舞台「暗転セクロス」人間の欲望と夢と現実が密室で渦を巻き、混沌と・・・・・・。

舞台「暗転セクロス」が幕を開けた。この作品は朗読劇「私の頭の中の消しゴム」、映画「想いのこし」などを手がける岡本貴也の傑作、2013年の初演、2014年の再演、そして5年ぶり、3回目となる。物語は密室、しかもホテル、男女、とくれば・・・・・・セックス。しかもオムニバスで6つの物語で構成されている。

一つ目のタイトルは「初めて」201号室。これだけでおおよそ察しはついてしまうとは思うが、そこに至るまでの葛藤を描いている。自分をよく見せたい、という欲求は誰でも持っている。自分をよく見せようと『偽装』するのはありふれたこと。別に大したことではないかもしれないが、本人にとっては『大したこと』、この男も女も経歴をかなり『盛って』いる(笑)。手慣れたフリをしつつ、お互いを探ったり、直面している問題にあたふたしたり、その慌てぶりが客席から見るとなんとも滑稽だ。笑いながらもちょっとハッとするところもある。そこがツボだ。

二つ目は「お姉様と私」202号室。登場するのは若い男、その彼女、そしてデリヘル嬢。男はデリヘル嬢を頼んだ(90分サービス)。ところが、その前に彼女がきてしまい、それからデリヘル嬢が入ってくるという『修羅場』な状況だ。男はごく普通なファッション、彼女はちょっとダサ目、デリヘル嬢はもちろん艶っぽい。当然ながら彼女は怒る、怒るに決まってる!男は、彼なりにデリヘル嬢を呼ぶわけがあった。彼女はそれを聞いてヒートアップ、そしてオチが反則的な面白さ。特殊な状況で何かが弾ける、そんな印象だ。

三つ目は「人質」204号室。後ろに手を縛られている男女、そして拳銃を持つ男とその女。コンビニで強盗をし、そこで得た金を部屋にばらまく。縛られている男は命乞いをし、もう一方の女は殺していいというが、その理由がかなり自己中心的。しかし、このような状況だったら、それもやむを得ない。女は当然、怒る。この緊迫した密室、罵り合ったり、本音を言ったり。特殊な状況ゆえにいいたい放題。これもラスト近くは意外性のある展開で『暗転』する。

四つ目は「池田屋なの」203号室、有名な池田屋のことである。しかし、場所はあくまでも現代のホテル。「桂はどこだ!!!」、どうもタイムスリップしてきた様子。洋風の部屋に戸惑う土方歳三と沖田総司、しかも仲間の隊士も誰もいない。静かな密室でふと思うこと。常に生きるか死ぬかの瀬戸際にいた二人。それが現代に間違ってきてしまったゆえに自分自身を振り返る、自分たちの宿命、短い人生。そこで土方はある思いを沖田に・・・・・・。

五つ目は「やっと会える」205号室、小説家の男、ホテルで執筆している。楽しくないと言い、自殺グッズを取り出すが、そこへピザ屋が・・・・・。このピザ屋、他の部屋にも現れており、同じホテル内の出来事であることがわかる。小説家の男には自殺したくなるような彼なりの理由、妻に先立たれてしまった。そんな話を初対面のピザ屋に話す。そして・・・・・・男は・・・・・・・。

最後の話は「夫婦×2」102号室。2組の夫婦、それぞれに問題を抱えていた。あけすけな会話、子供が欲しいができない、その訳。そこから、思わぬことをしようとするが・・・・・・という展開だ。

同じホテルの異なる部屋で繰り広げられる密室劇。自分たち以外は誰もいない、密室という閉ざされた空間、最初は皆、『仮面』をかぶっているが、次第に本音が出てきて、ついには一種の『本能』がむき出しになっていく。しかも男女、ホテルという設定、そこに行き着くまでの過程が6つともそれぞれ異なり、描かれている景色も、当然のことながら違っている。全く異なる話のオムニバス構成、そこには一つの『線』が貫かれている。男と女の違い、人間としての共通点、ユニークなオチ、そして俳優陣の健闘、時にはリアルに、時には大仰に見せて本質を見せる。基本的に一つ一つが『読み切り』ではあるが、ちょっとした仕掛けもあって、そこは構成の面白さを追求。ベッドで繰り広げられる生々しい会話と仕草、しかし、下品にはならない。人間の欲望と希望と現実を混沌とさせて、それをスピード感をもたせて基本、会話だけで”見せる”。趣向の変わった作品、初演、再演と口コミで伝わって話題になったそうだが、それも頷ける。全くのオリジナル作品、現実にいそうな普通の人々、土方歳三も沖田総司もここでは普通の感情を持った人間として描かれているが、人間の考えることは古今東西、たいして変化はない。だから共感できる。セックスのイメージは刹那的であるが、実は恒久的な側面もある。様々な気づきがある作品、東京は8日まで、大阪は10月11日より。
<出演者コメント>
[201 号室「初めて」]
竹之内景樹
作品や、演出の岡本貴也さんに出会う事ができて本当に感謝しています。 今回の稽古期間は自分の今後の役者人生に必ず必要な経験だったと感じているので、本番では自分が 背負う役に全力で立ち向かっていき、今まで見せる事のなかった一面を見せたいと思っています。 是非楽しんで観ていただけたら嬉しいです!!
黒田愛香
「愛とは、セックスとは何なのだろうか?」 恥ずかしくて言えなかったり、本当の気持ちを隠したり、自分の心にある何かに響いてくるとても素敵な作品です。この作品に出演できて光栄に思います。全 6 話の愛の物語をお楽しみください。 全身全霊をかけて挑みたいと思います。

[202 号室「お姉様と私」]
沓掛龍一
私が事務所に所属して初めての舞台です。 緊張と不安が波の様に押し寄せて来ていて、稽古をする度に自分の未熟さを知り、先輩方やゲストの方々に 助けていただき本当に感謝しかありません。まだまだ経験も浅く、知識も浅い私ですが、今回の舞台「暗転セクロス」で一皮剥けた自分を精一杯出していきたいと思います。
桃菜
6 作品様々な愛と性のお話が繰り広げられます。 出逢いも、相性も、愛する人が居ることも沢山の奇跡と偶然の積み重ねで、私は全てを見終えると細胞レベ ルでこの世の色んなものが愛おしく思えてきます。6 つそれぞれの愛と性のカタチをご覧頂き、その後はお客様自身の7作品目の愛の物語を楽しんで頂ければ幸いです。
金田瀬奈
本日は御来場いただきありがとうございます。 今回はそれぞれの愛の形が様々な表現方法で演出されており、私は今回風俗嬢というなかなかやることのな い役をいただいたので、自分の持てる全てを舞台上で発揮し観てる方に何か伝わるように精一杯頑張りたい と思います。最後までお楽しみくださいませ。
[204 号室「人質」]
中村悠希
約二ヶ月間、試行錯誤を繰り返し、じっくりと考え練って作り上げられた作品がようやくお客様に観て頂けると 思うと嬉しくて堪りません。6話の全く異なったストーリーに加え、どの登場人物達も濃い背景があり、凄く魅力的です。 自分もユウという役の人生を濃密に生き抜き、お客様にこの素敵な物語をしっかりとお届けしたいと思います。
師富永奈
初めて台本を読んだとき、セックスという題材の中にこんなにも沢山の感情が入り混じっていることに気づき、驚 きと感動を覚えました。欲望だけではない、苦悩や葛藤、憎悪、安心、後悔、愛、希望。17 人の登場人物 たちの想いがお客様に届きますように。何かを残せますように。心を込めて生きます。ご来場お待ちしています。
加藤雅人
今の時代、愛とは、セックスとはということにあまり目を向けられない中で、ここまで真摯に、真剣に向き合ってい る作品もそうないと思います。その一端を担えることに喜びを感じつつ、誠意をもって皆様にお届けできるように演じます!
鶴巻星奈
204 号室で篠崎菜々子役を務めさせていただきます、鶴巻星奈です。
今回の暗転セクロス、オムニバスで全 6 話あるのですがどのお話もとても濃密で濃厚です。
沢山笑って愛について考えていただけたらなと思います。個人的にも初めての経験ばかりで体当たりで演じさせ
ていただいています!ぜひ劇場にてお待ちしております!
[203 号室「池田屋なの」]
谷口敏也
203 号室、土方歳三役の谷口敏也です。
今回は 6 話からなるオムニバス作品なので 1 話目から徐々に高ぶって重なり合っていく皆のバトンを受け取り、 次に繋げてくのが重要になります。演出の岡本貴也さんが緻密に計算した仕掛けが各話に散りばめられてい ます。2 回 3 回と見る度に新しい発見のある舞台となっております。
片山日南
舞台『暗転セクロス』再再演ということでこんなに愛されてきた作品に出演できること誠に光栄に思います。 なかなか普段見ることができないラブホテルの一室。それが 6 部屋もみられます!濃密な物語です。 是非覗きにきてください!
[205 号室「やっと会える」]
髙木聡一朗
205号室出演の高木聡一朗です。 僕自身、40代の役をやる事と言うか実年齢より上の役を演じる事が極端に少ないのでとても珍しい姿を観せ る事ができると思います。
座組み一同”愛”を考えて創り上げた大切な作品。楽しんで下さい。
脇春
今回、二ヶ月間みっちりと濃密に稽古をしてまいりました。性の話をする事に少し恥ずかしい自分がいましたが この二ヶ月、性について考えてきて愛も性も行き着く先は一緒なんじゃないかなと思いました。 観に来られたお客様に観劇後、性は恥ずかしい事じゃない、素晴らしい事なんだと感じて頂けたらなと思いま す。皆様、是非新宿村ライブにてお待ちしております!
[102 号室「夫婦×2」]
泉 紫太朗
舞台『暗転セクロス』の 6 話目。102 号室の「夫婦×2」にて響生を演じます、泉紫太朗です。 今回、演出家の岡本貴也さんと 2 ヶ月に渡り踊ったり、泣いたり、叫んだり、苦悩し、トライアンドエラーを繰り 返しながらも、皆で作り上げた作品です。ストレートプレイのこの作品が観て下さった方の心に刺さる作品であ れば幸いです。
須貝汐梨
102 号室、繭役の須貝汐梨です。暗転セク口スは愛の話です。愛ってなんだろうとずっとずっと考えてきました。 それぞれ違う形の愛があります。愛おしいもの、嬉しいもの、寂しいもの悲しいもの。全部ひっくるめて愛です。 そんな愛が、観終わった後に皆様の頭の片隅に少しでも何か残っていたら嬉しく思います。
永岡卓也
ここまで”セックス”について真正面から考えたことは初めてです。私が出演する物語では「何のために”セックス” をするのか」ということがキーポイントのお話。オムニバス作品ですのでいろいろな形の”愛”と”セックス”をテーマ にした物語を楽しんで頂けると思います。そして、観て頂いた方々に脚本からのメッセージを役者として伝えら れたと思っています!
白石花子
「暗転セクロス」という作品を初めて読んだ日からずっと愛について考える日々です。愛=セックスという考えは あまりに安易なのではないかと。もちろん愛あればこそのセックスだと思いますが、恋とか愛とか…感情の先にあ る、私達人間のどろっとした欲望を愛にのせて演じたい。そのために稽古してきました。 それが愛なのか、欲望なのか、何と呼ぶものなのかをぜひ劇場で観ていただきたいなと思います。

【公演概要】
日程・場所:
<東京>
2019年9月3日〜9月8日 新宿村 LIVE
<大阪>
2019年10月11日〜10月14日 インディペンデントシアター2nd
作・演出:岡本貴也
出演: 竹之内景樹、黒田愛香、沓掛龍一、桃菜、金田瀬奈、中村悠希、師富永奈、加藤雅人、鶴巻星奈、谷口敏也、片山日南、髙木聡一朗、脇春、泉紫太朗、須貝汐梨、永岡卓也、白石花子
※表記はオムニバス出演順。
お問い合わせ: ジェイズプロデュース TEL 03-3980-2415 (平日10時~18時)
公式HP:http://jspro.jp/anten/
撮影: 安藤美穂
文:Hiromi Koh