『舞台版 誰ガ為のアルケミスト』~宛名ノナイ光~ タガステ初の無観客“VR&2D 全日LIVE配信”

『舞台版 誰ガ為のアルケミスト』~宛名ノナイ光~ 、“VR&2D 全日LIVE配信”、ゴーグルを装着して観劇。一言でいえば、『観客の立ち位置が変わる』、つまり、客席に座って観ると、勢いは感じたり、感情が揺さぶられることの一度や二度は体験したことはあるだろう。ところがVRとなると映像には違いないのだが、自分がその場(世界)に存在して、登場人物たちの生き様や息遣いを感じることができる、ここがライブビューイングのような映像配信との大きな違いだ。また、今回は”配信”ありき、なので舞台もそれに対応する作りになっており、仮に劇場の空いている席に座って観ること自体はできたとしても、実は舞台の半分ぐらいしか観ることはできない。セットの向こう側での芝居は配信でしか観られないのだ。


まずは、キャストが視聴の仕方を教えてくれるので、始まる前に装着、アングルの切り替え方を覚える。そして時間になり、始まった。しょっぱなから衝撃的なシーン!ザインが!これがVRだと思わず助けに行きたくなる感じになるが、ヴァーチャル!これがVRの感触だ。そして場面が書斎でオーティマ(遊馬晃祐)が本を整理している(散らかしているようにも見えるが(笑))、そこへカノン(花影香音)が元気よく入ってくる。オーティマはザインの手記をカノンに手渡す。ここからこの”手記”の話、ザインの物語が始まる。

 

ザインの考え、感情、そして信念が、彼の生き様から見えてくる。聖教騎士団のトップであるロードマスター、世界を導く光であり、絶対正義を導く者、まっすぐな性格、揺るがない信念の持ち主であるが、手記から”血の通った”ザインが見えてくる。そして、彼が出会った女性、愛情、しかし観客は知っている、ザインがどうなるのか、わかっていても涙、な展開。しかし、ハードなシーンやアクションばかりではない。ザインとオーティマのちょっと笑えるやり取りや、カヤ、ソル、ワギナオ、新しいキャラクターの活躍も見逃せない。ラストはもちろんアクションに次ぐアクション、これがVRだと刀が自分に迫ってくるように感じるので、迫力が半端ない。

またキャストがカメラを意識した芝居もしてくれるが、これがVRの効果で自分がその場、世界に透明人間のように存在できる。この「タガタメ」の世界が、なんだか手の届きそうなところにある感触、よりキャラクターたちが身近になる。恋愛シーンはドキドキ、すぐそこで!なので、胸キュン以上な感触。VRカメラを意識した見せ方(カメラ目線も!)で、これをもしも普通の舞台演出にするなら、もっと広い劇場で盆など様々な舞台機構が必要になるかもしれないが、観客が手元でスイッチしてアングルを変えているので、リアルに大掛かりな仕掛けは必要なくなってくる。舞台を楽しむ、しかも普通の映像ではなく、VR、自宅が劇場になる、没入感も臨場感もかなりのもの。飲食はもちろん自由だ。ゴーグルの中は”劇場”であり”作品世界”。

これを装着して演劇を観る、そしてどこかで同時に誰かがどこかでVRで同じ作品を視聴、お互いに姿も見えず、他の観客のリアクションもわからないが、妙な連体感も感じる。同じ空間で同じ芝居を観て作品を共有する、これが演劇たる所以で、演劇の面白いところだ。この『同じ空間で』観ていないが空気感は共有できる。そういう意味において21世紀だなと思う。演劇の大きな変貌、これから先、配信は一般的になっていくであろう。VRはある意味、演劇と相性がいいかもしれない。リアル、リアリティー、ライブ、VRを使った配信とVRありきの演出は、まだ未知数な可能性を秘めている。カメラの台数、位置、これだけで見え方は変わり、感じ方も変わる。ラスト近くの『受け継がれた思いを成し遂げる』のセリフ、演劇もまた、脈々と続いてきたジャンル、配信によって劇場で見る観客数は席の数と公演数で決まり、それ以上はありえない。それを配信は超えてしまった。関心を持ってても実際には劇場に行かない層がある。しかし、”自分が好きな原作の舞台を自宅で観劇”、かつては考えられなかったこと、演劇の裾野を広げるいいきっかけになっていくような気がする。

<キャスト>
ザイン役/中村誠治郎
カヤ役/野本ほたる
ソル役/健人
カノン/ザインが愛した女 “シオン”役/花影香音
オーティマ役/遊馬晃祐
ワギナオ役/松田岳

<物語>
バベルの塔を臨む大地・バベル大陸にて――
絶対正義の名のもとに、大陸の平和を守る為に戦う「聖教騎士団」。
突出した「錬金術」の才を持つ彼らは「ロードマスター」に率いられている。
“獅子王の進撃”の最中に命を落とした第10代ロードマスター・ザイン。 彼の後を継ぎ、11代目のロードマスターとなったカノンは、 獅子王オライオンとヴェーダ十戒衆を辛くも退けた。
戦いの気配を感じながらの、束の間の平穏の中、 オーティマは一冊の手記をカノンに手渡す。 それは、第10代ロードマスター・ザインによって書き綴られたものだった。 正義の象徴に相応しい強さ、気高さを備え、多くの者を照らし続けたザイン。 彼が何に悩み、何を願い、誰を愛したのか、多くを知る者は少ない。
叶えたい願い、受け継がれる思い、その行き着く果てには何が待つのか…。 ザインの手記を読み進める内に、カノンは深い“海の底”に隠されていた存在を知る。 それは、光の届かない場所すらも照らしたいと願った、ザインの正義の原点。 正義とは、光とは、誰ガ為のものなのか。 そのザインの秘めたる思いが今、紐解かれようとしている――…。
これはロードマスターとなったカノンが触れた、 ザインが“獅子王の進撃”に至るまでの、もう一つの、誰にも届かなかった物語。

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<概要>
配信日程:2020年10月7日(水) 〜 11日(日) 全5公演 無観客LIVE配信
原作:今泉潤 / FgG「誰ガ為のアルケミスト」
主催:Amane / gumi
総合演出:今泉潤
演出:磯貝龍乎
脚本:谷口健太郎 / 深浦佑太
制作:ファイズマンクリエイティブ/レジェンドステージ

公式サイト:https://tagatame-stage.jp/
公式ツイッター:https://twitter.com/tagatame_stage(@tagatame_stage)

©舞台版『誰ガ為のアルケミスト』製作委員会