STAGE GATE VRシアター vol.2『Equal-イコール-』(リーディングスタイル) 濃密な会話劇がVRでより幻惑的に、錯綜的に。

新しい演劇として”配信”が注目を浴びている。その中でもひときわ話題になっているのが、VR(ヴァーチャルリアリティ)、仮想現実と訳されている最新テクノロジーだ。STAGE GATE VRシアター vol.2『Equal-イコール-』(リーディングスタイル)が上演された。
病を患う青年・ニコラと、ニコラのために錬金術に傾倒していく親友・テオの運命の七日間を描いた物語で、ふたりきりの濃密な会話劇を、ふたりの役者が役を固定することなく演じ合う手法の戯曲となっており、観るものを“幻惑的錯綜”へと導くもの。

VRで視聴した舞台
客席から撮影した舞台

舞台は極めてシンプル、二人の俳優が向かい合って座っている。そしてリーディング、たったこれだけなのに、観ていると、しかもVRで、これが不思議な感覚に陥る。ニコラとテオの”知り合い”的な立ち位置というのだろうか、彼らの世界に入り込める。そして盆が周り、二人の位置が変わり、役が変わる。それを繰り返すので、どっちがどっちなのか、VRの効果も相まってかなり惑わさせるが、これがなぜか心地よい。物語にのめり込んでいく感覚、カメラの”すぐそこ”に二人がくる時は手を伸ばせば届くかの錯覚に陥る。

VRで視聴した舞台
VRで視聴した舞台

二人の会話は二人の共通の”事象”であり”経験”なのだが、会話をよく聞いているとちょっとずつ違っていたりする。そして途中で聖書の創世記の一節が登場する。全知万能の神がこの世界を、この世界に住む生きとし生けるものを創造した、あの一節だ。ここで勘の良い観客はおおよそ察しがつくかもしれない。幻想的でちょっとSF的な要素、テオは自身が持つ知識でニコラを救おうとかつて実在しながらも失われた学問「錬金術」を蘇らせようと試みる。不老不死、漫画「ブラック・ジャック」的な、神の領域に手を出そうとする医師テオ、彼は一体、そしてニコラはどうなるのか。

VRで視聴した舞台
スチール写真

この戯曲はオチよりも、オチにいたる過程、そしてタイトルの『Equal-イコール-』、さらにこの新型コロナウイルスの蔓延。ウイルス(英:virus)とは、他生物の細胞を利用して自己を複製させる、極微小な感染性の構造体である。生命の最小単位である細胞やその生体膜である細胞膜も持たないこと、小器官がないこと、自己増殖することがないので生物かどうか議論の余地がある。細菌の50分の1程度の大きさ、ウイルスには細胞がないので、他の細胞に入り込んで生きる。ヒトの体にウイルスが侵入すると、ヒトの細胞の中に入って自分のコピーを作らせ、細胞が破裂してたくさんのウイルスが飛び出し、ほかの細胞に入りこみ、増殖する。
ウイルス学的な特徴としてはコロナウイルスはプラス鎖一本鎖のRNAをウイルスゲノムとして有するエンベロープウイルス。このRNAは誤ったコピーが発生しやすく、これを変異という。この戯曲の最後のほうで、これを思い出すような一節がある。それと創世記の一節、テオの言動、これを脳内でシンクロさせると、この戯曲はなぜ今、上演されているのか、そしてこれをVRで視聴することの面白さに気づくことであろう。

[VRで視聴した舞台]

[スチール写真]

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【公演・配信情報】
■STAGE GATE VR シアター vol.2『Equal-イコール-』(リーディングスタイル)
2020年9月27日(日)~10月17日(土)
脚本:末満健一
演出:元吉庸泰
出演(50音順):荒牧慶彦、植田圭輔、碓井将大、北村諒、木戸邑弥、小林亮太、鈴木勝大、鈴木裕樹、染谷俊之、田中亨、辻本祐樹、納谷健、細貝圭、前山剛久、松井勇歩、三津谷亮
■ストーリー
18世紀初頭、ヨーロッパの田舎町。
肺の病を患い長い間病床に伏しているニコラと、町の小さな診療所で新米医師として働く幼馴染のテオ。
テオはニコラのために、かつて実在しながらも失われた学問「錬金術」を蘇らせようと試みる。
それは「錬金術」における主要研究とも言える「不老不死」の実現を目指すものであった。
しかし、死期の迫るニコラは次第に不可解な行動を見せるようになり、テオとニコラの運命の七日間がはじまるのだった。
<キャスト組み合わせ>
A:小林亮太×田中亨
B:木戸邑弥×前山剛久
C:植田圭輔×松井勇歩
D:鈴木勝大×三津谷亮
E:碓井将大×納谷健
F:染谷俊之×細貝圭
G:鈴木裕樹×辻本祐樹
H:荒牧慶彦×北村諒
【公演日程・チケット情報】
劇場公演
会場:DDD青山クロスシアター
公演日程:2020年9月27日(日)~10月17日(土)
本公演は総勢16名の出演者が2名1組となりリーディング形式で上演。
[ライブ配信]
ライブ動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」:https://t.pia.jp/pia/events/pialivestream/
配信日程:
A:9月28日(月)18:30
B:9月29日(火)18:30
C:10月11日(日)13:00
D:10月10日(土)13:00
E:10月11日(日)17:30
F:10月10日(土)17:30
G:10月14日(水)14:00
H:10月14日(水)18:30
[VR アーカイブ配信]
VR動画配信サービス「Blinky」:https://live.blinky.jp/
※各公演配信開始時間より24時間後までアーカイブあり。
配信日程()は収録公演:
A:10月5日(月)21:00(9月30日(水)公演)
B:10月8日(木)21:00(10月3日(土)公演)
C:10月6日(火)21:00(10月1日(木)公演)
D:10月7日(水)21:00(10月2日(金)公演)
E:10月9日(金)21:00(10月3日(土)公演)
F:10月11日(日)21:00(10月4日(日)公演)
G:10月21日(水)21:00(10月15日(木)公演)
H:10月20日(火)21:00(10月15日(木)公演)
・チケットに関するお問い合わせ:ぴあ公演事務局(平日 12:00~17:00)information2@pia.co.jp
・VR アーカイブ配信の視聴に関するお問い合わせ:Blinky https://forms.gle/uCKUFVWnKM6U3kyD6
・公演に関するお問い合わせ:CAT チケット BOX 03-5485-5999
■主催・企画・製作:シーエイティプロデュース/ワタナベエンターテインメント
■公式ホームページ:https://stagegate-vr.jp
文:高 浩美