Studio Life「はみだしっ子 ~White Labyrinths~」吹雪の中、心の傷、闇、トラウマそして生と死、かすかな希望と光。

スタジオライフが三原順原作「はみだしっ子」の舞台化に挑戦、今回で3回目になる。セットは初演時と変わらず。そしてあの4人が舞台に登場する。4人は兄弟のように見えるが、実は赤の他人だ。ひょんなことで知り合った4人が行動をともにする。しかも4人、それぞれ複雑な事情を抱えている。4人の中で一番年上のグレアムは3人を温かく見守っている。右目を失明している。アンジーは小児麻痺で足が悪かったが、今は努力の甲斐あって松葉杖は使っていない。サーニンは失語症であった、馬と鳥が大好き、一番年下のマックスは父親に虐待されているところをグレアムたちに拾われた。首を絞められることと拳銃がトラウマ。しかし4人一緒にいれば!「あの山のてっぺんまでいくんだよね!!」と無邪気なマックス。時々、グレアムの語り部のような独白が挿入され、物語がよくわからなくてもここでわかるようになっている。
今回描かれるところは雪山で遭難するエピソードだ。雪がひどく、バスは引き返そうとするも一般客を装った男・ジョイにとっては引き返されては困る。というのは彼は殺人犯ですでに銀行を襲った際に二人射殺しているからだ。運転手を脅迫し、引き返させないようにするが、それが悲劇の始まりだった。バスは案の定、遭難し、運転手は死亡、その他の乗客は命からがらバスを降りた。その乗客の中に4人の知り合いであるアルフィーがいた。喜ぶ4人、実は偶然ではなく、彼は4人を追ってバスに乗り込んだのであった。

CAPチーム
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この雪山での遭難、4人が抱えているトラウマや闇が吹き出る、そして思わぬ展開になる。また、偶然乗り合わせたバスの乗客たちも様々な事情や悩みがあった。閉ざされた状況でそれらが明るみに出る。4人だけでなく、彼らの周辺の『大人たち』が抱えている闇や不安も心が痛い。落ち目の歌手のシャーリーとそのマネージャーのギィ、2人の関係性、ギィの想いとシャーリーの不安定さは、やるせない。そして彼ら4人はいやおうなしに『死』と向き合うことになってしまう。ジョイは、バス乗客のグループから立ち去る。「待ってよ!」、マックスは彼を追う、そしてマックスを心配して追ってきたサーニン・アンジーの目の前でジョイは拳銃自殺してしまうのだった。拳銃がトラウマなマックスはもちろん、サーニンやアンジーにとっても衝撃的な場面だ。そこから『拳銃』を巡って事態が転がり始めていく。

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原作を読んでいれば、展開もわかるのだが、それでも心が痛い。吹雪のような試練が彼らに襲いかかる。4人はアルフィーや、後からやってきたシドニーに助けられつつ、どうにかこの困難を彼らなりに乗り越えていく。アンジーが「希望があれば、生きていける!」という。どんなに辛いことがあっても、時には死を突きつけられようとも、ほんの少しの希望があれば。ラストシーンは再び4人が集まり、寄り添う。舞台版スタッフ・キャストの作品に対する想いが伝わるシーン。空は限りなく広がる。空を見上げれば希望も見える、4人と、そして他の登場人物も空を見上げる。美しいラストシーンであった。

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<三原順:プロフィール>
1952年10月7日生まれ。北海道札幌市出身。1973年「ぼくらのお見合い」(別冊マーガレット3月号)でデビュー。1975年 から7年間にわたり「花とゆめ」で連載された「はみだしっ子」シリーズで読者の熱烈な支持を得る。人間の内面世界の描写 とストーリーの構成力が高く評価される一方、雑誌口絵や付録などの愛らしいキャラクター・イラストでも絶大な人気を集 めた。1995年3月20日、病気のために急逝。享年四十二。
<『はみだしっ子』について>
1975年から1981年にかけて「花とゆめ」(白泉社)誌上にて連載された三原順の漫画作品。四人の少年たちの心の彷徨を繊細に描いた同作品は、魅力的なキャラクターと劇的なストーリー展開で多くの読者を虜にし、作者亡き後も新しい読者を巻 き込みながら熱烈な支持を得つづけている稀有な作品。1993年に愛蔵版全 5巻が刊行(2019年現在絶版)、1996年以降は白 泉社文庫として全6巻が再版を繰り返している。

<三原順 没後25周年・豪華画集刊行決定!>
「All Color Works」
2020年3月19日発売予定!
数量限定!書店へGO!
雑誌・単行本で発表された全てのカラーイラストを掲載予定!
詳しくは・・・・・。
公式HP:https://www.hakusensha.co.jp/hbstation/mihara/

【公演概要】
劇団スタジオライフ公演『はみだしっ子~White Labyrinths~』
日程・場所:2020年1月8日(水)~19日(日) 新宿シアターサンモール
原作:三原順
脚本・演出 倉田淳
出演:劇団スタジオライフ
公式HP:http://www.studio-life.com/
(C) 三原順/白泉社

取材・文:Hiromi Koh