《インタビュー》舞台『蟻地獄』原作・脚本・演出 板倉俊之

異才芸人・板倉俊之の小説『蟻地獄』が舞台化、この2021年6月に上演される。1998年にお笑いコンビ「インパルス」を結成。2009年に本格ハードボイル小説『トリガー』を発表し、2011年コミカライズ化(作画:武村勇治)。今回舞台化される『蟻地獄』は自身2作目の小説で2012年に発表、こちらも2015年コミカライズ化(作画:武村勇治)。
本来であれば、2020年に上演されるはずであったが、新型コロナウイルス蔓延により中止。2021年、ようやく上演できることとなった。そして自身の手で脚本・演出も担う。
稽古が始まった5月某日、板倉俊之さんに舞台化されるまでの経緯や稽古の様子やキャストさんについて語っていただいた。

――この作品が舞台化されるに至ったのは?

板倉:「やりませんか」と声をかけていただいたのがきっかけです。うれしさ半分、「これ舞台でできるのかな?」という気持ち半分でした。

――小説の舞台化は数多くありますけれど、原作者が脚本も演出もするというのは珍しいですね。原作者が監修という形で参加するのはよく見かけますが。

板倉:もともと、演出込みでのオファーだったんです。脚本は別の方で、というお話だったのですが、原作を知らない人に頼むんだったら、すでに全部知っている自分でやってしまったほうが早いな、と。作品を読んでもらって、そこから考えてという時間がもったいないなと感じたんです。本来なら誰かに任せたほうがいいのかもしれませんが。

――昨年はコロナ禍で中止になってしまいましたが、1年間の充電期間を経て、少し手直しなどはされたのでしょうか?

板倉:実は、あまりやっていないんです。結局、稽古してからでないと直してもあんまり意味がないなと思ったので。演出の方法として、劇場の変更に伴って変えた部分もありますけれど。規模感とか…期間が空いたから直そう、という感じではなかったですね。

――こちらの脚本、読ませていただきましたが、割とテンポ感が良いなと感じました。

板倉:僕としてはテンポ感というよりは、短くしなきゃいけなかったんだよなぁ、って思います。あの内容を全部詰め込もうと思うと、4時間5時間と平気でかかってしまうんですよ。舞台は2時間くらいで収めないといけないですから、まず短くすることを前提に作成したんです。結構『蟻地獄』は全部の場面に意味があるというか、シーンとシーンに繋がりがあるパターンが多いので、短くするためにあるシーンを切ったら、それに関係するシーンも切らないといけなかった。脚本を作っていく段階で、『蟻地獄』の小説そのままを表現するのは無理だなというのは最初からわかっていましたが、短くすることによって、すっきりしてよかったかなとも思います。また、原作者が舞台化を見て満足して帰ることはない、という話を聞いたことがありますが、自分で書いていてもどうしても表現できない部分が増えるので…小説は書いてしまえば場面転換も容易ですからね。ただし小説は演者さんの「声」そして「音」がないんです。その分で原作と違う魅力が出ればいいなと思います。

――現在、稽古はどのような感じでしょうか?

板倉:主演の髙橋くんは一生懸命やってくれていて、この人に頼んでよかったなと思っています。ちょっとセリフも多くて大変な役どころなので、体調はちょっと心配かな。僕と彼は稽古の全日程来ないと成り立たないですから。一番たいへんな仕事が人生の前半で来てしまったか、という感じじゃないかなと。これを乗り越えればもっと成長できると思います。あと、乃木坂46の向井葉月さんは演技上手いな、と感じました。

――それでは、最後に読者へのメッセージをお願いします。

板倉:ご時世的に来てください、と言うのは難しいところではあるんですけれど……原作を読んでくれているなら「あれが立体化したのか」という楽しみ方をしていただけますし。原作知らないという方にも分かるように作っています。サスペンス、ミステリーなど“コッチ系”の話が好きな人には損はさせないですし、ぜひ劇場に足を運んでいただければと思います。

――ありがとうございました。公演を楽しみにしております。

制作発表会より

<アフターイベント開催決定!>
板倉俊之が参加するアフターイベントの開催が決定!
6月9日(水)14:00のスペシャルアフタートーク、
6月10日(木)13:00のスペシャルカーテンコールに板倉俊之が登場!
是非舞台化の想いや苦労をお聞きください。
詳細は公式HPにて。
https://arijigoku-stage.com/

<関連記事:製作発表会レポ>
https://theatertainment.jp/japanese-play/77574/
<STORY>
二村孝次郎(髙橋祐理)は、杉田(迫 英雄)という男の助言を受け、親友の大塚 修平(近藤 廉)とともに裏カジノに乗り込み一攫千金をもくろむ。電光石火の早業で女ディーラー(安川里奈)の目を欺き、見事大金を手に入れたかに思われたが、それは杉田と裏カジノのオーナー・カシワギ(山口大地)によって仕 組まれた地獄への罠だった。
修平は人質に取られ、『5日間で300万円を用意する』という救済条件のタイムリミットは刻一刻と迫っていく。現金を用意することを断念した孝次郎は、あろうことか1個40万円で売買されるという人間の眼球の収集を試み る。眼球を求め彷徨う孝次郎だが、そう簡単に見つかるはずもなく、残され た時間はあと僅か…。 窮地に追い込まれた孝次郎は、一縷の望みをかけて集団自殺志願者が集う廃墟へと辿り着く。集団自殺の発起人・宮内(天野浩成)を筆頭に、一堂に会するマフユ(向井葉月)、ケイタ(古賀 瑠)、フジシロ(向清太朗)、そして孝次郎。しかし、そこにはさらなる最悪の罠が待ち受けていた。
幾重にも孝次郎に襲い掛かり、足掻くほどに堕ちていく『蟻地獄』という名の絶望の罠。果たして孝次郎はこの絶望から這い上がり、修平を救うことができるのか?

<公演概要>
公演タイトル:蟻地獄
日程・会場:2021年6月4日~10日 よみうり大手町ホール
原作:板倉俊之『蟻地獄』(単行本=リトルモア/文庫本=新潮社)
脚本・演出 :板倉俊之
出演:
髙橋祐理…………二村孝次郎
天野浩成…………宮内
向井葉月…………マフユ
古賀 瑠 …………ケイタ
向清太朗…………フジシロ
佐藤恵一(プロレスラー/エスワン)…………クマザワ
安川里奈…………女ディーラー
中野裕斗…………二村源次郎
三木美加子………二村咲子

近藤 廉 …………大塚修平
迫 英雄 …………杉田

山口大地………カシワギ
ヒラノショウダイ、富山バラハス、古家由依………アンサンブル
舞台美術:照井旅詩
音 響:今村太志(サウンドクラフトライブデザイン社)
照 明:高橋朋也(東京三光)
映 像:曾根久光(co:jin projects)
衣 裳:森宗大輔
ヘアメイク:松田 陵(Y’s C)
音 楽:石本大介
演出助手:小暮邦明
舞台監督:伊藤清一
宣伝写真:撫井健一 宣伝デザイン:成川 研
WEB デザイン:岡本宏輔
票 券:Mitt
制 作:浅田真那
プロデューサー:川瀬良祐 エグゼクティブプロデューサー:大関 真
特別協力:吉本興業株式会社 新潮社 株式会社 日本文芸社
企画制作:スーパーエキセントリックシアター
お問い合わせ:公演▶SET インフォメーション
TEL:03-6433-1669(平日 11:00~18:00)
MAIL:info@set1979.com
チケット▶Mitt TEL:03-6265-3201(平日 12:00~17:00)
公式ホームページ:https://arijigoku-stage.com/
公式 Twitter:https://twitter.com/arijigoku_st @arijigoku_st
©板倉俊之/SET
構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美