『ダンスカンタービレ2018』 Mori Shingo & 8 Foxy Girls 現実か夢か幻か、艶っぽくも耽美、スタイリッシュなダンスパフォーマンス

2017年の春、DIAMOND☆DOGS のメンバーとして活躍するかたわら、持てる才分を生かし、構成・ 演出・振付と多方面で活動、確固たる位置を築いてきた 森新吾 が、ついに自身の創作活動 『ダンスカンタービレ』を立ち上げた。
19 世紀末のロンドンを震撼させた「切り裂きジャック」をベースとして、森自身が自由に発想を 膨らませ構成・演出・振付。さらにスタイリッシュな振付が魅力の原田薫、港ゆりからが加わり、 万華鏡のようなダンスシーンが繰り広げられる一方、世界で語り継がれている名曲からインスピレーションを得た T-LAYLA の音楽がクロスオーバーし、新たな世界が切り拓かれた。この骨組みに肉付けしたのが、森新吾と、華と実力を兼ね備えた今旬の 8 人の女性のパフォーマンス。現実と虚構の世界を創造した。この仄暗い妖しい魅力を放つ作品、1 年という熟成の時を経て、また出演者に一部新たな陣容を迎えたのみならず、音楽にTAKA が加わった。

鐘の音が響く、モノローグ「ねえ、覚えている?」と。ほの暗いステージ、ヴァイオリンの音色、幻想的なシーンから始まる。女性陣の群舞は可愛らしさと色香と艶やかさとが同居する。ドラマチックなダンス、そして森 新吾が登場する。

時折、モノローグのセリフが入るが、基本的にはダンスとマイムで表現する。ベースは切り裂きジャック、1888年に発生した猟奇的殺人で現在でも未解決の事件、劇場型犯罪の元祖とも言われている。そんなわけで様々な映画や演劇、コミック、アニメなどで多く取り上げられている。この公演では切り裂きジャックを森 新吾が演じているのだが、猟奇的になる瞬間と『正気』に戻る瞬間を演技とコートと顔のマスクで表現するが、切り替えも鮮やか、殺人の瞬間は一瞬、『生』が見える。不意に死が訪れる女性たち、史実ではそのほとんどが娼婦であったが、それを彷彿とさせる艶、そして不道徳な香りとそこから垣間見える愛、そういったものが渾然一体となって観客の視線を釘付けにする。

史実ではジャックの正体は全くわからない。ここでは「ジキルとハイド」のような裏の顔と表の顔が真逆なキャラクター、それを森新吾が渾身のダンスで表現する。

休憩を挟んで2幕、「血の雨が降る・・・・・夢と現実がわからない」とモノローグが入る。これは泡沫の夢なのか、現実なのか、中心に風花舞、妖しい魅力を放ちながら踊る。そして他の女性陣、風花舞演じるキャラクターが次々とナイフで喉を切り裂く。実は切り裂きジャックは女性説もある。なぜなら殺された女性たちは警戒した様子がなかったからだ。まさに血の雨、凄惨なシーンなはずなのだが、そこはかとなく耽美な味付けでリアリティとは対極な表現で提示する。

舞台には常に白い衣装を着たキャラクターと黄色い衣装を着たキャラクターがいるが、彼らの姿はきっと人間には見えていない。これがどういう存在なのか、ここは観客の想像力や解釈で異なっていく。そういった「のりしろ」はこの作品のアクセント、そんな部分があってもいいと思える、そんな存在だ。

現実と夢と幻が交錯し、凄惨さと美しさと妖しさとが一つになるパフォーマンス、振付もさることながら演者たちのダンススキルの高さと演技、大人の舞台、劇場を出たらワインでも飲んで余韻に浸りたい。なお、観劇した回のゲスト出演は長澤風海、登場した途端に場面をさらっていく瞬間はさすがだ。

【公演概要】
『ダンスカンタービレ2018』 Mori Shingo & 8 Foxy Girls
公演日程・場所:2018年12月12日〜12月16日 銀座・博品館劇場
構成・演出・振付:森 新吾
音楽:T- L A Y L A  T A K A
振付:原田 薫 港ゆりか Show-hey 長澤風海
出演:森 新吾
風花 舞 舞羽美海 藤田奈那
長岡美紅 PSYCHE 伊藤佳耶芽 橋本由希子 木野村温子 田野優花 町田慎吾
企画・製作:博品館劇場/M・G・H

劇場HP:http://theater.hakuhinkan.co.jp/pr_2018_12_12.html