「ホリプロが描く日本の舞台ビジネス」 ホリプロ 代表取締役 堀義貴

2月27日から開催されている第6回ライブ・エンターテイメントEXPOにおいて、2月28日の特別講演にて「舞台ビジネスの最前線」というテーマで演劇業界のリーディング・カンパニーである株式会社ホリプロの堀義貴代表取締役が登壇し、「ホリプロが描く舞台ビジネス」についての講演があった。まずはホリプロの活動の概略の説明があった。舞台の売上はホリプロの全体の売上のおよそ3割だそう。海外公演、オリジナル作品の制作、招聘と積極的に取り組んでいるのは周知の通り。2020年には好評であった「ビリー・エリオット」やミュージカル「デス・ノート」などの上演が控えている。

「クール・ジャパン」という言葉が出て久しいが堀社長は「文化面ではまだまだ」と語る。インターネットの出現で様々なものが変化していったが「世界は狭くなってきている」と続ける。瞬時にして海外で何が行われているのか知ろうと思えば簡単にわかる時代になっている。村上春樹原作の「海辺のカフカ」のパリ公演が行われ、なんと村上春樹氏の講演会も行われたそうである。

ところで海外、ニューヨーク、ロンドンの劇場の観客の8割が観光客で占められているが、日本は「ほとんどいない」と堀社長。さらに「アジアの諸都市が熱い、経済的に豊かになってきている」と語る。しかし、東京の劇場は閉鎖が続き、昨年は渋谷の2.5次元ミュージカル専用劇場がクローズした。また公共のホールの効率の悪さも指摘、そして観客の8割は女性客に対して海外の劇場の観客の男女比率は半々、しかも日本より年齢層が若いと言う。

しかし、インターネットのおかげで時差も国境もなくなっている、と言っても過言ではない。堀社長は「こんなにチャンスがある世界はない」と断言する。

インバウンドは4000万人を目標に掲げているが、すでに3000万人を突破している、とは言うもの例えばフランスは8000万人、それと比較するとまだまだ開拓の余地はある、ということだ。そして訪日する観光客の80%は中国、台湾、香港から、中国語圏の人々が大半、ということになる。一方で少子化の影響で日本人は毎年100万人減っている、という事実も見過ごせない。よってアジア圏は巨大かつ魅力的なマーケットであることは明快だ。「今のアジアは本当に豊かで7時間以内で日本にこれるアジアの人々は40億人いる」と堀社長。また過去においてもそうだが、舞台ビジネスは「貿易不均衡」と堀社長は語る。翻訳ミュージカルを上演する場合、ロイヤリティを支払わなくてはならない。「外国からロイヤリティをいただくようにしていかないことには・・・・」と堀社長は続ける。例えば日本国内で無期限ロングランを続けている「ライオンキング」、権利元に25年間もロイヤリティを支払い続けていることになっている。また「海外公演は採算が合わない、黒字になったことはないが、これを20年続けていたからこそシンジケーションができた」と語る。さらに「この下地があるから海外にうっていけるようになった、ホリプロはやっとスタートラインに立てた。しかし、うまくいってもこれから先のことを考えるとうまくいっているうちに『爪痕』を残す」と続ける。2015年初演のミュージカル「デスノート」は最初から海外を見据えて制作された作品で台本は英語。韓国公演を行ったが、『セット』で貸し出した形をとっている。最近は海外から上演のオファーもきているそうだが、英語でわかりやすい台本を用意したところがポイントとなっている。「デスノート」は海外でも知られた日本のコミックであるが、昨年は「生きる」の舞台化されたが海外でもこのネーミングで知られている。そして2作品ともスタッフは国籍関係なく集められている、ということ。「発想の転換が必要、世界水準のものを作るにはいろんな人と協力をしなければならない、国籍は関係ない」と断言する。さらに「蜷川さんは20年間、毎年海外にいけた、それは日本人が創ったシェイクスピアが認められたから」と語る。レベルが高ければ海外で認められる、シンプルであるがそういうことであろう。

堀社長は「日本の生の舞台を海外の人に観てもらいたい。日本は曲がり角にきているが曲がり角なりの景色を見る、もし間違っていたら戻ってくればいい」と語り、講演会には男性の姿が多く、オーディエンスに向かって「ぜひ、舞台を観に行く習慣を!」と締めくくった。