《インタビュー》ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』ピータパン役 吉柳咲良

ホリプロミュージカルの原点でもあるブロードウェイミュージカル『ピーターパン』が今年2021年日本初演から40周年を迎える。
ピーターパンはイギリス・スコットランドの作家サー・ジェームズ・M・バリの戯曲『ピーター・パン:大人にならない少年』小説『ピータ・パンとウェンディ』
からなる作品と、そのタイトルロールである主人公の名称で、初出は小説『小さな白い鳥』。
ミュージカルは1954年、ブロードウェイにてメアリー・マーティン主演で上演、ピーター・フォイの考案によるフライングが取り入れられた。1975年にはサンディ・ダンカン主演でリバイバル上演、ロングランを果たした。日本初演は1981年、主演は榊󠄀原郁恵、340回演じ続けて話題になった。そして、10代目ピーターパンとして2017年よりピーターパンを演じ続けている吉柳咲良さんに、ピーターパン役に決まった時の感想やコロナ禍で公演中止になった時のこと、今年の公演にかける意気込みなどをお伺いした。

――もはや夏の風物詩とも言える『ピーターパン』ですが、出演が決まったときの感想は?

吉柳:最初、お話をいただいたのは、「ホリプロタレントスカウトキャラバン」からそんなに時間が経っていない頃でした。当時はまだ舞台というものが何なのか、まったくわかっていなくて。ミュージカルというものも知らなかったですし。そもそもやることが決まってからいろいろな作品を観劇させていただいたほどです。なので、お恥ずかしながら、お話をいただいた時は聞く言葉全てに「?」マークがついていました。
初めて観劇させていただいたのは『ミス・サイゴン』。本当に歌にダンスにお芝居に、とすべてが詰まっていたんですね。しかも生で観られるんですよ。演者からスタッフから、いろんな人の熱量が注がれた結果を!そのことにすごく感動しましたし、これから私も『ピーターパン』で同じように作っていくんだと、ワクワク感とプレッシャーとで気持ちがいっぱいでした。
当時中学1年生で舞台に立たせていただいた時、初めてお客様の前でフライングをしたのですが、思いの外小さな子供たちの姿が多かったんですよ。本当にキラキラした目を向けているのが見えて、そこで初めて自分が今までやってきた稽古の集大成ってこれなんだ!って。観てくださっている人がいて、演じる側がいて。舞台は私たち演者やスタッフだけではなくて、お客様と一緒に作っていくというのでしょうか、全てが揃って作品が初めて出来上がるということなんだなというのを、自覚したし感動したのを覚えています。

舞台写真提供:ホリプロ(2017年初演舞台写真)

――お客様のリアクションで、演じる側の気持ちも変わってきますよね。『ピーターパン』で好きなセリフは?

吉柳:素敵なシーンがたくさんあるんですが、ウェンディが大人になって、その子供がピーターとともにネバーランドに行くところ。ウェンディが「私も行けたらよかったのに」と言ったのにケロッと「無理だよ、ウェンディは大人になっちゃったんだもん。連れて行けないよ。」というところ。
ここは、初演のときは本当にピンと来なくて。私の年齢がまだ幼かったのもありますし、1年目のときは演じることと、ダンスと、飛ぶこととでいっぱいいっぱいだったんですね。だからピーターのセリフについての感情とか意味を考える余裕もなかったんです。でも演じ続けて、成長して、初めてここの意味がわかったんですよ。すごく残酷な言葉だなって。ピーターにとっては次に連れて行く子供がいるから、ウェンディはもう必要じゃないんだって悲しくなっちゃって。そのときから、ピーターがちょっと孤独で冷たい部分があるのかなって思えてくることもあったんですよ。大人の何を知っていてそんな言葉を言えるんだって。でも、それ以前に私はピーターを演じるのだから、本来は客観的に見る立場ではないのに……。なので、とても悩んだし、無邪気がゆえの残酷さとかを忘れかけていたことも、考えすぎて演じることに対して怖くなっていた時期もあったくらいでした。
今回、新演出の台本をいただいたときにも、その頃の思いを引きずって「ピーターパンがわからない」という感じになってきてしまって。今年どうしていくべきか、細かくいろんなことを演出の森さんと一つひとつ詰めていけたらいいな、と思います。

製作発表会で熱唱。

――『ピーターパン』って、話の中身は意外と哲学的ですよね。昨年、新型コロナウィルスの影響で中止になってしまいましたが、その時のお話を。

吉柳:毎年やっていたのに、中止になってしまった時は、心がぽっかりと空いてしまった感じ。それがすごく不思議な気持ちでしたね。何とも言えないというか、急に真っ白になっちゃって。私このままでいいのかな?とかお仕事について考えるばかり。いつ収まるのかも、来年できるかどうかもわからない。その頃ドラマの再放送をいろいろ見ていたときに、事務所の先輩である石原さとみさんが出演していたんですね。「私はこうなりたかったから、演技をしているんだ」というのに気づいて。だから、空いた時期だからこそできる、これから先に身に付けなくてはならないことを徹底して実践したんです。早起きもしたし、お菓子もやめたし(笑)。そのほか体力づくりなど自分に細かく予定を立てて、同じルーティーンをできるように目指しました。その時にすごく達成感というか、ここまで自分でできたと前向きになれて。その頃ちょうどドラマのオーディションに受かって、撮影もしたのですが、だから悪いことばかりでもなかったし、何もできない環境だからこそできる何かをしたほうがいいということがわかった1年でもありました。今年は上演できるので、本当によかったと思います。

――共演の方々についてはいかがでしょうか?

フック船長役 小西遼生
ウェンディ役 美山加恋
ダーリング夫人役 瀬戸カトリーヌ
タイガー・リリー役 宮澤佐江

吉柳:タイガー・リリー役の宮澤佐江さんは、本当のお姉さんのように慕っていたので、今年も共演できるのに安心感があります。だからこそまた新しくなって、座長として、成長した姿を見ていただければいいなと思っています。
ビジュアル撮影のときに小西さんとお話していくうちに私の性格とかをすべて見破られていまして(笑)。しかも撮影に対するアドバイスもたくさんいただいたり。稽古が始まったら、ピーターとフック船長の関係ってどんどん変わっていくと思うんですが、そのときにも優しく接してもらえた分、対等に戦える相手になれればいいなと。
また、ウェンディ役の美山加恋さんは今回が初めて。この間イベントでちゃんとお話させていただいて、すごく明るくて優しい人なんだなと感じました。趣味のカメラの話で盛り上がるとき、本当にちょっとキュンとしちゃいました(笑)。それに、ウェンディとピーターの関係性ってすごく重要なので。大事に作っていきたいですね。

タイガー・リリー役の宮澤佐江が元気に歌う。
フック船長役 小西遼生、歌唱

――それでは、最後にメッセージを。

吉柳:自分が初めて舞台を観たとき、今まで感じたことない迫力だったり、発見があって、作品の世界にどんどんのめり込んでいけたんですね。『ピーターパン』って永遠の子供であるピーターを、成長してしまう私たち人間が生で演じるということで、自分から遠かったファンタジー、夢の世界が身近に感じられる気がするので。だからこそ、夢を持ち続けながら演じていきたいし、『ピーターパン』がそこにいるんだって見てもらえたらなって思うんです。劇場に来ていただければ、素敵な何かを、夢をお渡しできるような舞台になればいいなと、来てよかったと思える作品にしたいと願っているので。希望を持ち帰っていただけるように私たちもがんばりますし、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらと思います。

――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。

ピーターパンvsフック船長
ネバーランドで待ってます!

[会見時に披露した楽曲リスト]
1曲目 ♪えばってやるぞ
ピーターとウェンディが出会ったときにピーターが自分のことを歌うナンバー
★吉柳咲良/美山加恋
2曲目 ♪ネバーランド
ピーターが自分が住んでいる島のネバーランドについて歌うナンバー
★吉柳咲良/美山加恋
3曲目 ♪海賊マーチ~フックのタンゴ
フック船長が海賊たちにピーターと子どもたちを倒すための計画を伝えるナンバー
★小西遼生/駒井健介/笠原竜司/中山昇/久礼悠介/當間ローズ/冨永竜
4曲目 ♪クロスオーバーマーチ~えばってやるぞリプリーズ
タイガー・リリーはじめ、全員がピーターを称えるナンバー
★歌唱パフォーマンス登壇キャスト全員
5曲目 ♪飛んでる
本作の代表曲、フライング(空中飛行)をするときのナンバー
★吉柳咲良/美山加恋/津山晄士朗/遠藤希子/君塚瑠華

<物語>
あるところに、いつまでも子どものままの男の子がたった1人いました。 いたずら好きで、やんちゃでちょっぴり意地悪で、そして空を飛べるその子の名前はピーターパン。ある日の夜、ピーターパンはダーリング夫妻の家に “ あるもの ”を取りに忍び込みます。そこでダーリング夫妻の子供たち、ウェンディ、ジョン、マイケルと友達になったピーターパンは3人を連れて夢の国ネバーランドへと飛び立ちます。ウェンディはネバーランドで出会った迷子たちの“お母さん”になり、タイガー・リリー率いる森の住人たちとも仲良くなりました。ウェンディたちは、みんなと楽しく愉快な時を過ごしながらも、いつしか家が恋しくなり、迷子たちも連れてロンドンの家に戻ることにします。ところが、フック船長率いる海賊たちが待ち構え、ウェンディたちを捕らえてしまいます。全員で海賊との激しい戦い、ピーターパンとの最後の別れを惜しむウェンディたち。ウェンディは彼にお願いをします。「春の大掃除の季節にはきっと迎え に来てね」と。時が経ち、約束を果たしにピーターパンがやってくるのですが.…。

<キャスト>
ピーターパン:吉柳咲良/フック船長・ダーリング氏:小西遼生/ウェンディ:美山加恋/ダーリング夫人:瀬戸カトリーヌ/タイガー・リリー:宮澤佐江
海賊たち
スミー:駒井健介/マリンズ:笠原竜司/ビル・ジュークス:中山 昇/スターキー:久礼悠介/セッコ:當間ローズ/ヌードラー:冨永 竜
迷子たち
トートルズ:石川鈴菜/ふたご1:大熊杏優/カーリー:澤田美紀/スライトリー:中野 歩/ニブス:なづ季澪/ふたご2:松崎美風
森の住人たち
井上弥子/加藤翔多郎/小石川茉莉愛/佐藤アンドレア/澤村 亮/仲野泰平/深瀬友梨/渡辺崇人
ジョン:津山晄士朗/マイケル:遠藤希子 君塚瑠華(Wキャスト)/ナナ 三浦莉奈

<概要>
青山メインランドグループファンタジースペシャル
ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』

[東京公演]
期間:2021年7月22日(木・祝)~8月1日(日)
会場:めぐろパーシモンホール 大ホール
主催:フジテレビジョン/ホリプロ
特別協賛:青山メインランド
共催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団
後援:目黒区/TOKYO FM
[神奈川公演]
期間:2021年8月7日(土)・8日(日)
会場:相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)
主催:フジテレビジョン/ホリプロ
特別協賛:青山メインランド
共催:公益財団法人相模原市民文化財団
後援:TOKYO FM
<大阪公演>
期間:2021年8月14日(土)・15日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール
主催:梅田芸術劇場/ABCテレビ
特別協賛:メインランドジャパン
お問い合わせ:梅田芸術劇場 06-6377-3800 (10:00~18:00)
https://www.umegei.com/schedule/976/

[仙台公演]
期間:2021年8月21日(土)・22日(日)
会場:仙台銀行ホール イズミティ21・ 大ホール
主催:仙台放送
共催:(公財)仙台市市民文化事業団
お問い合わせ:仙台放送 事業部 022-268-2174 (平日10:00~17:00)
https://www.ox-tv.jp/sys_event/p/
[名古屋公演]
期間:2021年8月28日(土)・29日(日)
会場:御園座
主催:御園座
特別協賛:メインランドジャパン
お問合せ:御園座 052-222-8222 (10:00-18:00)
https://www.misonoza.co.jp/lineup/

[スタッフ]
原作:サー・ジェームズ・M・バリによる作品を元にしたミュージカル/作詞:キャロリン・リー/作曲:モリス(ムース)・チャーラップ/潤色・訳詞:フジノサツコ/演出:森新太郎/翻訳:秋島百合子/音楽監督・編曲:村井一帆/美術:堀尾幸男/照明:佐藤 啓/音響:井上正弘 /衣裳:西原梨恵/ヘアメイク:鎌田直樹/振付:新海絵理子/アクション:渥美 博/フライング:松藤和弘/歌唱指導:満田恵子/演出助手:玉置千砂子 伴・眞里子/稽古ピアノ:金森 大/舞台監督:二瓶剛雄 オーケストラレーション(東京公演のみ):新音楽協会/エグゼクティブ・プロデューサー:堀 威夫
公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/peterpan2021/
構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美