劇団四季ミュージカル『パリのアメリカ人』稽古快調!「一番、出来上がった状態でお届けできる」(クリストファー・ウィールドン氏)

今、最も注目度の高いミュージカル『パリのアメリカ人』の公開稽古が劇団四季のあざみ野の稽古場で行われた。
ミュージカル『パリのアメリカ人』は、1952年にアカデミー賞を受賞し、“アメリカ音楽の魂”と称されるガーシュウィン兄弟の代表曲が散りばめられた同名映画に想を得た作品。ロイヤル・バレエ団アーティスティック・アソシエイトとして、『不思議の国のアリス』『冬物語』等、数多くのバレエ作品を手掛けるクリストファー・ウィールドン氏が演出/振付を担当し、2014年にパリ・シャトレ座で初演され、翌2015年にはブロードウェイ・パレス劇場に進出。同年のトニー賞で振付賞、編曲賞、装置デザイン賞、照明デザイン賞の4部門を獲得。劇団四季による公演は、いよいよ2019年1月20日(日)、東急シアターオーブ(渋谷区)で開幕。その後3月19日(火)からKAAT神奈川芸術劇場<ホール>(横浜市)にて上演。
第二次世界大戦直後のパリに生きる若者たちの愛と友情と夢を描いた物語を、スタイリッシュなダンスとイマジネーション豊かなビジュアルで表現。「ダンス、ロマンス、そしてクラシックなガーシュウィンの完璧なる融合」(ニューヨークタイムズ)、「ダンスがこれほど圧倒されるほどの効果をもたらしたのは、『ウェストサイド物語』以来初のこと」(ウォールストリートジャーナル)等々、その高い芸術性には、多くの評価と称賛の声が寄せられている。

さて公演まで1か月を切った12月22日、あざみ野の稽古場、連日熱い稽古が繰り広げられているが、この日は公開稽古、気合が入っているキャスト陣。

稽古を始める前に解説。

公開された場面は3つ。

最初はジェリー、アダム、アンリがカフェで出会うシーンから。楽曲は「I Got Rhythm」。この曲は劇団四季のミュージカルファンならよく知っているナンバー、ミュージカル「Crazy For You」(1992年初演、日本では翌年に上演)でもおなじみだ。演出・振付のクリストファー・ウィールドン氏から解説があった。この3人が出会い、仲良くなる場面、物語の流れとしても重要な場面だ。セットは俳優が演技しながら動かす。これが、いかにも『出してます』ではなく、ごくごく自然に流れるようにセッティングする。中央でタバコを燻らせながらピアノを弾いている男、名前はアダムといいピアニストだ。そこへジュリーが入ってくる。アメリカ人で画家で生計を立てようとしている。2人は意気投合し乾杯する、「自由に!博愛に!」と。時代背景は第二次世界大戦後、場所は言わずと知れたパリ。ジュリーは戦争が終わってもパリに残っていたのだった。そしてアンリもやってくる、彼は歌手。歯切れの良いセリフ、テンポ、そして有名なナンバーへと滑らかに繋がっていく。「悩みは忘れた」と歌う。作品の時代背景をおさえておくと歌詞やセリフの奥深さに気付かされる。椅子やテーブルを動かし、フライパンなどを叩いてリズムをとったり、曲が盛り上がるにつれて群舞も賑やかになって最後はキメ!思わず拍手。

次に披露された場面はモンマルトルにあるナイトクラブのシーン。クリストファー・ウィールドン氏からビューポイントの解説、イマジネーションでミュージックホールが出現すると語る。
アンリが歌う、そこへダンサーが登場し、群舞、シルクハットにステッキという小道具も出てきて、いかにも、な瞬間、タップダンスもあり、一列に並んでのシーンは華やかなブロードウェイミュージカルのイメージそのものだ。楽曲は「I’ll Build a Stairway to Paradise」。もともとはガーシュインの伝記映画である「Rhapsody in Blue」に登場する曲である。英語の歌詞には「Step」という言葉が出てくるが、これは文字通りのダンスのステップと階段のステップの2つの意味がある。ショーストッパー的なシーンで文句なく楽しさ満載だ。

最後に披露した場面はこのミュージカルの最後の方の場面で、ここは映画でも有名なシーン、「映画とは違う見せ方になっている」とクリストファー・ウィールドン氏。バレエのシーンが美しい「An American in Paris」、ジュリーとリズのパ・ド・ドゥ〜曲の終わりまでのところであったが、とにかく、このパ・ド・ドゥがシンプルかつ美しい。ドラマチックなメロディーライン、流麗かつ軽やかに踊る場面は、もう釘付けだ。途中でダンサー達が次々と登場するが、ここから雰囲気が変わり始める。そしてジャズタッチなメロディーに変化し、華やかさを増していく。そしてラストに向かって大きく盛り上がる。

あっという間であったが、公演まで1か月を切った段階、完成度も高く、初日が楽しみな余韻を残して公開稽古は終了した。

それから演出・振付 のクリストファー・ウィールドン氏の合同インタビューが行われた。ラフないでたちでニューヨークヤンキーズのキャップをかぶって登壇、親しみやすいルックス、しかし、トニー賞を受賞した世界で最も注目されているクリエイターだ。

このミュージカルはジーン・ケリー主演の映画『パリのアメリカ人』に想を得ていることに対してクリストファー・ウィールドン氏は「映画へのリスペクト、原作に対する敬意を忘れずに」と語る。いわゆる”原作もの”なので、この原作映画からかけ離れてしまうと原作ファンから「違う」と言われてしまう。かといって全くの映画のコピーというわけでもない。稽古を見た印象では映画の良さを踏襲しつつ、舞台、ミュージカルならではの華やかさと臨場感はしっかりと見せつける、そんな印象だ。クリストファー・ウィールドン氏から「Happy」という言葉が出た。映画ではこれが求められていたが、映画公開からはかなりの年月が経っている。群像劇なテイストも垣間見えたが、歴史を踏まえた要素がそこはかとなくセリフや雰囲気に盛り込まれている。「作品のロマンチックさを描きたかった」と言い、しかし「時代の暗さも」と語る。戦争が終わったから、即、バラ色というわけではない。光があれば影がある。アダムは足を引きずっている。そんなところに戦争の影、暗さを感じる。「戦争が終わってすぐに混乱が終わったわけではない」とクリストファー・ウィールドン氏。そして不安な心、その時代の空気感、表面的には開放感あふれていても生活や健康、様々な不安定要素はあったであろう時代だ。またダンサーと役者の違いにも言及、ダンサーは「伝えられたことを身体で表現する」といい役者は「ディスカッションが多い」という。そしてストーリーをダンスで伝える、「人の心に伝わるもの」という言葉が出た。さらに「知らない人にも届きやすいように」とクリストファー・ウィールドン氏。近年は「ノンバーバル」と言われる作品が出現、日本のオリジナル作品でもそのようなものが既に上演されているが、振付やフォーメーションなどが進化しているのは昨今の傾向。このミュージカル『パリのアメリカ人』はノンバーバルではないが、振付やフォーメーションは目を見張るものがある。またクリストファー・ウィールドン氏は2005年にニューヨーク・シティ・バレエ団で同作品を手がけているので振付、フォーメーションは独創的で完成度も高い。観劇予定があれば、ダンサーたちの動きには大いに注目!「様々なダンススタイルがある」とクリストファー・ウィールドン氏。時間や場所もダンスで表現、また「タップでもバレエ的なラインが出るように」と語ったが、こういった『融合』がオリジナリティに溢れ、また観たいと思わせてくれる。

そして劇団四季の印象は「こんなに立派な施設はないです!」と絶賛。さらにスタッフ、俳優陣についても「素晴らしい!」と手放しで大絶賛!既にイギリス、アメリカで上演されており、日本での公演については「一番、出来上がった状態でお届けできる」と胸を張る。また、個人的に好きなキャラクターは「アダム」だそう。「脚本には闇と光を両方取り入れている」と語る。光があれば影があり、闇があれば、より光は輝きを増す。また日本の観客については「愛情が感じられる、礼儀正しい」とコメント。「映画から、さらに新しいものを」と最後に語ったが、ほんの短い稽古披露であったが、現段階でも水準が高いものになっており、ここからさらに磨きをかけて来年の初日に向かって猛稽古!公演は2019年1月20日より!

 

ミュージカル「パリのアメリカ人」制作発表会 ガーシュインの珠玉の名曲とクオリティの高いダンスで魅了する舞台 「作品の感動をお届けできるように全身全霊で!」(松島勇気)

【公演概要】
劇団四季ミュージカル『パリのアメリカ人』
2019年1月20日〜
東急 シアターオーブ
2019年3月19日〜
KAAT神奈川芸術劇場
一般前売り:2018年10月27日 午前10時〜(「四季の会」会員先行予約:10月20日〜)
劇団四季公式HP:https://www.shiki.jp

撮影:金丸雅代

文:Hiromi Koh