ミュージカル『CATS』大井町に猫の異次元空間出現! 8月11日より開幕!

『キャッツ』は、T・S・エリオットによる詩集「キャッツ – ポッサムおじさんの猫とつき合う法」(The Old Possum’s Book of Practical Cats)を元にした、アンドリュー・ロイド=ウェバーが作曲を手掛けたミュージカル作品。個性的な猫たちが都会のごみ捨て場を舞台に、踊りと歌を繰り広げるのだが、人間が一切出てこない演出と振付が大きな特徴だ。2016年、トム・フーパーの監督により長編映画化が決定している。

日本における『キャッツ』であるが、初演は1983年11月11日に東京・西新宿のテント式仮設劇場にて(場所:現在のモリノスビル)。以来35年、計9都市でのべ23公演が行われ、各地で“キャッツフィーバー”を巻き起こした。これまでの国内総公演回数は9,802回、総入場者数は約969万人!まさにミュージカル史の金字塔である。

“都会のゴミ捨て場”が舞台、猫の目線から捉えた劇場空間は、膨大な“ゴミ”のオブジェでいっぱい。その大きさは実物の約3~5倍。日本での公演では、“ご当地ゴミ”が名物。大阪公演の時はたこ焼き器、横浜公演の時は崎陽軒のシュウマイ弁当、そして今回の公演地、東京では、東京タワーの模型(小さいので意外と見つけにくい!)や東京ばな奈、読売ジャイアンツのグッズ(帽子発見!)など馴染み深い品々も“ご当地ゴミ”として取り付けてあるので、これは是非とも探したいところ。

さて、東京での公演は久しぶりのこと。2007年以来、実に10年以上ぶりだ。

幕開きのオーバーチュア、舞台が回る。猫の目が光る。始まる前から劇場内はすでに「CATS」ワールドなのだが、曲がかかることによってさらなる「異次元」に誘われる。舞台上には輝く満月。この夜、街の片隅のゴミ捨て場で年に一度、ジェリクル舞踏会に参加するためにたくさんのジェリクルキャッツが集うのだ。人間に飼い慣らされることを拒否し、自由に生きる猫たち、それがジェリクルキャッツ。しかも長老猫が最も純粋なジェリクルキャッツを選ぶ特別な夜なのだ。選ばれる猫は?皆、夜を徹して歌い、踊る。
さて、このジェリクルという言葉、英語ではJellicleと書く。これは 原作者のT.S.エリオットが作った言葉で、 英語のジュエリー(jewelry:宝石類、アクセサリーという意味)とミラクル(miracle:奇跡( きせき)という意味)という2つの単語を足して作った造語。宝石のようにキラキラ、そしてミラクル、なんだか素敵で美しい響き、そんな個性的で逆境にもめげない、素敵な愛すべき猫たち、それがジェリクルキャッツ。しかも猫たちのネーミングが全て個性的、そのほとんどは原作者が考えた『造語』、原作者のネーミングのセンスには驚かされる。

まずはマンカストラップが登場するが、狂言回し的な、ジェリクルキャッツの語り部的な役割を果たす。「ジェリクルソング」、「ネーミング・オブ・キャッツ」、次々と出てくる珠玉のナンバー、その全てが耳に残るキャッチーな楽曲で、何度も聴いているうちに覚えてしまうくらいだ。個性的な猫が矢継ぎ早に登場する。でっぷり太ったおばさん猫のジェニエニドッツにロックスターを彷彿とさせるラム・ラム・タガー等一度見たら忘れられないキャラ立ちした猫ばかり、いやキャラ立ちした猫しか出てこない!
見所は?と聞かれたら、個人の好みもあるかもしれないが、「全て」と言っても決して言い過ぎではない。娼婦猫のグリザベラ、皆、彼女を避ける。かつては美貌を誇っていたが、今はすっかり見る影もない。また、2幕で登場する役者猫であるアスパラガス、通称『ガス』、かつては二枚目俳優だったようで、劇中劇での海賊猫・グロールタイガーでは生き生きとして輝いているが、ここはちょっと悲哀感じるところだ。鉄道をこよなく愛するスキンブルシャンクス、今風で言えば『鉄ちゃん』、仕事が大好き、列車が大好き、ここでは客席からクラップが起こる。また、マジシャン猫のミストフェリーズ、マジックが使えるだけでなく身のこなしも軽やか、見所は片足回転(フェッテ)、ここでは大きな拍手が起こる。そしてラスト、ジェリクルキャッツは誰なのか・・・・・・。

「CATS」という作品は実に多くのメッセージが含まれている。劇場のゴミのオブジェ、「懐かしい」という感覚にとらわれる。それはそのゴミに『思い出』が詰まっているからだ。そして猫たちの生き様、役者猫が全盛期だった頃の活躍を懐かしむ。あの華やかな時期、泡沫の夢、その他の猫たちも、「いる、いる、そういう人」と共感するところは多く、それでいて人間は一切出てこない。どこかの街の片隅なはずなのに、異世界、無限な宇宙的な広がりを感じさせる。満月は赤く輝いたかと思うと黄金色になったりもする。あっという間の2幕物。ラストシーンは、神々しささえ感じる。大きな古いタイヤが空へ上がっていく、UFOっぽくも見える。物語の解釈は基本的に観客に委ねられているが、それは作品の懐の大きさを示している。

また35年の月日を経て舞台も進化、大筋は変わらないが、振付や舞台の細かいところや演出、楽曲のアレンジなどに変更が見られた。また衣装にも注目。例えばラム・ラム・タガーは初演時は真っ白なロックスター調の衣装であった。長年観劇しているファンなら、そんなところにも注目してほしい。

見るたびに新しい発見がある「CATS」、日本公演、10000回は目の前だ。

なお、キャストから意気込みメッセージが届いた。

<マンカストラップ役 加藤 迪(かとう すすむ):コメント>
まもなく日本上演 35 周年という節目を迎える『キャッツ』は、ここ東京・大井町で新たな 一歩を踏み出します。長きに亘り受け継がれてきたこの舞台に込められた祈りを絶やすこ となく、より一層お客様へ作品の感動をお届けできるよう、精一杯務めたいと思います。

ミュージカル『キャッツ』東京公演 キャッツ・シアター内覧会 猫たちもやってきて大撮影会

【公演概要】
日程:2018年8月11日開幕
場所:キャッツシアター(品川広町2-1-18)
現在2019年1月31日まで発売中。

公式HP:https://www.shiki.jp

文:Hiromi Koh

撮影:下坂敦俊