金田明夫,小島籐子他出演!宅間孝行作・演出 タクフェス第8弾『くちづけ』叶わなかった淡い恋、ピュアな気持ちが切なく心に響く

宅間孝行の代表作の一つである『くちづけ』東京公演が始まった。
2010年の初演以来、演劇としてだけでなく、そのストーリーの社会的意義についても非常に高い評価を受け、2013年には堤幸彦監督によって映画化。2015年秋に「タクフェス第3弾」として上演した際には、実際に知的障がいのある女優、Moeka(町田萌香)を起用したことも話題となり、本作でも続投することが決まった。待望の再再演となる。
自立支援のためのグループホームを舞台に、知的障がい者とその家族の日常、地域の人々との交わりを通し、現実にある様々な問題を浮き彫りにした本作は、社会に対する問題提起そのものでありながら、全体をコミカルなトーンで描いたエンターテインメント作品。
2010年の初演・2015年再演、そして今回と3度目の出演となる金田明夫をはじめ、前作に続きかとうかず子、柴田理恵、Moekaが同役にて決定。また、新たに、小島藤子、松田るか、岸田タツヤ、倉田茉美、松村龍之介、若林元太、はるはる、北代祐太、そして斉木しげるという、実力派俳優陣からお笑い芸人まで、個性豊かな顔ぶれが出演する。
舞台上には物語の主たる場所であるグループホーム。きめ細かいセット、始まる前には恒例の『ふれあいタイム』、とは言っても今までのようにはいかないが、なんとかして観客とコミュニケーションを取りたいという宅間孝行の気持ち。初日の観客で一番若いのは中学3年生、実に幅広い客層である。

物語が始まる、身体は大人、精神は子どものままの人たちが生活するグループホーム〈ひまわり荘〉。埼玉県本庄市にある、という設定、ここは宅間孝行が学生時代に過ごした場所だそう。実にアットホーム、クリスマスシーズン、巡査の坂巻くん(松村龍之介)がツリーを運ぶのを手伝っている。日常的な光景、そこでスクリーンが…宮根誠司さんが!ニュースを読んでいる。ひまわり荘で自殺があったと報道、そして次のニュースが…なんとタクフェスの紹介(笑)、オープニング、それから時間が遡る、季節は夏。

 

 

ここのスタッフである袴田さん(柴田理恵)と愛情いっぽん(金田明夫)らのとの掛け合い、ここの住人、皆、見た目は大人だが、心は少年少女のままのうーやん(宅間孝行)らひまわり荘の住人、女子高生である国村はるか(松田るか)、友達のはるはる(みなみ)、賑やかでほのぼのした光景、袴田さんはすぐに人を叩くが、どこか温かい。うーやんは愛情いっぽんの娘である阿波野マコ(小島籐子)が好き、「結婚する」と大盛り上がり。

知的障がい者、彼らを取り巻く環境、漫画家の愛情いっぽん、彼の娘のマコ、うーやんはじめホームの住人、スタッフ、巡査、グループホームの主人であり医者の国村先生(斉木しげる)、ピュアなうーやん、笑いたい時に笑い、癇癪を起こす時は目一杯癇癪を起こす。笑顔のマコ、ちーちゃん(Moeka)、島ちん(若林元太)、皆愛すべき人々だ。


切なく、そして優しい。うーやんは結構な年齢だが、ピュアそのもの、マコと一緒にいる時は輝く笑顔、そしてマコもまた、うーやんが大好き。知的障がい者同士が結婚するというのは現実的ではないが、それでも応援したくなる。


映画化もされており、イタリアの映画祭でも絶賛された作品、物語の冒頭でマコが亡くなったことを提示し、なぜ、マコは死ななければならなかったのかが、描かれる。愛情いっぽんは男手一つでマコを育てた。マコに対する愛はあふれんばかり。だから彼女のいく末に悩む、しかも自分は病気になり、治る見込みもない。物語の基になった話自体が、知的障がい者がある事情で命を落としたという実際に起こった痛ましい事件。

この物語は現実から目をそらすことなく、彼らを描いている。親族と死別したらどうなるのか頼れる人もなく、普通に暮らせない。ただの涙ものではない、社会派的な要素が詰まっている。それをストレートに提示するのではなく、笑いも交えて描き出す。うーやんの言動、仕草、マコにキスしようとしたらおでこをぶつける瞬間はやはり笑ってしまうし、マコの子供っぽい仕草は愛おしい。スタッフである袴田さんはお酒が大好き、すぐに人を叩くし、グループホームの主人の国村先生(斉木しげる)とその妻である国村真理子(かとうかず子)の温かい眼差し、”外野”であるはずの巡査や愛情いっぽんの編集担当である夏目ちゃん(岸田タツヤ)も関わってくる。

月並みな言い方をすれば”笑いと涙”、それは確かにそうである。しかし、それを超えた何かがある。この現実に目をそらしてはいけないこと、それを正面切って言うのではなく、コメディ的に提示するところが宅間孝行の手腕。我々は何ができるのか、劇中で歌われる「Good Bye My Love」の根底に流れる愛と哀しみ(マコの音痴ぶりがすごい!)。最後にスクリーンに映し出される愛情いっぽんとマコの写真の数々は幸せで仲の良い親子そのもの。様々なことを考えさせられる作品であった。

 

本編終了後は、恒例のダンスタイム!みんなで楽しそうに踊って!そして叶わなかったうーやんとマコのHAPPYな!姿も!来年は新作!と宅間孝行。どんな作品になるのだろうか。

<開幕に向けてのコメント>
[金田明夫]
初演から早10年。人として、また演者として少しは成長している芝居をお見せできればと思っております。
[小島藤子]
東京生まれ東京育ちの身としては東京で初日を無事迎えられたこと、とても嬉しく思います。マコちゃんの真っ直ぐ な愛情表現やうーやんとの可愛らしいやり取り、父であるいっぽんとの触れ合うシーンは、全てが切なく愛おしいもの で、毎公演大切に演じています。人と触れ合うことを躊躇してしまうこんな時だからこそ、個々の思いで感じとれる 何かがあるのだと思います。観てくださった方々の心に残る舞台になると嬉しいです。
[柴田理恵]
人にやさしくしたくなる芝居です。大切な人を大切にしたくなる芝居です。
[かとうかず子]
ラスト、スクリーンに流れるいっぽん先生とマコちゃんのアルバムとても素敵です。劇場に勇気を持っていらして下さった皆様に、深 く感謝し、サンシャイン劇場で皆さまと共に過ごせる幸せを心から喜ぶ私です。頑張ります!今年のくちづけは、貴重な体験にな りました。
[斉木しげる]
演劇で社会性をテーマにした舞台は初めてなので、大変身が引き締まるような思いをしています。とは言えエンターテインメントと して楽しんで頂けるのが一番です。この時世で舞台の上に立てることは役者冥利に尽きます。これを喜びとして、僕自身も楽しみながら、皆さんの胸に残るものをお届けできればと思います。
[宅間孝行]
3回目の主人公愛情いっぽん演じる金田明夫が最高の円熟味を披露し、小島藤子が歴代ヒロインに負けないマコを堂々と演 じてます!いぶし銀の斉木しげる、かとうかずこがきっちり脇を固め、柴田理恵は爆発的に物語に笑いを巻き起こします。 美少女松田るかがフレッシュに女子高生を演じ最年少ながら物語を引っ張り、バチェラーの覇者倉田茉美が泣き所をきっちり演じ初舞台とは思えない堂々とした芝居を見せております。若手たちもきっちり要所をこなし、3度目にして決定版の『くちづけ』ご 披露致します!劇場でお待ちしてます!

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<タクフェス第8弾『くちづけ』 概要>
【タイトル】 タクフェス第8弾『くちづけ』
【出演者/役名】
金田明夫  ・・・ 愛情いっぽん
小島藤子  ・・・ 阿波野マコ
松田るか  ・・・ 国村はるか
岸田タツヤ ・・・ 夏目ちゃん
倉田茉美 ・・・ 宇都宮智子
松村龍之介 ・・・ 酒巻くん
若林元太  ・・・ 島ちん
はるはる   ・・・ みなみ
北代祐太  ・・・ 頼さん
Moeka   ・・・ ちーちゃん
柴田理恵  ・・・ 袴田さん
かとうかず子 ・・・ 国村真理子
斉木しげる ・・・ 国村先生
宅間孝行  ・・・ うーやん

【スタッフ】作・演出:宅間孝行

【日程・会場】
埼玉(プレビュー)公演: 2020年10月16日(金) 飯能市市民会館 終了
愛知公演: 2020年10月23日(金)~10月25日(日)刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール 終了

東京公演: 2020年10月29日(木)~11月8日(日) サンシャイン劇場
—全席指定 S席(本編映像配信視聴券付き)9,500円(税込)/TAKUFESシート(本編映像配信視聴券付き)6,500円(税込)
札幌公演: 2020年11月20日(金) 18:30 、21日(土) 12:00 17:00 道新ホール
—全席指定 S席(宅間孝行メッセージプリント入り非売品ポスター付き)9,000円(税込)
/A席(宅間孝行メッセージプリント入り非売品ポスター付き)8,000円(税込)
大阪公演: 2020年11月25日(水)~11月29日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
—全席指定(公演パンフレット付き) 9,500円(税込)

【HP】 http://takufes.jp/
【公式twitter】https://twitter.com/taku_fes_japan( @TAKU_FES_JAPAN)

(C)タクフェス第8弾「くちづけ」製作委員会/友澤 綾乃