柚希礼音主演 A New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」私が私らしく生きていくためには・・・・・・「あなたの人生はあなただけのもの」。

発表当初から大きな話題を呼んだA New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」が開幕、好評上演中だ。ブロードウェイの新進気鋭作曲家コンビ、クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニー、日本から日本版 脚本・演出の板垣恭一をはじめとする豪華クリエイティブ・チームが集結し、日米共作で新作ミュージカルを制作するプロジェクト、つまり、日本発とも言えるし、アメリカ発、とも言える、新しい試みなのである。主演は数々の作品で主演をしている柚希礼音、その他実力のあるキャストが集結した。
オーバーチュアーのあと、この作品の語り部に当たるキャラクター・講演会場にオールド・ルーシー(剣幸)が登場、ここで簡単に登場するキャラクターの紹介も。そして「ローウェル・オウファリング」の編集者のハリエット(ソニン)が登場、それからこの物語の主人公であるサラ(柚希礼音)が登場、多くのファクトリーガールが次々と舞台上に。このオーバチュアーから、ずっと音楽が途切れずに滑らかに。ミュージカルの王道をいく構成だ。そしてサラは工場へ出勤するのだが、これが想像以上に厳しい、過酷な場所だった。力を感じる楽曲「機械のように」、直線的なパワフルなダンスで、彼女たちが生活するために工場で働く姿を象徴的に示すナンバーだ。

そしていつの時代も女の子の関心事は・・・・・おしゃれ。休日は彼女たちにとってつかの間のほっとできる時間。買い物に行ったり、また玉の輿に乗る夢を語り合ったりする。一方の工場、アボット(原田優一)とスクーラー(戸井勝海)が登場、アボットは工場長、スクーラーはマサチューセッツマサチューセッツ州の議会議員、「ローウェル・オウファリング」の発行人だが出世欲はかなりのもの。サラは13時間も働かされる工場に疑問を持ち始める。体を壊して辞めていく者もいる。経営する側は「辞められても代わりはいくらでもいる」と言わんばかりの態度。この不遜なキャラクターを原田優一が嫌味な雰囲気で演じるので、ここはわかりやすく、観客も彼女たちが置かれた状況はすぐにわかる。

寮生活をするファクトリーガールズたち。ここの寮母であるラーコム夫人(剣幸/2役)は彼女たちに理解と共感を示す。自分の半生を振り返り「あなたの人生はあなただけのもの」と歌う。現代でも自分の人生を生きていないと感じる人々は多い。心が痛み、共感できる楽曲だ。
年頃の女の子ばかりのファクトリーガールたち、等身大の夢もある。しかし、現実は・・・・・厳しいのだ。懸命にその瞬間を生きる、その積み重ね。そこから彼女たちは気づいていく、何かが違う、と。一方のハリエットは賢く、考え方も先端、サラに文才があることを見抜き、サラは文章を書くことで新たな自分を見出す。そして家族への仕送りのために工場にきたのだが、彼女自身、様々なことに気づき、周囲の理解も得て行動を起こす・・・・そしてその結果は・・・・・・・。

サラとハリエットは友情で結ばれたが、立場が異なり、『同じ方向』を向いているにもかかわらず、すれ違っていく。そのえも言えぬ悲しみ、芸達者な柚希礼音とソニンがしっかりと演じている。ここは重要なポイントとなる関係性。女性問題、そして皆、貧しい、持てる者と持てざる者、ハリエットは名声を得るが、サラはシェイマス(平野良)の助言もあり、ペンネームを使って自分の意見や考えを発表する。この違いは立場の違い、それが現実。工場で働く女性たちは皆、貧乏ゆえに工場で働いている。そんな彼女たちの足元を見ながら恫喝する雇用者、立場の弱い人間から搾取することに対して罪悪感もなく、『そういうものだ』と疑問を持たないアボットに代表される立場の人々。しかし、そこに立ち向かう勇気、サラが歌う「剣と盾」など珠玉のナンバーで綴る。

時代は少しずつではあるが動いていく。時代背景であるが、19世紀後半から20世紀前半にアメリカで女性解放運動が起こる。この物語の時代も19世紀半ば、サラのその後は、察しがつくが、彼女らの行動は時代が後押し、自立意識や職業意識が芽生えてくる。オールド・ルーシーは清水くるみが演じるルーシーの40年後の姿、そして時代は進み、1960年後半にアメリカで再度始まった女性解放運動は他の先進国にも広まっていき、女性の雇用や産休に対しての法律が作られるようになり、今ではアメリカで男女差別を含む様々な差別が違法だとされて厳しく取り締まられている。その先鞭がサラやハリエット、ルーシー達ということになる。
このミュージカルには実に多くのメッセージが含まれている。性差別、貧困、自分らしく生きること、そしてアボットやスクーラーに代表される人々、特に男性の女性に対する偏見、被雇用者をモノのごとくに扱う態度、しかし、21世紀にもなっておよそ20年が経とうとしているにもかかわらず、まだまだそういったことは根強く存在する。エンターテイメント要素満載でありながら、硬派な作品、初日はスタンディング・オヴェーション、こういった作品は何度でも上演され、多くの人々に観てもらいたいもの、公演は、東京は10月9日まで、大阪は10月25日から27日まで、当日券は毎日販売しているとのこと。

【公演概要】
〈クリエイティブ スタッフ〉
音楽/詞:クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニー
日本版脚本・演出:板垣恭一
〈出演〉
柚希礼音 ソニン 実咲凜音 清水くるみ 石田ニコル
原田優一 平野 良 猪塚健太 青野紗穂 谷口ゆうな 能條愛未 / 戸井勝海 剣 幸
島ゆいか 安福毅 当銀大輔 丸山泰右 大音智海 上條駿 矢内康洋 酒井翔子 田口恵那 Sarry 杉山真梨佳 コリ伽路 井上花菜
<東京公演>
2019年9月25日(水)~10月9日(水) TBS赤坂ACTシアター
<大阪公演>
2019 年 10 月 25 日(金)~10 月 27 日(日) 梅田芸術劇場メインホール
【大阪公演・チケット料金】
S席12,500円 / A席10,000円 / B席8,500円 (税込・全席指定)
公演に関するお問い合わせ:
アミューズ チアリングハウス 03-5457-3476(祝日を除く月~金 15:00~18:30)
取り扱いプレイガイドに関する詳細は下記オフィシャルサイトをご確認ください。
公演オフィシャルサイト:http://musical-fg.com
公演オフィシャルツイッター :@factorygirlsjp

取材:Hiromi Koh