主演 平間壮一,その恋人役 小関裕太,共演に東山義久,岡幸二郎etc.『The View Upstairs-君が見た、あの日-』開幕!人間、そして愛。

話題作、『The View Upstairs-君が見た、あの日-』が開幕した。
ニューオリンズに実在した「アップステアーズ・ラウンジ」という同性愛者クラブで1973年に実際に起きた米国史上に残る同性愛者に対する事件の一つ“アップステアーズ・ラウンジ放火事件”。この事件で32人が死亡し、警察の見解は依然として「容疑者不明」とされ、2016年のフロリダ銃乱射事件が発生するまで、この放火事件は、米国の歴史上最大の同性愛者クラブに対する攻撃として知られていた。

これを題材に、ブロードウェイ新進気鋭の若手作家、マックス・ヴァーノンが作・作詞・作曲を手がけたミュージカル「The View Upstairs」。2017年にアメリカ、オフブロードウェイで初演、その後全米各地で上演。
2018年にはオーストラリア、シドニーで初海外プロダクションが開幕、2019 年にはロンドン版も上演され、今回、日本初上演となる。
舞台中央にピアノ。男が登場、彼の名前はバディ(畠中洋)、レジデントピアニスト。ピアノを愛おしそうに撫でる。そして眼鏡をかけてピアノを弾き語りを始める。1曲目「此処が きっとパラダイス」、1970年代のファッションに身を包んだ人々が登場し、歌い踊る。「アップステアーズ・ラウンジ」に集う人々、エネルギーに満ちた空間、時代の空気も感じる。

そして暗転、場面は現代、ウェス(平間壮一)と不動産屋(大嶺巧)、物件をみている。「もう2022年ですよ」とウェス。そして契約を交わす。SNSを駆使しているウェスは早速、フォロワーのためのビデオ撮りを始める。そしてコカインを吸いながら歌う。壁からカーテンを引き剥がすと…・不思議なことが、いきなり!変わる!1973年のアップステアーズ・ラウンジが!驚くウェス、しかし、ここに集う人々とて同じ、ちょっと自分達とは格好の違う人物がいきなり目の前に現れたのだから。ウェスが手にしているスマホ、これを気味悪がり、ウィリー(岡幸二郎)が足で踏んづける(笑)、何度も!思わず、笑いが。「今、何年?」「1973年」「?!」。しかし、すぐにこの”過去の人々”と仲良くなるウェス、そんな時にパトリック(小関裕太)という青年が店にやってきた、ちょっと目が合う二人。

そこに集まる人々は、世間の”基準”で考えるとちょっとはみ出した、変わった人たち。登場人物たちの状況などが見えてくる。寂しげな表情のデール(東山義久)、彼は男娼、しかもホームレス。「俺はいつもベンチで寝ている」と言う。一方で神父的存在のリチャード(大村俊介)が寄付を集めている。若いフレディ(阪本奨悟)は昼は建設作業員、夜はラテン系のドラァグクイーンのオーロラ、彼の母・イネズ(JKim)、シングルマザー、ここのオーナーであるヘンリ(関谷春子)、ウィリーは経験豊かでバーのメンターのような存在。彼らの日々が綴られる。

主人公のウェスは現代からやってきた人物なので、言ってみれば『我々と同じ』。ウェス以外の人物は1973年にはいたわけである。厳しい現実と時代、1970年代のアメリカはゲイ解放運動がアメリカ国外にも伝播、1970年にはオーストラリアには Campaign Against Moral Persecution (CAMP, Inc.) が、イギリスでは British Gay Liberation Front が設立。つまり、こういった運動が盛んということはマイノリティには、まだまだ厳しい社会であることの裏返し。ホームレスのデールは、いつも薄暗い場所にいる。此処にいても罵られたりするが、さりとていくところもない。フレディはドラァグクイーンだが、そんな息子に対してイネズはいつも彼を包み込む。ちょっと俯瞰的な立ち位置でそこに集う人々を見守るウィリー、多彩なナンバーが彼らの様子を鮮やかに観客に見せる。やがて、ウェスはパトリックに惹かれていき、パトリックもまた、ウェスに対して熱い思いを見せる。

この舞台で描かれているのはそこに生きる人たちの生き様、愛、思い、そして人間ならではの弱さ、そして強さ。警官に寄付のお金を渡す下りもあるが、綺麗事はない。デールが一人、歌うシーンがある。彼が抱える孤独、しかし、誰の耳にも入らない。生きる場所を求めて、此処に、「アップステアーズ・ラウンジ」に集まる。皆、懸命に生きる、シンプルにただ、それだけ。そして”その時”は近づく、「アップステアーズ」は何処へ行くのか、それは現代に生きる者だけわかり、そこに生きていた彼らには、もちろんわからないが、それがわかっても、きっと彼らは”彼ら”のまま。ラストシーンは美しい。
主人公・ウェスの平間壮一の心揺さぶる歌唱、小関裕太演じるパトリック、ちょっとミステリアスな空気感を纏いつつ、愛を感じていく姿を見せる。岡幸二郎や畠中洋ら、ベテラン勢の安定した存在感、歌唱。フレディ演じる阪本奨悟がなかなかキュートで母のイネズ演じるJKim、包容力たっぷりで安心感を醸し出す。あれこれ考えずに、観たままを感じる舞台、そうすれば、見えない垣根も飛び越えられるかもしれない。

<あらすじ>
現代を生きる若きファッションデザイナーのウェス(平間壮一)は、ニューオーリンズのフレンチクォーターにある廃墟と化した建物を購入する。クスリでハイになった彼が窓にかかるボロボロのカーテンを引き剥がすと、その瞬間、 活気に満ちた 70年代のゲイバー「アップステアーズ・ラウンジ」にタイムスリップしてしまう。そこは、まだ同性愛が罪であった時代に強い絆で結ばれた”はみ出し者” たちの拠り所であった。様々な事情を抱えた彼等と触れ合い、時に厳しい70年代の現実を体感する中で、人と人の絆の意味を学んでいくウェス。
パトリック(小関裕太)という青年との間にも、ささやかな恋が芽生えていく。だが、やがて「アップステアーズ」の秘密が明かされる「その時」が訪れるのだった…。

<CAST>
ウェス:平間壮一
パトリック:小関裕太

バディ:畠中 洋
イネズ:JKim
フレディ:阪本奨悟
ヘンリ:関谷春子
リチャード:大村俊介(SHUN)
警官・不動産業者 ほか:大嶺 巧

デール:東山義久

ウィリー:岡幸二郎

<概要>
ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』
【東京公演】 2022年2月1日(火)~2月13日(日) 会場:日本青年館ホール
【大阪公演】 2022年2月24日(木)~2月27日(日)  会場:森ノ宮ピロティホール
脚本・作詞・作曲:Max Vernon
演出・翻訳・訳詞・振付:市川洋二郎
企画・製作:アミューズ
【オフィシャルサイト】https://theviewupstairs.jp/
【オフィシャルTwitter】@viewupstairs_jp