1932年初演、天才ピナ・バウシュの師、振付家:クルト・ヨース作品 戦争と戦うバレエ「緑のテーブル」色褪せない作品そしてこだわり 2020年3月13日より@東京芸術劇場プレイハウス

スターダンサーズバレエ団がこだわりを持っている作品「緑のテーブル」がアンコール上演される。
クルト・ヨースはピナ・バウシュが師と仰ぐドイツ人の舞踏家で振付師。緑のテーブルは国際会議場の平和のモチーフとして登場し、反戦がテーマ。この緑のテーブルを囲んでなにやら怪しげな人物たちが戦争について協議しあい、戦争に巻き込まれる人々を表現する。
スターダンサーズバレエ団の理念は『バレエと社会をつなぐ』、1965年の創設、海外の振付家による優れた作品紹介とともに、オリジナル作品の創作に注力している。また、広く社会と接点を持つ活動を展開しており、子供達を対象としたアウトリーチ活動や障害者やパーキンソン病患者のためのダンスプログラムなどを実施している。

さて、今回の公演であるが、何度か再演は行っており、既存のファンはもちろん、新しいファンも開拓している。つまり、1932年初演ではあるものの、色褪せない作品であることがよくわかる。
さて、そのクルト・ヨースとはいかなる人物であったのだろうか?
1901年、ドイツ生まれ、シュツットガルト音楽院にてルドルフ・フォン・ラバンに出会い、指導を受けた後に彼のアシスタントとなる。
ルドルフ・フォン・ラバン(1879-1958)は1920~40年代に構築した、心理状態と身体運動の相関関係を規定する理論、ラバン身体動作表現理論を提唱した。英語では Laban Movement Analysis, LMAと称されている。
そしてクルト・ヨース自身はその後ミュンスターに拠点を移し、ミュンスター市立劇場の舞台監督に就任。後にヨースの妻となるアイノ・シーモラ、シガード・リーダー、F.A. コーヘン、 ハイン・ヘックロスらと最初のカンパニーを結成した。27年にはエッセンに移り、 フォルクヴァンク学校を創設、ダンス部門のディレクターに就任。自身のダンスカンパニーも再結成し、エッセン・オペラ・ハウスのレジデントカンパニーとなる。この カンパニーとともに参加した32年パリ国際舞踊コンクールにおいて「緑のテーブル」 が一等を受賞。ヨースは一躍脚光を浴びたが、33年には政治的理由からドイツを追われ、イギリスに逃れた後もカンパニーは活動を続け、「バレエ・ヨース」として世界各地で公演を行なった。
戦後の1949年にイギリス国民としてドイツに戻り、フォルクヴァンク学校で再びディレクターとして教育に力を注ぐと同時に新たな舞踊団も起ち上げ、引退にいたるまで振付家、指導者として精力的に活動し、1979年に死去、まさに芸術に人生をかけた人物であることがよくわかる。
この「緑のテーブル」は1963年からヨースのカンパニー以外での上演が許可され、日本では1977年、スターダンサーズバレエ団により上演が実現した。

上演の条件として、
・ヨース・エステートの派遣する舞台監督指導者の監督の元、少なくても4週間、最低90時間のリハーサルを確保すること(2019年時)
・いかなる公演プログラムにおいても作品は一番最後、かつ最後の休憩のすぐ後に上演すること。
・「死」役を踊るダンサーは、その直前に上演される作品に出演してはならない。
・「死」役についてはカンパニーのダンサーで満足できない場合はゲストダンサーを用意しなくてはならない。

また、スターダンサーズバレエ団にお邪魔した際に貴重な文献なども見せていただいたが、作品を創造したクルト・ヨースのこだわりと作品にかける意志も感じられる。

また、この「緑のテーブル」は8つのシーンで構成されている。
”黒服の紳士たち”で始まり、”死の踊り”、”戦闘”などのシーンを経て、8つ目は、また”黒服の紳士たち”で終わる。戦争のあらゆる醜い面を描き,不毛な会議から始待って会議に終る。
第2次世界大戦後も,反戦舞踊として,世界中の多くのバレエ団のレパートリーになっている。
スターダンサーズバレエ団では、この「死」は17年に入団した池田武志が務めることになっている。09年に第37回ローザンヌ国際バレエコンクールファイナリスト、ドイツのハンブルグバレエスクールへ2年留学し、ハンブルグバレエ団、新国立劇場バレエ団を経て現在にいたる気鋭のダンサーだ。

同時に公演する演目はジョージ・バランシン振付の「ウェスタン・シンフォニー」、アメリカのフォークソングを用いた作品で、初演は1954年、スターダンサーズバレエ団での初演は1991年のこと。アメリカ西部、カウボーイとカウガールたちが繰り広げる明るい作品だ。

【公演概要】
スターダンサーズ・バレエ団公演
「Dance Speaks -ダンスは何を語るのか。 」アンコール公演
◆日時・場所
2020年
3月13日(金)19:00開演
3月14日(土)14:00開演
3月15日(日)14:00開演
東京芸術劇場プレイハウス
上演時間:約1時間40分
◆演目(上演順)
ウェスタン・シンフォニー(ジョージ・バランシン振付)
緑のテーブル(クルト・ヨース振付)
◆チケット(全席指定・税込)
S席8,000円、 A席5,000円
公演サイト:
https://www.sdballet.com/performances/2003_dancespeaks/