名作『まほろば』、4月5日開幕!「家族のそれぞれの立場で描かれているので、そこが面白いです」(高橋恵子)「セリフ劇に挑戦できる実感」(早霧せいな)

蓬莱竜太・作の『まほろば』は 2008 年に新国立劇場で上演。日本という国家を逆照射するホームドラマは好評を博し、翌 2009 年に岸田國士戯曲賞を受賞、2012年に再演された名作だ。これを劇団チョコレートケーキの日澤雄介が演出、高橋惠子、早霧せいな、中村ゆり等が出演。
軽妙でテンポの良い女たちの会話の深層に「妊娠」「家」「血脈」という奥深いテーマが潜む本作を、今回は劇団チョコレートケーキの日澤雄介が新たなアプローチで演出し、再び「まほろば」が現代に甦る。

この日、公開されたのは冒頭部分。舞台セットはいかにも古い家屋、『昭和』な雰囲気が漂う。セットの作りこみが細かい!中央に『賢君忠臣』(意味:賢明な君主や、忠義を尽くす家臣)、縁側の端っこにおばあさん、この家の祖母であるタマエ(三田和代)がうちわで仰いでいる。部屋に小学生ぐらい?の少女、麦茶を飲んだりしている。母ヒロコ(高橋恵子)は座布団を運んでいる。なにやら忙しそう。

キョウコ(中村ゆり)が頭をふきふき!「お風呂、気持ちよかったよ」と。この家の長女・ミドリ(早霧せいな)がふすまを開けてよろっと(笑)、どうも二日酔いっぽい様子。母親との会話、「別れました!!」「なして???」「そっとしといてやんけ」。

いいたいことは遠慮なく言う。ミドリは縁側に座って不機嫌。いいたいことをいえば、何かと・・・・・走り回り、ものを投げるミドリとキョウコ、突き飛ばされる母・ヒロコ。バタバタと音を立てて!仕草もおかしく、ここは笑いも起こるシーン。祖母は飄々とした面持ちで「久しぶりに賑やかになったねーーーー」と言う。これからこの家で起こる『何か』を予感させるには十分な出だし。

フォトコールの前に囲み会見があった。登壇したのは高橋惠子、早霧せいな、そして演出の日澤雄介。フォトセッションの後に囲みとなった。演出の日澤雄介はこの作品に関われたことに対して「光栄です」と挨拶。そして「初演から10年、再演から7年、名作と呼ばれているもので、新しいものにチャレンジするってことで、ある種、逆っていうか、ぶつかるところでのキャスティングを目指して3人、お声がけをさせていただきました。高橋恵子さんは上品な・・・・すごく気品のある感じのイメージだったんですが、このヒロコは逆のイメージ。稽古場では聞いたことのない高橋さんの声が聞けるのが非常に面白かったですね。早霧さんは宝塚のトップスターだったので、華のある、かっこいい綺麗な印象・・・・・それがこのミドリっていうのはガサツでだらしがなくってっていうところが真逆。早霧さんはコメディエンヌなので、その部分がどんどん出てくるので非常に期待していただきたい!」と力いっぱい語った。それに対して早霧せいなは、特にストレートプレイは初めて、「音楽や歌詞、振付などに頼ってずっとやってきたっていうことを実感しました。だからこそセリフ劇に挑戦できる実感もあって・・・・稽古場に入って高橋さんや他のキャストさんの声で、家族の雰囲気で芝居できるのがすごく楽しいです」とちょっとワクワク感。高橋恵子は「これは主役っていうのはないです。一人一人、ドラマがあって描かれているので、誰が主役っていうのはないですね。実際の家族でも誰かが主役っていうのはないし、家族のそれぞれの立場で描かれているので、そこが面白いです」と語る。さらに「今までやったことのない役なので新し面をみなさまに見ていただけたら。『まほろば』という作品の持っている力、面白さ・・・・・平成最後の、この月にこの作品ができるのは日本人として大事にしていきたいですね。時代が変わっても『こういう言葉って大事だよね』と思ってもらえるように・・・・・おかしいですよね、早霧さんのあんな姿が観られるとは!三田和代さんとか大先輩の素晴らしい演技を目の当たりにしまして・・・・その他みなさんが生き生きと輝いていますので、そこを観ていただきたい」と力強くコメント。

早霧せいなは「初ストレートプレイ・・・・なんか『ストレートプレイです!!!!』って見えるのは、なんかやだな(笑)。作品に集中してご覧になっていただきたいなと。自分の中で壁を作らずに『まほろば』という作品の中で思いっきり生き抜けたらなと。土台、ここまでの経歴がみんな、全員違うのが集まった、これがものすごく私にとってはスペシャルな・・・・こういう経験でストレートプレイをやらせていただくのはありがたいです。一瞬、一瞬を、勉強させていただいているので、この家族における『事件』、次から次へと起きてくる熱い、暖かいものが心にじんわり伝わったら嬉しいなと思います。あと長崎県出身者としては、この話は長崎県のお話なので、方言も飛び出しますし、そこは誇りに思いつつ、出れてよかったな、と」と語る。また元号が変わるこの時期の上演ということで高橋恵子は「まずはしっかりと、この『まほろば』を、与えられたものをやりきって、その先に何か新しいものが見えてくるんだろうと思うんで。まずはこの『まほろば』を大事にして・・・・なかなか出会えない作品なので」また「こんなにズケズケ言っても仲良くいられる家族の暖かさ、これが『まほろば』・・・・素晴らしい場所っていう意味もあるんですけど、変に気を使いすぎたり、じゃなくっていいたいことを言ってもOKっていう場所っていいなって」
キャストは全て女性。稽古場から自然な感じだったようで演出家からは「華やかな稽古場でした・・・・・でもいいたいことをどんどん言う、すごくありがたかったんですけど、みんなが演出家みたいな(笑)。いい現場でした」とコメント。早霧せいなは「交通整理していただきました(笑)」とコメント。良い感じで稽古は進んでいた様子。また「みんなが積極的にアイディアを出し合って」と高橋恵子が『補足説明』。
演出家から「とにかくいろんなことが起きます。考えている暇がないくらい、それで必死に生きている人間、そのおかしみや温かみ、そこらへんが見所」とコメント。また演出について、「新演出、まずはヒロコさんを真ん中におきまして、いろんなことがわーーっと起こるんですが、それをヒロコさんの目線で、家と言うものを象徴的に、家にしがみついている、家に囚われている、家、古い何かに絡め取られている、女性像だったり、そこでも必死に生きていて、っていうところを色濃く出していければ・・・・あとは三田和代さん演じるタマエのお母さんから、いわゆる世代を超えてバトンがっていうところを大切にしながら、演出をさせていただきました」とコメントした。
東京は21日まで池袋のシアターイースト、大阪は梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、23日から。

<あらすじ>
とある田舎町、祭囃子が聞こえる中、宴会の準備をする母・ヒロコ(高橋惠子)。長女・ミドリ(早霧せいな)は東京に出ていき仕事を理由に結婚をせず、次女・キョウコ(中村ゆり)は父親不明の娘・ユリア(生越千晴)を出産し今もこの家に住み着いている。かつて地元の名家として知られた藤木家は男の跡取りもなく、ヒロコは娘たちに苛立っていた。
そんなある日ミドリが突然帰ってくる。さらにユリアまでもが前触れもなく現れる。祖母・タマエ(三田和代)、見知らぬ近所の子供・マオ(安生悠璃菜・八代田悠花)も加わり、女たちの赤裸々な会話が進む中、ミドリから衝撃的な告白が―

【公演概要】
舞台『まほろば』
<東京公演>
2019年4月5日(金)~21日(日) 東京芸術劇場シアターイースト
<大阪公演>2019年4月23日(火)~24日(水) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
作:蓬莱竜太
演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
出演:高橋惠子 早霧せいな 中村ゆり 生越千晴 安生悠璃菜・八代田悠花(Wキャスト) 三田和代
公式HP:https://www.umegei.com/mahoroba/