加藤健一事務所 vol.109『ドレッサー』命尽きるまで役者、観る者の記憶の中に生き続けることこそが役者冥利。

『ドレッサー』(The Dresser)は、ロナルド・ハーウッドのイギリスの舞台劇、同原作のイギリス映画(1983年)。舞台は1980年の初演後、ブロードウェイでも上演。加藤健一事務所では2018年に上演し、好評につき、2021年に再び!加納幸和とのコンビでカトケンが我儘な座長に!

時代は第二次世界大戦真っ只中、物語の舞台はイギリス。幕開きは空爆の音、人々は怯え、ストレスはMAX。座長(加藤健一)は奇行、どうにもならないということで舞台監督のマッジ(一柳みる)と座長夫人(西山水木)は公演を中止しようとするが、ドレッサー(付き人)のノーマン(加納幸和)はそれでも上演したいと思う、演目はシェイクスピアの『リア王』。そのために右往左往する、というのが大体の流れ。

2018年に上演し、好評につき再演、メインキャストは加納幸和はじめ、続投。加藤健一&加納幸和の”KK”コンビ、息のあったやり取り。エキセントリックで我儘で唯我独尊な座長に、時折対等にやり合いつつ、周囲にも気配りし、献身的に彼の身の回りの世話を焼く付き人・ノーマン。座長演じる加藤健一、単なる困った老人ではなく、一本芯の通った感のある座長だが、クスッと笑えるような行動も取る人間味溢れるキャラクター。思い通りにならない苛立ち、戦争中であるという状況、舞台裏では周囲の人々を振り回すが、舞台に上がれば、その堂々たる佇まい、彼の生きる場所は舞台。ノーマンはそんな座長の瞳の奥底にある光を見逃してはいない、付き人を超えた関係、そして当の座長もまた、そんなノーマンだからこそ、言いたいことを言える。そこに劇中劇の『リア王』がシンクロしていく。


加納幸和がそんな座長に時折イライラしつつも、忍耐強く仕事をするノーマンを少しコミカルな味付けで演じる。裏方に徹し、全力で座長を、舞台を支える。強い絆で結ばれている座長とノーマン、別れは思わぬ形でやってくる。照明の陰影がその哀しみと深い愛情を観客に印象つける。命尽きるまで役者、観る人の記憶の中に生き続けることこそが役者冥利。そこに向かって生きようとする座長と、その心意気を無意識に感じ取り、献身的に仕えるノーマン。時代を超えて愛される戯曲には、普遍的な心と愛がある。

◆STORY
第二次世界大戦下のイギリス、とある一座が空爆に怯えながらも巡業を続けていた。 そんな中、心身ともに疲弊しきった座長(加藤健一)は突然街中で奇行に及ぶ。 目も当てられない座長の様子に、その夜の上演を中止しようとする舞台監督のマッジ(一柳みる)と座長夫人(西山水木)。 だが長年座長に仕えてきたドレッサー(付き人)のノーマン(加納幸和)だけは、座長に宿る演劇への情熱を信じ、 一度でも舞台の幕が開かない日があってはならないと、なんとか上演に向けて孤軍奮闘する。 しかし、すっかり憔悴した座長を始め個性豊かな面々に振り回され、上演中もてんやわんやの舞台裏。 そしてクライマックス、それぞれが胸に秘めた思いが明かされる・・・。

<2018年公演記事>
https://theatertainment.jp/translated-drama/1/
<2021年公演紹介記事>
https://theatertainment.jp/translated-drama/69345/
<2021年加藤健一・加納幸和:コメント>
https://theatertainment.jp/translated-drama/72179/

<公演概要>
日程・会場:
2021年2月27、28日 東京芸術劇場プレイハウス
作:ロナルド・ハーウッド
訳:松岡和子
演出:鵜山仁
出演:
加藤健一、加納幸和(花組芝居)、
西山水木、佐伯太輔、照屋 実、岡﨑加奈 ・ 一柳みる(昴)

【地方公演】
札幌 3/5、京都 4/24、兵庫 4/25
その他、北海道・中部北陸・九州地方の演劇鑑賞会公演(全会員制)
※ホームページにて日程詳細掲載

<加藤健一事務所次回公演は9月1日より!@本多劇場>
「SHOW MUST GO ON」
ーー27年ぶりの再演!ーー
作:ジョン・マーレイ アレン・ボレッツ
訳:小田島恒志
演出:堤 泰之
出演:
加藤健一 新井康弘 辻 親八 奥村洋治(ワンツーワークス) 林 次樹(Pカンパニー) 土屋良太 伊原 農(ハイリンド)
千葉健玖(Studio Life) 加藤 忍 岡﨑加奈
※詳細は後日発表!
公式HP:http://katoken.la.coocan.jp
舞台撮影:石川 純