生駒里奈主演 舞台『かがみの孤城』優しさと慈愛、人は思いやりで生きる

本屋大賞など8冠を受賞した辻村深月原作『かがみの孤城』を元乃木坂46生駒里奈さん主演で舞台化、8月28日、初日が無事に開幕した。東京公演のあとは大阪、愛知公演が予定されており、配信も決まっている。
「なんども同じ夢を見る」とこの物語のヒロイン・安西こころ(生駒里奈)がつぶやく。

それから、この物語の登場人物が次々と登場する。「その時、俺は中学1年だった」という少年・リオン(溝口琢矢)。いよいよ始まる、という出だしだ。

中学生の安西こころ、同級生に「ぽっちで可哀想」と言われる。『ぽっち』、もちろん、一人ぽっちという意味だ。入学早々にいじめられ、ついには登校時間になると体が不調になり、自室から出られなくなってしまった。

 

 

そんな時、自室の鏡が!光る!なんと、鏡の中に!照明でここはファンタジックに!まさに演劇的な瞬間!そこには赤いワンピースを着た城の管理人「オオカミさま」、そしてこころと近い年齢の中学生がいた。城はまるでおとぎ話に出てくるような雰囲気、この「オオカミさま」はこの城の奥には誰も入れない『願いの部屋』があり、鍵を見つけた一人だけがそこに入ることができ、願いを叶えることができるという。

こころも入れて7人の少年少女たち、彼らはなんのためにここにいるのか、運命は?期間はこの日から三月三十日までで、願いを叶えるか期間を過ぎると、もうこの城には入れない、謎が謎を呼ぶ。これがだいたいの流れだ。
7人の中学生、共通点は”生きにくさ”を抱えていること。それは様々だが、似た境遇者同士、心が近づいていく。淡い気持ちを寄せる者もいる。思春期の思い出が蘇る観客もいるであろう。そして願いがかなうと記憶を失うと「オオカミさま」が言う。

ファンタジーであるが、不登校やいじめなどは身近な問題だ。そして話しているうちに多少食い違いがあるものの互いが近い場所に暮らしていることを実感する。謎解き的なミステリー要素もありつつもリアルな感情と思い、悩み、原作の力がよくわかる。時間、これが鍵。原作を読んで観劇する場合は結末、オチ、「オオカミさま」って?というのは先刻承知であるが、それが舞台上でどう表現されているのか、またクローズアップされている部分や省略されている箇所などをなぞっていくのは一興、そして原作を読んでいない観客は、原作を読んで、観劇した記憶をなぞってみると面白い。コミックやアニメはビジュアルが確固たるものとして存在しているが、小説は読者の脳内にそれぞれのビジュアルが存在する。舞台にすることによって具現化するが、そこは演出・脚本の手腕、成井豊が期待を裏切らない形で舞台上に世界観を提示、演出家の優しさと思いやりが全面に溢れている。

ラスト近く、様々な”謎”が明かされる。「オオカミさま」の正体、7人のこと、そして”時間”。ヒロイン・こころは小さいかもしれないが、貴重な1歩を踏み出す決意をする。物語の語り部が場面ごとに変わるのは演劇的なマジック。「そういうことだったのか」と膝を打ちたくなる結末。生駒里奈はじめ、キャスト全員久しぶりな本格的舞台とあって生き生きと演じていたのが印象的。キャストがセットも動かし、アナログ的な表現が生きる舞台。人は弱い生き物、優しさと慈愛、未来への光、そんなことに思いを馳せることのできる作品だ。
なお、配信もあるので、劇場で観劇できないファンはここで。また劇場で観劇しても配信で違った景色が見えるかもしれない、このクライシスで”新しい生活様式”が求められているが、そこからもっと新しいものが見えるかもしれない、この「かがみの孤城」のように。

<あらすじ>
入学早々、同級生から嫌がらせを受け、家に閉じこもる生活を送っていた中学1年生の安西こころは、 ある日自分の部屋の鏡がまばゆい光を発していることに気づく。 恐る恐る鏡に手を触れた瞬間、こころは見知れぬ城がそびえ立つ異世界に引き込まれてしまう。 「オオカミさま」と呼ばれる城の管理人と、彼女に召還された7人の中学生が過ごす世界。 そこでは「願いの鍵」を見つけた者が、何でも望みを叶えられるという。 果たして「願いの鍵」は見つかるのか。7人が城に集められた驚くべき理由とは。
<キャスト>
生駒里奈 溝口琢矢 野田裕貴(梅棒) 前田航基 原田樹里 河内美里 渡邊安理 多田直人 木村玲衣 石森美咲 稲田ひかる 澤田美紀
木津つばさ降板により、代役は山本沙羅が務める。

<公演概要>
日程・会場
[東京公演]
2020年8月28日〜9月6日 サンシャイン劇場
[大阪公演]
2020年9月18日〜9月20日 サンケイホールブリーゼ
[愛知公演]
2020年9月22日 刈谷市総合文化センター 大ホール
■生配信公演概要
【配信公演】
2020年9月6日(日)13:00 東京千秋楽公演
【配信形式】ライブ配信
【配信期間】 2020年9月6日(日)13:00~9月6日(日)23:59まで
【販売価格】3,500円(税込)
【予約販売期間】
受付中~2020年9月6日(日)21:59
【チケット受付URL】 https://w.pia.jp/t/kagaminokojo/
■ディレイ配信公演概要
【配信公演】 2020年8月29日(土)18:00
【配信形式】 ディレイ配信 ※ディレイ配信とは、収録した映像を後日期間限定で視聴出来るサービスです。
【配信期間】
2020年9月1日(火) 19:30~9月2日(水)02:30まで
【販売価格】3,000円(税込)
【予約販売期間】
受付中~2020年9月1日(火)23:59まで
【チケット受付URL】 https://w.pia.jp/t/kagaminokojo/
※配信開始30分前から配信ページに入場可能となります。
※詳しいご視聴方法、推奨環境、お問い合わせ等につきましては、
PIA LIVE STREAM(https://t.pia.jp/pia/events/pialivestream/)のページをご覧ください。
[キャスト]
生駒里奈 溝口琢矢 野田裕貴(梅棒) 前田航基 原田樹里 河内美里 渡邊安理 多田直人 木村玲衣 石森美咲 稲田ひかる 澤田美紀
木津つばさ降板により、代役は山本沙羅が務める。
[スタッフ]
原作:辻村深月「かがみの孤城」(ポプラ社)
脚本・演出:成井豊
美術:田中敏恵 照明:加藤直子 音響:早川毅 振付:川崎悦子 衣裳:黒羽あや子 ヘアメイク:山本成栄 演出助手:藤嶋恵 舞台監督:村岡普 衣装協力:学生服コード服装
音楽:For Tracy Hyde
宣伝美術:デザイン太陽と雲 宣伝写真:山岸和人 宣伝ヘアメイク:山本成栄 宣伝衣裳:黒羽あや子 宣伝イラスト:禅之助
制作:畑中あゆみ 阿部りん 今村圭佑
プロデューサー:仲村和生
企画協力:ポプラ社
企画・製作:NAPPOS UNITED
主催:NAPPOS UNITED ぴあ
公式HP:http://napposunited.com/kagaminokojo/
撮影:すわき理恵(MAXPHOTO)
文:高 浩美