市村正親・大竹しのぶコンビ&演出・振付 宮本亞門 ミュージカル『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』開幕

ミュージカル『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』が`16年の上演から8年ぶり5度目の再演で`24年3月9日より、東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)にて上演。その後は仙台、川越、大阪にて。

トニー賞8部門をはじめとする数々の賞を受賞し、`23年ブロードウェイにてリバイバル版が爆発的な人気を博している本作。初演は1979年3月。19世紀のイギリスの伝説、スウィーニー・トッドが題材。
日本では`81年に上演されて以来、`07年に26年ぶりに演劇界のレジェンドである市村正親・大竹しのぶコンビで上演され、以降`11年、`13年、`16年と再演。
そして、04年、東洋人初の演出家としてブロードウェイにてソンドハイムの『太平洋序曲』を上演し、トニー賞の4部門でノミネートを果たし、他にも多くのソンドハイム作品の演出経験を持つ宮本亞門が演出振付。
ロンドンの街を彷徨い、不吉な雰囲気の中にも哀しい過去を想起させ、物語の鍵をとなる乞食女役のマルシア。スウィーニーの娘であるジョアンナへの愛を貫き、二人の未来を守ろうとまっすぐに奮闘する 若い水夫のアンソニー役に山崎大輝/糸川耀士郎。世界から隔絶され、自由に強い憧れを抱く中でアンソニーに出会い、恐怖と闘いながらも彼との愛を追い求めていくジョアンナ役に唯月ふうか/熊谷彩春。 スウィーニーを絶望に突き落とし、ジョアンナまでも我が物にしようと欲望にまみれ、悪徳判事と呼ばれるターピン役に安崎求/上原理生。そのターピンの忠実な部下として様々な悪事を働きながらスウィーニーを苦しめ、復讐の標的の一人となる小役人のビードル役にこがけん。ミセス・ラヴェットのパイ屋を手伝い、次第に店に漂う不審な空気を感じ取り、その原因はスウィーニーではと疑い始める純真無垢な青年トバイアス役に、初演の07年から同役を担う武田真治とWキャストに加藤諒が担う。

重厚な出だし、1人、また1人、登場し、圧巻の歌声、これから始まる不穏で暗いストーリーを予感させる。物語の舞台、大英帝国の帝都ロンドンの中心部のシティー西端に位置するフリート・ストリートという街路は、当時は下層民が住むスラム街。よって舞台の照明もほの暗い。そして血だらけの白衣を着たベンジャミン・バーカー(市村正親)が登場する。髪の毛はボサボサ、眼光鋭く、前を見据える。残した妻と幼い娘を想い流刑地から脱獄した彼は、漂流しているところを水夫アンソニー(山崎大輝/糸川耀士郎)に助けられたのであった。アンソニーは気のいい青年、助けるのが当然という考え方。

ミセス・ラヴェットにパイをもらい…。
理髪店の道具を手にして…。
ほほう…。

それから場面転換、これが滑らか、ミセス・ラヴェット(大竹しのぶ)が営むパイ屋。彼女から妻と娘に起きた悲劇を聞かされ、自分が無実の罪を着せられたことを悟り、全ての元凶であるターピン判事(安崎 求/上原理生)に復讐を誓う。しかも娘・ジョアンナ(唯月ふうか/熊谷彩春)はターピンの養女に。怒り狂わんばかりのベンジャミン、名前をスウィーニー・トッドと名乗り、パイ屋の2階に理髪店を開く。

腕前対決。
素性を知り、金をゆすろうとするも…。
どりゃー!秘密を知られたからには…。

もちろん、ターピン判事と部下のビードル(こがけん)に復讐するために。

ターピン判事。ベンジャミンの妻に横恋慕、夫であるベンジャミンを無実の罪で流刑にした張本人。
部下のビードル
アンソニーとジョアンナ
恋が止まらない、彼女を幸せにしたい!
あともう少しだったのに…。

1幕では、ベンジャミンのバックボーンや怒り、ミセス・ラヴェットの想いが描かれ、サイドストーリーとしてアンソニーとジョアンナの出会いと恋に落ちる様を描いている。また、ベンジャミンを慕う青年・トバイアス(武田真治/加藤諒)がなぜ、パイ屋で働くことになったかも1幕で語られる。1幕幕切れはベンジャミンとミセス・ラヴェットの歌、ダンス。意気投合し、2人でやっていこうという前向きなナンバー。

そして20分の休憩後は2幕。2幕はいわゆるこの物語の”オチ”、クレージー、グロい、ヤバい、そしてどん底な展開、そして『そうだったのか!』という事実が明るみに。乞食女の正体が!また、若い2人の恋模様もスリリング、片時も目を離せない展開。楽曲は巨匠・スティーヴン・ソンドハイム。彼の作品の中ででもっともオペラ的な音楽およびリブレット。大勢での重唱シーンはほぼオペラのようで多重で多くのことを物語る。一列になって歌うシーンなどは、1人1人の個性が垣間見える。暗いストーリーなので、所々、ショーアップした場面を挟み込んだりしている。
そして充実のキャスト陣、市村正親、大竹しのぶは貫禄、余裕。乞食女のマルシア、狂気の声が響き渡り、悪徳判事ターピン、ゲネプロでは上原理生、不遜な空気感を漂わせ、アンソニーは糸川耀士郎、真っ直ぐな好青年を実直に、ジョアンナは熊谷彩春、可憐で可愛く、アンソニーが一目惚れするのもよくわかる。トバイアスは加藤諒、初役とは思えないハマりっぷりで物語のアクセントに。部下のビードルを演じるこがけんは腰巾着な”小者感”で。スティーヴン・ソンドハイム作品の演出では一人者の宮本亞門ががっちりと構成、場面転換はスピード感もあり、小気味よく進行。公演は3月9日から、ツアーもあり。

初日に先駆けて取材会が行われた。宮本亞門、市村正親、大竹しのぶが登壇。

実は前回公演は”ファイナル”と銘打ってたが、2024年再びの上演、これについて大竹しのぶが「ファイナルとか言いながら騙してるみたい」とコメント。この公演は市村正親が「もう1回、しのぶさんとスウィーニー・トッドやりたい」と言い出したのがきっかけ。「もう一度『スウィーニー・トッド』に挑戦してみないと、死ぬに死にきれないという思いがあって、もう一度上演させてもらえないかとお願いをしたらみんなのスケジュールが空いていて、ホリプロの許可も出た」と語る。さらに「はなむけにこの作品を僕にくれたんだと思います」とコメント。また、セットも新たに作り直したとのこと。「前よりも素晴らしいミセス・ラヴェットを演じたい、新鮮な気持ちで挑みたい」と大竹しのぶ。また、ソンドハイムと親交が深かった宮本亞門は「きっと世界で最も歌うのが難しい曲を作る作曲家。入り込めるとこれほど面白いものはないが、入り込めないととても難しく…一音一音に込められた意味を徹底的に紐解きながら作り上げた。これまでに観てくれた方に失礼かもしれないが、やっと完成したと思う」と語る。さらに「ソンドハイムは親友で、僕をブロードウェイに連れて行ってくれた人」とコメントし、生前に伝えられたソンドハイムの熱い想い、「直接聞いていたので、今回はそれを丁寧に伝えたい。天国で喜んでくれるたら」と語った。
稽古場でのエピソードとしては大竹しのぶは「市村さんはちゃんとお弁当を持って来ていて」と語る。市村正親は”料理男子”。「私がうらやましそうにじとーーーーーっと見つめると、市村さんは美味しい卵焼きや生姜焼きをくれました」とコメント。市村正親は「ある番組で500gの肉をもらったので自炊をしない加藤諒君のために、6人分のステーキ炒飯を作った」と”料理男子炸裂”。「目指すところまで来たのでは。年齢に負けず、復讐の鬼となって舞台で暴れたい」という市村正親だが、…って聞きます。今回の舞台がまさしく僕が消えかかる前に…消えかかるロウソクは、その瞬間ブゥワ~っと輝いて」と老いをネタにした自虐発言も飛び出し!

「消えかかるロウソクは、その瞬間ブゥワ~っと輝いて…」
両脇で笑う大竹、宮本。

「肉も腐る前がうまい…」という市村正親に宮本亞門が「なんでそんなことばっかり言うんですか!」と喝を入れる一幕も。
宮本亞門は「真実の愛や、人間の心の痛みが描かれています。戦争や格差社会が広がり、現実がより生々しいものになった。今回はそれらを踏まえたうえで向き合っているので、“楽しいエンタテインメント”でもありますが、それ以上の凄みを感じていただける作品になった、心にガツンと響く舞台」と締めた。

ストーリー
舞台は18世紀末のロンドン。フリート街で妻子と共に幸せに暮らしていた理髪師 ベンジャミン・バーカー(市村正親) が、ある日、妻に横恋慕した悪徳判事 ターピン(安崎 求/上原理生) によって無実の罪を着せられ流刑に処せられる。長い年月を耐え忍び、やっと脱出した彼は、若い水夫・ アンソニー(山崎大輝/糸川耀士郎) に助けられ、不吉予言を吐く 乞食女(マルシア) もたむろする、ロンドンのフリート街にたどり着く。かつての自分の店を訪ねた彼は、その階下でパイ屋を営む昔なじみの ミセス・ラヴェット(大竹しのぶ) から、妻はターピン判事に陵辱された果てに狂死し、娘の ジョアンナ(唯月ふうか/熊谷彩春) はそのターピンの養女となっているという事実を知らされる。怒りに燃える彼は、スウィーニー・トッドと名乗り、素性を隠して新たに理髪店を開いて虎視眈々とターピン判事や、部下のビードル(こがけん) に復讐する機会を狙う。そしてラヴェットを慕う孤児の トバイアス(武田真治/加藤 諒) を巻き込み、スウィーニーとラヴェットは、奇想天外で荒唐無稽な計画を実行する…!!

概要
キャスト
スウィーニー・トッド:市村正親
ミセス・ラヴェット:大竹しのぶ
乞食女:マルシア
アンソニー:山崎大輝/糸川耀士郎(Wキャスト)
ジョアンナ:唯月ふうか/熊谷彩春(Wキャスト)
ターピン:安崎 求/上原理生(Wキャスト)
ビードル:こがけん
トバイアス:武田真治/加藤 諒(Wキャスト)
石井雅登、小原和彦、榎本成志、下村将太、高田正人、高柳 圭、俵 和也、茶谷健太、山野靖博、
岩矢紗季、川合ひとみ、北川理恵、鈴木満梨奈、高橋 桂、永石千尋、福間むつみ
スウィング:西尾郁海、大倉杏菜
安立悠佑
スタッフ
作詞・作曲:スティーヴン・ソンドハイム
脚本:ヒュー・ホイラー
演出・振付:宮本亞門
翻訳・訳詞:橋本邦彦 訳詞:中條純子、宮本亞門
音楽監督:山下康介 指揮:渡邉晃司
美術:松井るみ 照明:佐藤 啓
音響:大坪正仁 衣裳:前田文子
ヘアメイク:馮 啓孝 歌唱指導:安崎 求
振付助手:水野栄治 演出助手:河合範子
音楽監督助手:中條純子 舞台監督:二瓶剛雄、広瀬泰久

日程・会場:2024年3月9日(土)~3月30日(土) 東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
主催:フジテレビジョン/ホリプロ/ニッポン放送
企画制作:ホリプロ
ツアー期間会場:
宮城:2024年4月12日(金)~14日(日) 東京エレクトロンホール宮城
問合:022-268-2174 (平日11:00~16:00)
埼玉::2024年4月19日(金)~21日(日) ウェスタ川越 大ホール
問合:049-249-3777(9:00~19:00 点検日等の休館日を除く)
大阪:2024年4月27日(土)~29日(月祝) 梅田芸術劇場メインホール
問合:06-6377-3800(10:00~18:00)
ツアー公演キャストスケジュール: https://bit.ly/3Nkl9Dy

公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/sweeneytodd2024/