ーーブロードウェイ、ウエストエンドを震撼させた超問題作! ーー
今世界が最も注目する女流作家ルーシー・カークウッド(2014 年ローレンス・オリヴィエ賞受賞)によ る、悪寒とサスペンスに満ちた傑作「チルドレン」が、栗山民也を演出に迎え、さいたま芸術劇場で開幕、9月12日より世田谷パブリックシアターで上演される。
巨大地震の影響で、大津波が起き、原発事故が起きた。 津波の浸水で家を追われた夫婦が移り住んだコテージ。 そこに20数年ぶりに女友達が訪ねてくる。3人はかつて原子力発電所で一緒に働いていた核技術 者同士。かつてのように語らい、他愛もない冗談を言い合いながらも、彼女が口にしたのは衝撃的 な提案であった。原発から遠く離れた海辺のコテージに鳴り響くガイガーカウンター。リタイヤを前に した男女3人の学者たちは、静かに決断を下す──。
ルーシー・カークウッドは、1984 年生まれの弱冠 33 歳というイギリス演劇界期待の若手女流作家。 彼女が執筆した、アメリカ人写真家が、1989 年に天安門広場で戦車の前に立ちはだかった男の軌跡をたどりながら、現代のアメリカやそこで暮らす外国人が抱える問題をひも解いた意欲作「チャイ アメリカ」は、2014 年ローレンス・オリヴィエ賞作品賞を受賞。
本作「チルドレン(原題:THE CHILDREN)」は、そんな注目のカークウッドが英ロイヤル・コート・シアタ ーの招きで書き下ろした作品。カークウッドの作品を上演するのは、日本で本作が初となる。
米ブロードウェイ、英ウエストエンドでの上演成功を受けて、今春シドニー・オペラハウスでの上演も 決定した本作。世界の観客に問いかけるのは、普遍にして壮大なテーマ。多くの過ちを繰り返し、染みだらけになったこの地球で、今を生きる私たちは、生まれ来る未来の子供達の為に、何ができるのかを問いかける。
東京公演に先立ち、囲み会見とフォトコールが行われた。フォトコールでは抜粋されたシーンを上演。セットはかなりリアリティを感じるもので、舞台そのものは斜めになっている。ほんの30分弱であったが、3人の関係性とバランスを感じさせる。人生の後半に差し掛かった3人の人生と想いのような空気をそこはかとなく感じさせるものであった。それから会見、高畑淳子、 鶴見辰吾、 若村麻由美が登壇した。まずはフォトセッション、すでに埼玉で開幕しているので、息のあった3人。「今回、モテモテなんだよ」と鶴見辰吾が笑う。つられて高畑淳子、若村麻由美も笑う。それから会見が始まった。
高畑淳子は「もう2回やったんですけど、今日からここですが、埼玉ではお客様がじっくり観てくださっているっていうのがありました。あと、明かりが美しかった、あと、若村さんが美しかった(笑)」と笑顔で語る。それを受けて鶴見辰吾が「友達が観に来てくれて若村さんのサインが・・・・・」と言ったとたんに「私は????」と高畑淳子。のっけから笑いに包まれた出だし。「とってもやりがいがあるっていうか、お客様にとっても見応えのある芝居になったな、と」と確かな手応えを語る高畑淳子。「友人が何人か観に来てくださったんですが、『大きなものを考えて帰っていく』みたいなことは言ってました。帰りの電車の中でぐるぐると・・・・・想像が止まんない状態で帰るみたいなことを言ってました」と鶴見辰吾。「面白いシーンもいっぱいあるんで、そこは楽しく!盛りだくさんな芝居です」と語る。若村麻由美は「笑いどころも満載なので、遠慮なく!テーマが重いからと言って・・・・・遠慮なく笑っていただけたらいいなと思っています」と笑顔で語る。さらに「この3人の科学者の話ですが、人生の後半に入って、振り返った時にシンプルに『この後、何をすべきか』っていうことに思いを・・・・そういうお話なので、ご覧になったお客様に『お持ち帰り』いただけるような意味深い、演劇らしいお芝居です」と続ける。そして若村麻由美は「今回、念願の!ちょっと背伸びした、白髪とか、しかもローズという役は、たくさんのものを手にいれられずに、大切なものも失っている人なので、自分が『最後に自分は何をすべきか』ということがすごくシンプルに見えている。お2人は震災を経験していて、私はアメリカにいた、それを報道で知る。それを自分たちが作った原発のことで一目散に帰ってくる、とある国に。そこから物語が始まる、彼女はなぜ、訪ねてきたのか、と。それが解き明かされていく、ちょっといミステリーっぽいような面白さと本当に日常的な『歳をとるのや〜ね』とか、高畑さんに引っ張ってもらって、「途中からロビンが登場するんです。3人になると相乗効果でもっと面白くなるんです」と熱く語る。
この作品は東日本大震災の福島の原発から、イギリス人の作家が啓発したものだそう、あの『3・11』。「日本で上演されることに意味がある」と若村麻由美。居合わせた全員が頷く。しかもついこの間も北海道で大きな地震も。なんというタイムリーな!という感のある今回の作品。「災害が続いているからこそ、考えたい」と言い「でも、なんだかんだ人間は死ぬ・・・・・まさにね」鶴見辰吾は「読みすすめていくとね、いろんなものが内包されていて、行き着くところは我々の日常、どういう風に生きていくかっていうところになるんです」と語る。「人間が立ち向かわなければならない問題。世界で共有できる作品」と若村麻由美。「(作家は)フィクションとして3・11を描いている。実際に経験している日本での上演に神経質になっていて、どう受け止めていいのか、すごく真剣に考える人。だから、戯曲であるということを踏まえて観ていただけると面白いと思います」と鶴見辰吾。「次の世代に向けて我々はどうすべきなのかを描いている」さらに実際の原発のエピソード、「若者が作業をしていて、それを原発のOBが『我々が代わった方がいいのではないか』という話を、作家さんが・・・・・だから勇気を持って日本での上演、スタッフさん、すごく勇気がある、今、やるべき芝居だと言われましたね」と若村麻由美。高畑淳子も「私も言われました。『また観たい』と」と補足説明。
座組については「鶴見さんはしっかりしている!」と高畑淳子。「純な人だなと毎日、この2人に稽古場で会うのが楽しい!」と鶴見辰吾。「(鶴見辰吾を見て)いい感じに渋めになってる!」と若村麻由美。
見所を聞かれて高畑淳子は「私たち3人の生き物!」と笑わせるが、この三者三様の生き様と思いは見所となりそうだ。「見所はいくつもある!」と若村麻由美。ここは劇場で!「想像を絶するスリリングな展開!」と鶴見辰吾。またリアリティを追求しているので舞台上で高畑淳子は料理をするそうだが、これが、なんとガチ!だそう。それを若村麻由美が「むちゃくちゃ、美味しいです!」と絶賛。
しかし、現実に北海道では物流もままならず、な状況、直接助けに行くこともままならない。これほどにタイムリーな作品もなかなかない。「この作品に命をかけて・・・・・これが我々の使命」と鶴見辰吾。「『海から鐘の音が聞こえる』という下りがあります。犠牲になった方達の鎮魂の鐘であると。そういう方たちへの鎮魂の気持ち、そして今、生きている私たちはそれでも生きていかねばならない、再生、希望・・・・・謹んで、そういう方達に捧げるつもりでやりたいなと」と若村麻由美。
最後に「よくこの3人がチームになれたなと。感謝しています。心を込めて、そして日常を生きていく人間を演じたい」(高畑淳子)、「普段の生活がどれほど大事かを考える皆さんと考える芝居を提供したい」(鶴見辰吾)、「生きとし生ける者全てに!心の糧になる芝居ができました!」(若村麻由美)
【公演概要】
PARCO プロデュース 2018 『チルドレン』
作:ルーシー・カークウッド
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:高畑淳子 鶴見辰吾 若村麻由美
【スタッフ】
企画・製作:株式会社パルコ
<日程>
埼玉: 9月 8日(土)〜 9日(日) 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
東京: 9月 12日(水)〜26日(水) 世田谷パブリックシアター
豊橋: 9月 29日(土)・30日(日) 穂の国とよはし芸術劇場プラット主ホール
北九州:10月 13日(土)・14日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
仙台: 10月 30日(火) えずこホール(仙南芸術文化センター) 他
公式サイト:
http://www.parco-play.com/web/program/children/
文:Hiromi Koh