「可愛い」ことが感動に直結していく 舞台けものフレンズ「JAPARI STAGE!」 ~おおきなみみとちいさなきせき~

世界中の野生動物が集まる不思議な超巨大動物園ジャパリパークを舞台に、サンドスターなる不思議なエネルギー体の力で美少女的に擬人化された動物たち=フレンズの日常を可愛らしく描く『けものフレンズ』は、これまでゲームアプリをはじめ、漫画やテレビアニメ、ラジオ、小説などさまざまなメディア展開が図られてきている。

その中で演劇方面のプロジェクトとしては、2017年に『舞台「けものフレンズ」』が、18年に『舞台「けものフレンズ」2~ゆきふるよるのけものたち」がこれまで上演されている(19年7月には舞台やアニメ、ゲーム版のフレンズが時空を超えて1日限りの夢の共演を果たした『けものPARTY』なども上演)。

そして9月27日から10月6日まで品川プリンスホテルクラブeXにて最新作『舞台けものフレンズ「JAPARI STAGE!」~おおきなみみとちいさなきせき~』が開幕となった。

今回は「史上最大20フレンズがどったんばったん大冒険!」といったキャッチフレーズのもと、総勢20名の若手美少女俳優たちが舞台狭しと愛らしくもキラキラと輝くパフォーマンスを繰り広げていく。

脚本・演出は1&2作に引き続き、村上大樹が担当。

初回直前の27日14時から行われた公開ゲネプロを鑑賞させていただいたが、先に結論から申し上げると上記のキャッチフレーズに偽りなく、それ以上のサプライズの数々が観る者をほのぼのした感動へ導く作りになっていることに感銘を受けた。

 

まずはオープニングとして今回の主人公となるオオミミギツネ(伊藤理々杏)を中心に、総勢20名のフレンズによる歌と踊りが、舞台の一部が客席に向かって突き出た“張り出し舞台”の特性を活かしながら華麗に繰り出されていくのだが、その数の多さに圧倒されるとともに、自分の席の位置からでは後姿しか見えない反対側でパフォーマンスしているお気に入りフレンズたちをも見たくて仕方がないという欲求に駆られてしまう(東に西に南と、日替わりで異なる位置のチケットを購入したがるファンの気持ちがよくわかる!)。

その後、ドラマとしての演劇が始まるが、その内容は、オオタカ(宮本奈津美)をボスとする空のフレンズたち(つまりは鳥類)が「私たちがジャパリパークを仕切る!」と宣言し、陸のフレンズたちと対立。

その一方で、これまでパーク内のシステムを維持してきた「おひさまシステム」に障害が発生。かって「ヒト」が作ったというこのシステムを治すためには、山の上の止まったままの風車を動かすしかないということがわかるのだが……。

実は今回の作品、ネタばれ厳禁の要素が多々あり、これ以上の筋は明かさないほうが賢明なのだが、「ジャパリパークの謎」を大きな基軸としながらユニークな展開が図られていくことくらいは記しておいてもいいだろう。

正直、冒頭のパフォーマンスの後も次々と入れ替わり立ち代わりに現れてはストーリーを織り成していくフレンズ個々のキャラクターを認識しつつ、ブタ(田崎礼奈)がソロで登場してのアドリブも含むパフォーマンスを披露していくあたりでこちらもスッと平静を取り戻し、以後は作品世界に容易に没入できるようになっていく(それにしても、こんなにブタさんを見ていて胸がキュンとなったのは映画『ベイブ』以来だ)。

また面白いもので、ひとりのキャラが把握できるとそこから数珠つながりで次々と他のフレンズも認識できるようになっていき、絶妙のハラグロ掛け合いを魅せるタヌキ(加藤里保菜/第1作から出演)とキンシコウ(山本文香)、関西弁も楽しいクロヒョウ(稲村梓)、空を飛べないヒクイドリ(脇あかり)、どの派閥にも属さないハブ(本西彩希帆)など今回ならではのお気に入りキャラが続々と増えていくと同時に、今回の主軸としてさりげなくもメンバーをまとめていくオオカミキツネ=伊藤理々杏の健気さが作品そのものの健気さと直結していることまで納得できていく。

やがてドラマはシベリアン・ハスキー(小槙まこ)の過去をめぐって急展開していき、以後、大きく印象に残る好演を示してくれるのが森田涼花なのだが……これ以上はもうネタバレ厳禁。じかに舞台で確かめられたし!

演劇パートが終わってからのフィナーレを飾る出演者全員による壮麗なライヴとカーテンコールの段に至っては、初観劇故の冒頭でのアレヨアレヨ感はどこへやら、すっかりフレンズたちに魅了され、早くも「次はステージ南側の席から見てみたい!」と欲している自分がいる(今回の席は東側だったもので)。

正直なところ、可愛くもキャピキャピした楽しい舞台であることくらいまでは事前に予想していたものの、その要素ゆえに感動にまで結びつくといったところまでは思いもよらなかったのだが、冷静に振り返ってみると、やはりそれは脚本の良さであり、演出の巧みさであり、何よりもそれらを受けての若手キャストそれぞれの一所懸命さが初々しいエネルギーとして純粋に発露されていたからであろう。

いずれにしても、可愛いことは良いものである。

[オオミミギツネ役 伊藤理々杏]
舞台「けものフレンズ」に初めて参加するので、すごく緊張してはいるんですが、他のフレンズたちと力を合わせて精いっぱい頑張 っていきたいと思います。
今回 20 フレンズいるということで、みんなすごく仲が良くて、楽しくて明るい現場で居心地が良くて、演じていて思い切ってできる なという場所でした。本番がすごく楽しみで、お客様がどんな反応をしてくれるのか、今からわくわくしています。
20 フレンズそれぞれの個性がピックアップされて、キャラクターが立っていると思うので、皆さん注目してほしいなと思います。[オカピ役 野本ほたる]
「けものフレンズ」の舞台 3 作品目ということで、今までの舞台の良さを残しつつ、全く新しい作品になっていると思いますので、 皆様楽しみにしていてください!宜しくお願いします!
今回、過去最多の 20 フレンズが登場するので、舞台上がぎゅうぎゅう詰めで、観てほしいところはたくさんあります!
1 回でももちろん楽しめると思いますが、2 回 3 回と観ていただくと 20 フレンズ全員を堪能できるかと思いますので、 ぜひ劇場に通っていただきたいです!
[タヌキ役 加藤里保菜]
今回、3 作品目の舞台「けものフレンズ」の出演になります。新しいフレンズも増えましたが、負けないパワーで頑張りたいと思い ます。宜しくお願いします!
20 フレンズということで、それぞれ今までいたフレンズたちとの関係性がどうなっていくのか、新しいフレンズが入ってどう変わってい くのか、さらに、今回『ヒト』が出てくるということで、フレンズとヒトの関わりがどんなふうになっていくのか、ぜひ劇場で観ていただけ ればと思います。
[クロヒョウ役 稲村 梓]
今回、10 代や 20 歳など、若者のフレンズが多くて、そこよりは私はちょっとお姉さんフレンズなんですが、 フレッシュにかわいらしく!をモットーに最後まで頑張りたいと思いますので、温かい目で見ていただけたらと思います。 「けものフレンズ」が大好きな方にはすごくびっくりするような話になっていて、新しいものになっていると思います。 「けものフレンズ」を知らない方でも楽しめる内容になっているので、たくさんの方に観ていただければと思います
[ヒツジ役 西川美咲]
今回も“ひかるぼー”を振るタイミングがあるので、ぜひぜひ、“ひかるぼー”を振って楽しんでもらえたらと思います! たくさんのかわいいキャラクターが出てくるので、「けものフレンズ」ならではの世界観というか、温かくて優しくて、観ている方がにこ やかになれるような舞台だと思います。例えば、仕事行くの嫌だなーという気持ちで観に来ても、帰るころには、明日から頑張ろ う!っていう気持ちになれる楽しい作品になっていると思うので、是非観に来ていただければと思います。
[ホワイトタイガー役 野口真緒]
今回は第 3 弾ということで、今まで舞台を観てきた人、「けものフレンズ」を知っている人はすごくびっくりすると思います! とにかく観に来ていただけたら分かると思います。楽しい作品ですので、ぜひ観に来てください! 稽古中に涙が出るくらい感動しちゃったんですが、今までの舞台に出てきたキャラクターの変化が感じられたり、新しいフレンズも とてもキャラが濃くて、歌もダンスも一生懸命頑張っていて、みんなで頑張って作り上げている舞台なので、1 度と言わず、何回 もいろんな角度から楽しんでいただけたらと思います。


<ストーリー>
ここはジャパリパーク。サンドスターの不思議な力で生まれたフレンズたちは、姿かたちは違ってもみんな仲良しです。今は、サバンナのフレンズが中心となって『ジャパリアカデミー』を作ろうとしていました。パークの謎を解き明かしていくという新しい『しせつ』の誕生に、みんなワクワク。ところが、最近現れた空のフレンズたちが、「私たちがパーク を仕切る!」と宣言。なんと陸のフレンズと空のフレンズが、リーダーの座を巡って対立することに…!不穏な空気 を察知した新入りのオオミミギツネは、「パフォーマンス対決で決めよう」と提案します。
同じ頃、パーク内には様々な不具合が生じていました。かつて『ヒト』が作った『おひさまシステム』に障害が出て いたのです。新しいエネルギーを生み出すには、山の上にある、止まったままの風車を動かすしかありません。対立 が続くフレンズたちは、力を合わせてパークを守ることができるのでしょうか…?

【公演概要】
舞台けものフレンズ「JAPARI STAGE!」~おおきなみみとちいさなきせき~
日程・場所:2019 年 9 月 27 日(金)~10 月 6 日(日) 品川プリンスホテル クラブ eX
原作:けものフレンズプロジェクト
脚本・演出:村上大樹
キャスト:
オオミミギツネ役:伊藤理々杏

オカピ:野本ほたる
タヌキ:加藤里保菜
クロヒョウ:稲村梓
ヒツジ:西川美咲
ホワイトタイガー:野口真緒

ケツァール:森田涼花
アフリカゾウ:長谷川里桃
シベリアンハスキー:小槙まこ
ハブ:本西彩希帆
ハシブトガラス:都築里佳
ヒクイドリ:脇あかり
アムールトラ:藤山由依
キンシコウ:山本文香
ブタ:田崎礼奈
ハシビロコウ:河上英里子
ヘビクイワシ:タマキ
アミメキリン:御林杏夏
モモイロペリカン:日向みゆ

オオタカ:宮本奈津美

主催:ネルケプランニング
公演に関するお問い合わせ:ネルケプランニング TEL:03-3715-5624(平日10:00~18:00)
舞台公式サイト:http://www.nelke.co.jp/stage/kemono-friends3/
舞台公式 :Twitter】@kemono_butai
©けものフレンズプロジェクト 2S
取材・文(レポ):増當竜也