水戸芸術館開館 30周年記念事業 「宮崎駿の雑想ノート」より 『最貧前線』絶賛公演中!戦争末期、漁船が最前線に駆り出される、という現実。

『最貧前線』は、宮崎駿が模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」に1980~90年代に不定期に連載した『宮崎駿の雑想ノート』の中の一つの物語。これの舞台化、横浜で公演が始まり、9月12日に水戸芸術館で開幕、現在公演中。その後は世田谷パブリックシアターで10月に上演される。
わずか5ページしかない小さな作品ではあるが、この作品の中には多くのことが含まれている。戦時中に漁師が最前線に駆り出される、理不尽極まりない話で、漁師と軍人が同じ船に乗っているのだが、水と油のごとくな存在。そのデコボコ感をシリアスに、しかしユーモアも交えて描き出す。実際には駆り出された漁船のほとんどが消息不明になってしまっているそう。また戦争末期は働き手はほとんどが徴兵され、実際には老人と10代前半の少年しかいない、という現実。客観的に見ても「それでどうするつもり?」な状況だ。それでも行かねばならないのだ。
舞台上には船のセットがしつらえてあるのだが、セットは二分割され、動くが、波で揺れている感じは俳優陣が体の動きで表現する。ダンスのように決まったコリオもなく、フォーメーションで見せることもできない。かなり難易度が高い演技なだけに、ここは見所となるであろう。しかしハイテクを使うことも可能なこのご時世に、あえてアナログな手法、しかし、この作品には昨今の『ハイテク』は似合わない。人間模様、戦争中の最前線の海上、緊張感と不安が交錯する。その場の人間関係、生死を共にする、という連帯感。あらゆるものが詰まっている『最貧前線』、ともすれば忘れられてしまうこと、しかし、風化させてはならないという原作者の思いを受け止めての舞台、なかなか稀有な作品ではないだろうか。

内野聖陽

【公演概要】
水戸芸術館開館 30周年記念事業
「宮崎駿の雑想ノート」より
『最貧前線』
原作:宮崎駿『最貧前線』(「宮崎駿の雑想ノート」より)
脚本:井上桂(水戸芸術館ACM劇場芸術監督)
演出:一色隆司
出演:
内野聖陽、風間俊介、溝端淳平 / ベンガル
佐藤誓、加藤啓、蕨野友也、福山康平、浦上晟周、塩谷亮、前田旺志郎

【水戸公演】
2019年9月12日(木)〜15日(日)
水戸芸術館ACM劇場
【東京公演】
2019年10月5日(土)〜13日(日)
世田谷パブリックシアター

<ツアー日程>
【神奈川・横浜公演】
2019年8月27日(火)〜29日(木)
神奈川県立青少年センター
【愛知公演】
2019年9月6日(金)〜8日(日)
穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【長野公演】
2019年9月21日(土)、22日(日)
サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)
【新潟公演】
2019年9月28日(土)、29日(日)
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【兵庫公演】
2019年10月17日(木)〜20日(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

【神奈川・大和公演】
2019年10月26日(土)、27日(日)
大和市文化創造拠点 シリウス1階芸術文化ホールメインホール

公式HP:http://poorfront310acm.com/