.la.coocan.jp

撮影:石川 純