Bunkamuraシアターコクーン芸術監督に 松尾スズキ就任!賑やかに就任式典!

Bunkamuraシアターコクーン芸術監督は1989年の本劇場開館時から1996年までを串田和美、1999年からは蜷川幸雄が務め、数多くの話題作を発表してきたが、2016年の蜷川逝去後、約3年間不在だったこのシアターコクーン芸術監督に演出家・劇作家である松尾スズキが就任することになった。
大人計画の主宰を務める松尾は2000年にミュージカル『キレイ―神様と待ち合わせした女―』で作・演出としてシアターコクーンに初登場。以後、2003年『ニンゲン御破産』、2008年『女教師は二度抱かれた』、2012年『ふくすけ』、2016年『ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン』、2018年『ニンゲン御破算』を、松尾ならではの独特な視点で描き、演劇界に大きな衝撃を与え多くの話題作を生み出してきており、松尾スズキ×シアターコクーンの代表作である『キレイ―神様と待ち合わせした女―』は2005年、2014年と再演を重ね、今年2019年12月にも4度目の上演を予定している。
また、作・演出のみならず、2006年『労働者M』(作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)や2014年『もっと泣いてよフラッパー』(作・演出:串田和美)に俳優としても出演し、存在感ある演技を魅せてきた。
2019年9月9日(月)に松尾スズキのBunkamuraシアターコクーン芸術監督就任会見をBunkamuraにて行われたが、就任となる松尾スズキの挨拶のほかに、12月上演舞台『キレイ―神様と待ち合わせした女―』より、阿部サダヲ、小池徹平、神木隆之介が駆け付け、盛大に芸術監督就任をお祝い。
当日の司会は皆川猿時。


司会者挨拶のあと、㈱東急文化村 代表取締役社長 中野哲夫の挨拶があり、Bunkamuraシアターコクーン芸術監督 松尾スズキ登壇し、挨拶を行い、ゲストが登壇し、お祝いの歌披露 (♪『俺よりバカがいた』(『キレイ-神様と待ち合わせした女-』より)。賑やかな会見であった様であった。

【松尾スズキコメント】
芸術監督をやらないか? そう、Bunkamuraの方に言われ、驚きとともに、ずいぶんと悩みました。シアターコクーン芸術監督という仕事の前には、串田和美、蜷川幸雄、という二人の巨匠の名前、その、とてつもない業績が切り立った山のように立ちはだかっております。その後に松尾スズキなどという軽薄な名前の、演劇人なのかコメディアンなのか、実体のフワフワした人間が続いてよいものか。良識ある演劇関係者らが鼻白む姿がありありと目に浮かびます。
そこで、私は、とある茶室にて、率直に聞くことにしました。
「私がコクーンの芸術監督になって私が得をすることってなんなのですか?」と。
Bunkamuraの方は、しばらく考えて、私の耳に唇を寄せて言いました。
「この渋谷の劇場が・・・松尾さんのための劇場になるんですよ」
そのとき、私の脳裏に故浅利慶太さんのお姿が浮かびました。
それは、自分の劇場を持ちに持った、薄いサングラスをかけた男の御影です。
尊敬する演劇人は誰か? と聞かれるたび、私は浅利さんの名前をあげていました。劇場を持つ。すべての演劇人の夢を徒手空拳の状態から実現した男が彼であるとすれば、その名が浮かぶのは当然の成り行きでしょう。
「・・・なるほど」
そしてまた、私は、もう一つの疑問をぶつけました。
「で、実際、串田さん、蜷川さんは、芸術監督としてどういうことをやっていたんですか?」
Bunkamuraの方は「うーん」と、しばし、口に手を当て、軽く目を閉じて言いました。
「人、それぞれ・・・ですね」
でしょうね。
そう、私は思いました。串田さん、蜷川さん、お二人の仕事ぶりを見るに、
「好きなようにやってらっしゃる」
としか、私には思えなかったからです。
これが公共の劇場ならそうはいかないでしょう。なにしろ、税金を使ってやる仕事です。役人を交えた煩雑な手続き、書類の作成、会議につぐ会議、そういう、私の最も苦手な作業が目に浮かびます。会議をしていると私は、家に帰りたくなるのです。しかし、シアターコクーンはBunkamuraという一企業の劇場。国民のために演劇がどうあるべきか、などということは、一切考えずに芝居がやれる。私は、常々、自分の「オリジナリティの追求」のためだけに芝居をやって来ました。今さらぶれたくない。いや、30年以上、ぶれずにいたからこそ、チケットが売れ、信用を生み、人材が集まり、スタアが生まれて来たのだと、そう信じています。串田さんも、蜷川さんも、キレイごとを抜きに、おのれの演劇に対する欲望を忠実につらぬき、その結果が評価に結びついたのだと思います。それはきっと、ひとまわりしてむしろ日本のために効いている。私は先輩たちのメンツにかけてそう思いたい。
キレイごとを嫌い続けていれば、自然にキレイな表現者になれるのです。
見たいものだけが集い、見たくないものは見ない自由を行使すればいい、演劇は、見せるものと見るものの関係が、非常に健康的な文化です。私は、Bunkamuraの予算を使い、稽古場を使い、劇場を使い、好きなスタッフと好きなプレイヤーを集め、先人のように、好き勝手にやってやろうと思います。在任中に、松尾のオリジナリティを大劇場に向けて絞り出し切ってやろうと思っています。出し切るためには、多少のわがままも言う。それが、選ばれたことに対する誠実さだと考えております。ダメでもともと、Bunkamuraの社員が何人かがっかりするだけじゃあないか。
打診を受けてから2年、具体的なアイデアは頭の中でひしめきあっています。アーティスティックなものから、あからさまなエンターテインメントまで。ひしめきあいすぎてここには簡単に書けません。
どうか、ご期待、そして、なにかと生温かい目で、よろしくお願いします。

【松尾スズキプロフィール】
1962年12月15日生まれ、福岡県出身。1988年に大人計画を旗揚げ、主宰として作・演出・出演を務めるほか、小説・エッセイ・シナリオ執筆、映画監督、俳優など多彩に活躍中。97年『ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~』で岸田國士戯曲賞受賞、01年『キレイ-神様と待ち合わせした女-』でゴールデンアロー賞・演劇賞を受賞。04年初の長編映画監督作『恋の門』がヴェネツィア国際映画祭に正式出品される。06年に小説『クワイエットルームにようこそ』が芥川賞候補となり、07年には自ら監督・脚本を務め映画化した。同年公開された映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』では脚本を担当し、日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。10年に『老人賭博』、18年に『もう「はい」としか言えない』が芥川賞候補となる。最近の主な作・演出作品には日本総合悲劇協会『不倫探偵~最期の過ち~』(15/出演も)『キャバレー』(17/演出)『業音』(17/出演も)など。監督作に映画『ジヌよさらば~かむろば村へ~』(15)など。本年は舞台『世界は一人』、映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』(声の出演)、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』、ドラマ『フルーツ宅配便』などに出演。また、自身が監督・脚本・主演する映画『108〜海馬五郎の復讐と冒険〜』が10月25日に公開を控えている。そして、正式部員は自身一人という“東京成人演劇部”を立ち上げ、その第一弾として安藤玉恵との二人芝居『命、ギガ長ス』を上演。
[Bunkamuraシアターコクーンでの作・演出・出演作品]
2000年『キレイ-神様と待ち合わせした女-』
2003年『ニンゲン御破産』
2008年『女教師は二度抱かれた』
2005年『キレイ-神様と待ち合わせした女-』
[出演のみ]
2006年『労働者M』(作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)
2014年『もっと泣いてよフラッパー』(作・演出:串田和美)

【松尾スズキ Bunkamuraシアターコクーン芸術監督就任第一弾作品!】
Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019+大人計画 『キレイ-神様と待ち合わせした女-』
公演日程:
[東京]2019年12月4日(水)~12月29日(日)Bunkamuraシアターコクーン
[福岡]2020年1月13日(月・祝)~1月19日(日)博多座
[大阪]2020年1月25日(土)~2月2日(日)フェスティバルホール
作・演出:松尾スズキ
音楽:伊藤ヨタロウ
出演:生田絵梨花、神木隆之介、小池徹平、鈴木杏、皆川猿時、村杉蝉之介、荒川良々、
伊勢志摩、猫背椿、宮崎吐夢、近藤公園、乾直樹、香月彩里、
伊藤ヨタロウ、片岡正二郎、家納ジュンコ、岩井秀人、橋本じゅん、阿部サダヲ、麻生久美子

齋藤桐人、藍実成、佐山太一、高瀬育海、西田健二、畑中実、深堀景介、藤岡義樹、森山晶之、りんたろう、
五島百花、エリザベス・マリー、中根百合香、飯嶋あやめ、植村理乃、古清水愛奈、原梓
企画・製作:Bunkamura 大人計画
公演に関するお問合せ:Bunkamura 03-3477-3244(10:00~19:00) https://www.bunkamura.co.jp
大人計画 http://otonakeikaku.jp

【Bunkamuraシアターコクーン主催公演ラインナップ】
2019年  12月 松尾スズキ作・演出『キレイ-神様と待ち合わせした女-』 東京公演
2020年1・2月 福岡・大阪公演あり
2020年   2月 作・演出:鄭義信(新作)
5月 作:松尾スズキ 演出:ノゾエ征爾
6月 作・演出:赤堀雅秋(新作)
8・9月 DISCOVER WORLD THEATREシリーズ
10月 作・演出:松尾スズキ(新作)
12月 作・演出:三浦大輔(新作)
公式HP:https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/