駒田航、岸尾だいすけ他豪華出演陣!音楽朗読劇 「ザ・グレイト・ギャツビー」泡沫の夢、気高い心。

名作「ザ・グレイト・ギャツビー」(The great Gatsby)の音楽朗読劇が1月に開催されるが、これは2018年3月、8月にTOKYO FMホールで上演され、大きな反響を呼んだ音楽朗読劇「ジギルvsハイド」「シラノ」に続く、田尾下 哲演出の音楽朗読劇 シリーズ。
原作はフィッツジェラルドの代表作で度々映画化もされている名作で1925年に出版、彼の代表作であるとともにアメリカの文学作品としても代表的な作品として知られている。

映画化はレッドフォードが主演したバージョン(1974年)とデカプリオが主演したバージョン(2013年)があり、また宝塚歌劇団が1991年に当時、雪組のトップスターだった杜けあき主演で舞台化している。

 

作品は、ニックの視点で始まる。彼がアメリカのロングアイランドのウェスト・エッグに家を借りた時に出会ったのが、その家の隣で毎週末豪勢なパーティを開いている男、それこそがギャツビー。彼と仲良くなるニック、彼のパーティに来ている人々は彼については知らない。不思議に思い、彼のことを聞き出していくにつれて、デイジーという女性への愛情の深さについて知ることになる。ニックを通じてデイジーと再会したギャツビーは、彼女を振り向かせるために一途に想いを伝えるが、デイジーは愛人としてギャツビーをキープするのみ。かならずデイジーが僕の元に帰ってきてくれる。そう信じていたギャツビーでしたが、不運が重なり悲しい最期を遂げる。

ギャツビーは戦争から帰ってきて、愛する女性を振り向かせるために短期間で巨額の富を築くが、その一途な想いとは裏腹に、集まってくる人々はパーティの楽しさや、ゴシップ、金を求めるばかり。そんな世俗の欲にまみれた中で、一人純粋さを貫くギャツビーを見てニックが名づけたのが「華麗なる(The Great)ギャツビー」。彼だけがあの中で価値のある人間だった、とニックは思う。 このストーリーが朗読劇に。観劇した回は駒田航(ギャツビー) 、岸尾だいすけ(ニック) 、安済知佳(デイジー)。

幕開きは軽快なジャズで始まる。ニックが登場し、時代背景を説明。第一次世界大戦が終わり、女性の服装も軽やかで華やかになり、アールデコの時代、そして禁酒法、映画でも有名なアル・カポネの時代でもあった。 ニックはデイジーの家に招かれる。この作品のヒロインだ。小説にはそのほかにも登場人物があるが、この3人にフォーカスされた構成になっている。 小気味よくストーリーは進行していく。デイジーは1920年代の流行に敏感でアッパークラスの女性が着ていたであろう品の良いピンク色の衣装、頭には小さな帽子。ニックの服装は地味めな茶色系の衣装、ニックは証券会社の勤め人であるが、給料はさほど高くない、という設定だ。

さてタイトルロールにもなっているギャツビー、いかにも成功者といった風情で颯爽と登場、仕立ての良いスーツ、胸にはスカーフ。 時折、1920年代のジャズが流れるが、その瞬間、劇場空間は作品世界に登場しそうなジャズのクラブのようになり、客席からはクラップも起こる。時々、無音、時々ピアノの調べ。シンプルでいながらもイマジネーションをかきたてるには十分だ。華のあるギャツビー、その心は意外ほどに純真でまっすぐ、そんな性根に触れるニックは彼をリスペクトするようになる。ギャツビーはデイジーに心を寄せて愛するが、その気持ちは空回り。デイジーは彼に関心があるように見えるが、実はそうではない。照明や音楽に彩られつつも声優陣の声の力でリアル感を醸し出す。デイジー役の安済知佳は可愛らしく、可憐な雰囲気を醸し出し、『これなら恋に落ちるのも納得』なキュートさ。ニック役は岸尾だいすけ、トム役も兼ねるのだが、切り替えはさすが、トムになった途端にゲスな雰囲気を瞬時に出してニックとの落差をしっかりと見せつける。駒田航演じるギャツビーは見た目も颯爽としていて爽やかそのもの。恋に破れた後の沈み方はそれまでの意気揚々としていた姿とのコントラストをはっきりとつけてギャツビーの誠実さを印象づける。それを照明によってさらに印象づける。 よく知られた作品、悲劇的な結末、しかし、湿っぽくなりすぎないさじ加減。舞台を去るギャツビー、ニックに手を振り、客席通路を通って去る。その去り方がギャツビーの生き様と重なる。 太く短く生きたギャツビー、ニックは言う「希望を見出す力」と。分類されるとしたら悲劇なのかもしれないが、ギャツビーの生き方は美しく気高い。最後の方でギャツビーは自分の生い立ちを語る構成、これがさらにギャツビーという人物を昇華させる。 毎回、キャストが変わっての公演、キャストによって少しずつ色が変わることであろう。これが、このシリーズの良いところ。役替わりでまた観たい、聴きたいと思わせる作品だ。

 

 

【公演概要】
日程・場所:2019年1月9日〜1月15日 TOKYO FMホール
タイトル:朗読で描く海外名作シリーズ 音楽朗読劇 「ザ・グレイト・ギャツビー」
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
上演台本:保科 由里子
演出:田尾下 哲

出演者は公式ホームページで!

<速報!第4弾決定!>

「レ・ミゼラブル」

日程・場所:2019年8月5日〜8月12日 TOKYO FM HALLにて

原作:ビクトル・ユーゴー

演出:田尾下 哲

公式HP:http://musica-reading.jp
公式ツイッター:https://twitter.com/musica_reading

取材・文:Hiromi Koh