原作・脚本・演出 板倉俊之 舞台『蟻地獄』期限は5日、この蟻地獄から抜け出せるのか?!

異才芸人・板倉俊之の小説『蟻地獄』が舞台化、1998年にお笑いコンビ「インパルス」を結成。2009年に本格ハードボイル小説『トリガー』を発表し、2011年コミカライズ化(作画:武村勇治)。今回舞台化される『蟻地獄』は自身2作目の小説で2012年に発表、こちらも2015年コミカライズ化(作画:武村勇治)。本来であれば、2020年に上演されるはずであったが、新型コロナウイルス蔓延により中止となり、2021年6月4日より、ようやく上演。髙橋祐理、天野浩成、向井葉月、山口大地ら気鋭のキャストが揃った。
原作を知ってる、あるいはコミカライズを読んだことがあるなら、展開やオチは知っているのだが、あの『蟻地獄』を生身の俳優が演じるとどんな感じになるだろうか、という興味だけでも充分。
大概の小説は原作をそのまま舞台化は限りなく不可能に近い、この作品とて例外ではない。どこをはしょるのか、どこをクローズアップするのかは脚本や演出の手腕にかかっていると言っても過言ではない。だが、この舞台化は原作者自らが脚本・演出を手がけている。自身の作品、隅から隅まで熟知している。
主人公・無職、二村孝次郎(髙橋祐理)、相棒とパチンコで稼いでいる、パチスロ機の仕組みを熟知していて、それなりに稼いでいる。そこそこの大金を手にして、意気揚々とカジノに乗り込む。杉田(迫 英雄)という男の助言を受け、裏カジノへ。

ギャンブル初心者のふりをする、女ディーラー(安川里奈)の目を欺く。「ブラックジャック」、大金をつぎ込んで大負けしたと見せかけ、あり金を叩いて大勝負…事前に仕込んでいたカードでイカサマ、あっという間に勝利する。少々、有頂天になっていた孝次郎であったが、それは”蟻地獄”の入り口、いや、実はその前から…。案の定、カジノの強面の支配人・カシワギ(山口大地)から強烈な一撃。杉田とカシワギの仕組んだ罠だった。みるみるうちに窮地に陥る主人公、たったの5日で300万作って来いと言われ…。現金では用意できない、家は裕福とは程遠い、無職なので金融機関からキャッシングも無理、そこでとんでもない方向に、人の目玉をくり抜いて売る!だが、そう簡単に…できるはずもなく、そこで思いついたのが集団自殺!だが、そこにもさらなる危険が…が大体の流れ。

心理戦に怒涛の展開もさることながら、崖っぷちに立たされた孝次郎の倫理観が崩れていく。300万を5日でこしらえるのに人の目玉をくり抜いて売る、という”悪魔”的な発想。杉田は電話で言い放つ「「なぜ落とし穴をつくるか?それは落ちた人間の反応を拝みたいからだ」と。自分の車が車上荒らしによって漁られている場面に遭遇。苛立ちのままに相手を殴りつける。怒りから拳を止めることが出来ず、人の道から外れていくその心。そしてパチスロで稼いていたので、それなりに頭は切れる。掲示板で自殺志願者の仲間を集める。
タガが外れたように心が暴走、崖っぷちの主人公を髙橋祐理がやるせない空気感を醸し出しながら演じる。カシワギに髪をつかまれ、反抗的な目線を送る。対するカシワギはその無慈悲さ、冷徹さ、不遜な態度で対峙する場面を山口大地が眼光鋭く見せつける。怪しげな杉田、迫英雄が演じているのだが、人気シリーズ『忍ミュ』で優しい学園長を演じているので、その真逆さに驚かされる芝居巧者。

自殺志願者のマフユ(向井葉月)、ケイタ(古賀瑠)、向井葉月は舞台版の「コジコジ」でタイトルロールを演じており、古賀瑠はミュージカル「ビリー・エリオット」など多くの舞台に出演している”若いのにベテラン”、フジシロ演じる向清太朗は日本の漫才師、お笑いタレント、ラジオパーソナリティ、ライトノベル作家、声優であり、漫才コンビ天津のボケ(場合によりツッコミ)担当、多彩!この自殺志願者の自殺したい理由がキリキリ胸が痛む。集団自殺の発起人・宮内演じる天野浩成はクセのある役創りで場面のアクセントに(初舞台はあのタキシード仮面!)、脇を固める俳優陣の手堅さ、そして原作の面白さ。わかっているのにグイグイと引き込まれていく面白さ、主人公のモノローグ、時折映像で期限を表示し、主人公だけでなく、観客をもキリキリと追い詰めていく。揺さぶる心理戦、全てを欺く驚愕のラスト。休憩なしの2時間15分。ジェットコースターのようなノンストップサスペンス劇、見終わった後は、原作を読んでいなければ、きっと原作もコミカライズも手にしたくなるはず。

<アフターイベント開催決定!>
板倉俊之が参加するアフターイベントの開催が決定!
6月9日(水)14:00のスペシャルアフタートーク、
6月10日(木)13:00のスペシャルカーテンコールに板倉俊之が登場!
是非舞台化の想いや苦労をお聞きください。
詳細は公式HPにて。
https://arijigoku-stage.com/

<関連記事:製作発表会レポ>
https://theatertainment.jp/japanese-play/77574/
<インタビュー記事>

《インタビュー》舞台『蟻地獄』原作・脚本・演出 板倉俊之

<STORY>
二村孝次郎(髙橋祐理)は、杉田(迫 英雄)という男の助言を受け、親友の大塚 修平(近藤 廉)とともに裏カジノに乗り込み一攫千金をもくろむ。電光石火の早業で女ディーラー(安川里奈)の目を欺き、見事大金を手に入れたかに思われたが、それは杉田と裏カジノのオーナー・カシワギ(山口大地)によって仕組まれた地獄への罠だった。
修平は人質に取られ、『5日間で300万円を用意する』という救済条件のタイムリミットは刻一刻と迫っていく。現金を用意することを断念した孝次郎は、あろうことか1個40万円で売買されるという人間の眼球の収集を試み る。眼球を求め彷徨う孝次郎だが、そう簡単に見つかるはずもなく、残され た時間はあと僅か…。 窮地に追い込まれた孝次郎は、一縷の望みをかけて集団自殺志願者が集う廃墟へと辿り着く。集団自殺の発起人・宮内(天野浩成)を筆頭に、一堂に会するマフユ(向井葉月)、ケイタ(古賀 瑠)、フジシロ(向清太朗)、そして孝次郎。しかし、そこにはさらなる最悪の罠が待ち受けていた。
幾重にも孝次郎に襲い掛かり、足掻くほどに堕ちていく『蟻地獄』という名の絶望の罠。果たして孝次郎はこの絶望から這い上がり、修平を救うことができるのか?

<公演概要>
公演タイトル:蟻地獄
日程・会場:2021年6月4日~10日 よみうり大手町ホール
原作:板倉俊之『蟻地獄』(単行本=リトルモア/文庫本=新潮社)
脚本・演出 :板倉俊之
出演:
髙橋祐理…………二村孝次郎
天野浩成…………宮内
向井葉月…………マフユ
古賀 瑠 …………ケイタ
向清太朗…………フジシロ
佐藤恵一(プロレスラー/エスワン)…………クマザワ
安川里奈…………女ディーラー
中野裕斗…………二村源次郎
三木美加子………二村咲子

近藤 廉 …………大塚修平
迫 英雄 …………杉田

山口大地………カシワギ
ヒラノショウダイ、富山バラハス、古家由依………アンサンブル
舞台美術:照井旅詩
音 響:今村太志(サウンドクラフトライブデザイン社)
照 明:高橋朋也(東京三光)
映 像:曾根久光(co:jin projects)
衣 裳:森宗大輔
ヘアメイク:松田 陵(Y’s C)
音 楽:石本大介
演出助手:小暮邦明
舞台監督:伊藤清一
宣伝写真:撫井健一 宣伝デザイン:成川 研
WEB デザイン:岡本宏輔
票 券:Mitt
制 作:浅田真那
プロデューサー:川瀬良祐 エグゼクティブプロデューサー:大関 真
特別協力:吉本興業株式会社 新潮社 株式会社 日本文芸社
企画制作:スーパーエキセントリックシアター
お問い合わせ:公演▶SET インフォメーション
TEL:03-6433-1669(平日 11:00~18:00)
MAIL:info@set1979.com
チケット▶Mitt TEL:03-6265-3201(平日 12:00~17:00)
公式ホームページ:https://arijigoku-stage.com/
公式 Twitter:https://twitter.com/arijigoku_st @arijigoku_st
©板倉俊之/SET